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普通の女の子に戻りたい。
やはり、君か。
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事態が動いたのは、それからすぐだった。
一応の面接を全て終え、事情の説明を聞いた他の重役の面々が不安そうに凌の判断を仰ぐ中。
「ちょ……!!困りますっ……!!部外者の方は立ち入り禁止で……!!」
にわかに外が騒がしくなった。
「……なんだ?」
「か、確認してまいります!!」
部下らしき人物の声に、慌ててすっ飛んでいく人事部長。
ただ単純に遅れていた面接者が到着した、ということではななさそうだ。
「失礼します」
だが、不穏な予測に反して入ってきたのは履歴書と同じスーツを着込んだ見知った顔。
「君は……」
なにかの事件に巻き込まれたわけではないのかとほっとしたのも束の間。
入ってきたのは彼女一人ではなかった。
「……誰だ、お前は」
「名乗る程の者ではありません。今回の件に関しては完全なる部外者、とでも申しましょうか」
「……?一体何を言っている?」
やけに物騒な気配を垂れ流す男。
とてもまっとうな職業の人間には見えない。
そんな人物が何故、彼女と行動を共にし、ここまでやってきたのか。
「若瀬君……何か問題でもあったのか?」
その男に、脅されているのかと厳かに尋ねる凌。
乱入者を見る目は冷たく厳しいもので、さすがに若くして権力者となった男の違いをむざむざと見せつける。
しかし、迎える男ーーーーーー曽根も、その程度のことで表情を変えるような安い相手ではない。
下手をすればいつ警察に通報されてもおかしくない、一触即発の空気の中で、口を開いたのは彼女ーーーー明日夢だった。
「お騒がせして申し訳ありません。連絡をせず、面接に間に合わなかったことも謝罪します」
潔く重役たちの前に進みで、頭を下げたあとで、くっとその顔を上げ、正面から凌を見つめる。
その強い目に、凌は確信した。
「やはり、君か」
あの時、友人を訪ねて行った店で出会った人物。
友人の恋の相手であり、凌にとっても生半可ではないインパクトを心に残した張本人。
「明日美、だったな?」
どちらが本名だ、と尋ねられ、「あれは芸名です」と何とも言えない表情で答えを返す明日夢。
「ーーーーー君は女性なんだな」
尋ねられたその一言には、明日夢は迷うことなく即座に頷いた。
これで「君は男だったんじゃないのか」などと言われた日には立ち直れなくなりそうだったが、よかった。
さすが経営者は見る目が違う。
「社長。今日の私は若瀬明日夢としてではなく、あの店で働く「明日美」として忍さんのご友人であるあなたにお願いに来ました」
「……それはどういうことだ」
なぜここに友人の名が出てくるのか。驚く凌。
「お願いです。どうか私に時間をくださいませんか」
二人だけで話す機会が欲しいともう一度頭を下げる明日夢。
「時間がないんです」と呟く彼女の真摯な態度は、それだけでなにかとんでもない事が起こっているのだと予想させ。
「わかった」
凌はざわつく重役たちを解散させ、彼女を伴い社長室へと向かうことを即断した。
一応の面接を全て終え、事情の説明を聞いた他の重役の面々が不安そうに凌の判断を仰ぐ中。
「ちょ……!!困りますっ……!!部外者の方は立ち入り禁止で……!!」
にわかに外が騒がしくなった。
「……なんだ?」
「か、確認してまいります!!」
部下らしき人物の声に、慌ててすっ飛んでいく人事部長。
ただ単純に遅れていた面接者が到着した、ということではななさそうだ。
「失礼します」
だが、不穏な予測に反して入ってきたのは履歴書と同じスーツを着込んだ見知った顔。
「君は……」
なにかの事件に巻き込まれたわけではないのかとほっとしたのも束の間。
入ってきたのは彼女一人ではなかった。
「……誰だ、お前は」
「名乗る程の者ではありません。今回の件に関しては完全なる部外者、とでも申しましょうか」
「……?一体何を言っている?」
やけに物騒な気配を垂れ流す男。
とてもまっとうな職業の人間には見えない。
そんな人物が何故、彼女と行動を共にし、ここまでやってきたのか。
「若瀬君……何か問題でもあったのか?」
その男に、脅されているのかと厳かに尋ねる凌。
乱入者を見る目は冷たく厳しいもので、さすがに若くして権力者となった男の違いをむざむざと見せつける。
しかし、迎える男ーーーーーー曽根も、その程度のことで表情を変えるような安い相手ではない。
下手をすればいつ警察に通報されてもおかしくない、一触即発の空気の中で、口を開いたのは彼女ーーーー明日夢だった。
「お騒がせして申し訳ありません。連絡をせず、面接に間に合わなかったことも謝罪します」
潔く重役たちの前に進みで、頭を下げたあとで、くっとその顔を上げ、正面から凌を見つめる。
その強い目に、凌は確信した。
「やはり、君か」
あの時、友人を訪ねて行った店で出会った人物。
友人の恋の相手であり、凌にとっても生半可ではないインパクトを心に残した張本人。
「明日美、だったな?」
どちらが本名だ、と尋ねられ、「あれは芸名です」と何とも言えない表情で答えを返す明日夢。
「ーーーーー君は女性なんだな」
尋ねられたその一言には、明日夢は迷うことなく即座に頷いた。
これで「君は男だったんじゃないのか」などと言われた日には立ち直れなくなりそうだったが、よかった。
さすが経営者は見る目が違う。
「社長。今日の私は若瀬明日夢としてではなく、あの店で働く「明日美」として忍さんのご友人であるあなたにお願いに来ました」
「……それはどういうことだ」
なぜここに友人の名が出てくるのか。驚く凌。
「お願いです。どうか私に時間をくださいませんか」
二人だけで話す機会が欲しいともう一度頭を下げる明日夢。
「時間がないんです」と呟く彼女の真摯な態度は、それだけでなにかとんでもない事が起こっているのだと予想させ。
「わかった」
凌はざわつく重役たちを解散させ、彼女を伴い社長室へと向かうことを即断した。
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