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性別が行方不明になりました
まさかの再会
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「げ」
その顔をを見た瞬間、明日夢は己の失敗を悟った。
「どうかなさいましたか?」
「いえ…」
面接参加者への簡単な筆記試験を行う前、机に置かれていた会社資料になんとなく目を通していたのだが、そこに大きく乗せられた社長の顔。
それは。
――――あのお客さんだよっ!!!
例の、オカマバーであった「凌さん」だ。
本名は「谷澤凌」と言うらしい事を、社長のプロフィールで初めて知った。
社長だとは聞いていたが、まさかドンピシャで来るとは。
これはもう諦めたほうがいいという暗示ではないか。
どう考えてもこの会社でやっていけるとは思えない。
第一志望だったので惜しくはあるが、何しろ社長相手にあの姿を見られている。
どちらにせよ落とされるなら傷は浅いほうがいいのではないか。
逃げてしまおう。そう思ったのだが・・・。
――――つい、出来心が。
どうせ社長自ら面接に来ることはないし、会社で直接社長に顔を見られる機会などそうあるはずもない。
あとは目立たず騒がずしていれば何とかなるんじゃないか、なぁんて…。
「思ったのが間違いだった」
そう、間違いだ。
社長と二人きりの面接、というとんでもないピンチを迎え、明日夢は頭を抱えた。
いまさら逃げることなどできるはずもないし、これを乗り切れば正社員になれるという希望もまだ捨てきれない。
―――こうなったらやるしかない。
それに、よくよく考えてみればあの時の明日夢は女装(?)をしていた。
普段の明日夢とは違う化粧とあの服装なら、ばれずに済む可能性も捨てきれない。
何しろ今日の格好は、普段からよく男と間違われる薄化粧にパンツスーツだ。
よし、いける。
根拠のない自信で自分を奮い立たせ、気合を入れる。
名前を呼ばれたのは、その直後だった。
「失礼します」
入ってすぐ、正面にあるその顔に改めて思う。
やっぱりカッコいいなぁ・・・。
社長の横に立つ役員に促され、椅子に座った。
さぁ、まずは名前を…と思ったところで、予想外に社長―――凌からの声がかかる。
「早速ですまないが、君は…女性だよな?」
「はい?」
ためらいがちなその言葉に、速攻で素が出た。
猫を被る暇もない。
「あの…履歴書…ご覧になったんですよね…?」
男に丸ついてます?ついてませんよね。そうですよね。
「すまない、ずいぶん凛々しい姿だったのでね…。それに、女性のパンツスーツは珍しい」
「駄目…でしたか…?」
募集要項にそんなことは書かれていなかったが。
仕方ない、明日夢がスカートを履くとなぜか女装と間違われるのだ。
―――不可解な。
「いや、そんなことはないが。……君に兄弟はいるのか?」
「いません」
やばい。疑われてる。
速攻で首を振った。
「あの、それが面接に何か関係が…?」
だらだらと背中に汗をかきながら、極めて冷静を装って訪ねる。
「家族構成の把握は必要…とはいえそれは建前。今回の話は個人的なことだ、すまないな」
「いえ…」
やはり、怪しまれているのだろうか。
「先日、とある場所で君によく似た人物を見てな。私の友人がその人物に好意を抱いているんだが、連絡先も聞けず姿を消してしまったらしくて…」
探している、と。
そういわれて思い浮かぶのは、例の職業オカマ。
―――あの人か。
冗談だと思っていたが、思ったより本気だったのか…?
探しているということは、まだ何の情報もないという事。
さすがに貴子が明日夢を売るようなことはないと思いたい。
ばれて困るのは貴子も同じだ。
「申し訳ありませんが、特に心当たりは…」
「そうか。妙なことを聞いてすまなかったな。では、面接を始めよう」
それから約10分程度の面接が行われたが…。
正直、何を聞かれたのかよく覚えていない。
間違いなく、落ちたな。
会社を後にしながら、がっくりと背中を落としてそう思った。
その顔をを見た瞬間、明日夢は己の失敗を悟った。
「どうかなさいましたか?」
「いえ…」
面接参加者への簡単な筆記試験を行う前、机に置かれていた会社資料になんとなく目を通していたのだが、そこに大きく乗せられた社長の顔。
それは。
――――あのお客さんだよっ!!!
例の、オカマバーであった「凌さん」だ。
本名は「谷澤凌」と言うらしい事を、社長のプロフィールで初めて知った。
社長だとは聞いていたが、まさかドンピシャで来るとは。
これはもう諦めたほうがいいという暗示ではないか。
どう考えてもこの会社でやっていけるとは思えない。
第一志望だったので惜しくはあるが、何しろ社長相手にあの姿を見られている。
どちらにせよ落とされるなら傷は浅いほうがいいのではないか。
逃げてしまおう。そう思ったのだが・・・。
――――つい、出来心が。
どうせ社長自ら面接に来ることはないし、会社で直接社長に顔を見られる機会などそうあるはずもない。
あとは目立たず騒がずしていれば何とかなるんじゃないか、なぁんて…。
「思ったのが間違いだった」
そう、間違いだ。
社長と二人きりの面接、というとんでもないピンチを迎え、明日夢は頭を抱えた。
いまさら逃げることなどできるはずもないし、これを乗り切れば正社員になれるという希望もまだ捨てきれない。
―――こうなったらやるしかない。
それに、よくよく考えてみればあの時の明日夢は女装(?)をしていた。
普段の明日夢とは違う化粧とあの服装なら、ばれずに済む可能性も捨てきれない。
何しろ今日の格好は、普段からよく男と間違われる薄化粧にパンツスーツだ。
よし、いける。
根拠のない自信で自分を奮い立たせ、気合を入れる。
名前を呼ばれたのは、その直後だった。
「失礼します」
入ってすぐ、正面にあるその顔に改めて思う。
やっぱりカッコいいなぁ・・・。
社長の横に立つ役員に促され、椅子に座った。
さぁ、まずは名前を…と思ったところで、予想外に社長―――凌からの声がかかる。
「早速ですまないが、君は…女性だよな?」
「はい?」
ためらいがちなその言葉に、速攻で素が出た。
猫を被る暇もない。
「あの…履歴書…ご覧になったんですよね…?」
男に丸ついてます?ついてませんよね。そうですよね。
「すまない、ずいぶん凛々しい姿だったのでね…。それに、女性のパンツスーツは珍しい」
「駄目…でしたか…?」
募集要項にそんなことは書かれていなかったが。
仕方ない、明日夢がスカートを履くとなぜか女装と間違われるのだ。
―――不可解な。
「いや、そんなことはないが。……君に兄弟はいるのか?」
「いません」
やばい。疑われてる。
速攻で首を振った。
「あの、それが面接に何か関係が…?」
だらだらと背中に汗をかきながら、極めて冷静を装って訪ねる。
「家族構成の把握は必要…とはいえそれは建前。今回の話は個人的なことだ、すまないな」
「いえ…」
やはり、怪しまれているのだろうか。
「先日、とある場所で君によく似た人物を見てな。私の友人がその人物に好意を抱いているんだが、連絡先も聞けず姿を消してしまったらしくて…」
探している、と。
そういわれて思い浮かぶのは、例の職業オカマ。
―――あの人か。
冗談だと思っていたが、思ったより本気だったのか…?
探しているということは、まだ何の情報もないという事。
さすがに貴子が明日夢を売るようなことはないと思いたい。
ばれて困るのは貴子も同じだ。
「申し訳ありませんが、特に心当たりは…」
「そうか。妙なことを聞いてすまなかったな。では、面接を始めよう」
それから約10分程度の面接が行われたが…。
正直、何を聞かれたのかよく覚えていない。
間違いなく、落ちたな。
会社を後にしながら、がっくりと背中を落としてそう思った。
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