13 / 47
性別が行方不明になりました
デートコースはお任せあれ。
しおりを挟む
待ち合わせ場所である遊園地についた時、少女は曽根のすぐ横に立ち、意外そうな目でこちらを見上げていた。
「…驚いたわ」
「私も、あなたがあまりに可愛らしいので驚きました」
ニッコリと微笑んで、彼女と目線を合わせる。
肩までの長くまっすぐなロングヘアーに、子供らしさを損なわない程度のナチュラルメイク。
爪は薄ピンクにネイルが施され、着ているものは恐らく子供向けではなく大人向けのブランド品。
曽根に憧れていると言っていただけあって、大人っぽさを演出したかったのだろう。
だが、背伸びする美少女というのはそれはそれで可愛らしい。
「おじい様のお気に入りだと聞いていたからどんな人かと思ってたけど、あなた、男の人?」
「いいえ、女です」
「嘘」
即答され、まじまじと見つめられた。
やだ、穴が空きそう。
そんなに女に見えないだろうか。
「本当ですよ、美咲さん。彼女がオヤジのお気に入りですよ」
「じゃあ、オカマ?」
「違います。女ですって」
「でも最近、貴嗣がニューハーフを愛人にしたっていう妙な噂が……」
あ、それ元凶は私です。
……とは、とても言えない。
曽根さんがそれに関して「デマですよ、美咲さん」とごく自然に訂正してくれていることだけが救いだ。
「若瀬明日夢です。お邪魔してすみませんが、今日一日、お嬢さんのエスコーをさせてもらえませんか?」
ニッコリと意識的に男らしさを装って微笑み、少女に向かって手を差し伸べる。
「高津美咲よ。お嬢さんじゃないわ」
「では、美咲お嬢さん」
「……まぁいいわ。一緒にきても」
差し出した手こそ取られなかったものの、どうやら及第点はいただけたらしい。
振り返れば、曽根さんがこちらを見てうっすらと笑っている。
その笑み、ちょっと怖いぞ。
「じゃあ明日夢、ジュースを買ってきてちょうだい。私と貴嗣の分も」
「お嬢さん、それなら下のものに行かせますよ。…おい」
「へい。何にしましょうか」
「オレンジジュースとコーヒー。明日夢さんはどうしますか?」
「え・・・っと、私もコーヒーで……」
茂みの中から突然湧いて出た男に、曽根はもちろんだが美咲もまったく何も感じていないようで、当たり前のように要件を言いつける。
去っていく男の背中を見送りながら、こっそりと横に居る曽根に尋ねる。
「……近くにいるとは思ってましたけど、当たり前のように呼びつけましたね…。いいんですか…?」
「護衛は他にもいますからね。……わかりますか?」
問いかけ返され、直感的に感じたことをそのまま告げる。
「10人…はいますね。…あぁ、少し遠いところにも」
「さすがは明日夢さんだ」
どうやら正解だったようだ。
もしかするともっと来ているのかもしれないが、手の内を明かすことはしないだろう。
「二人共、何を喋ってるの?暇だわ。遊びに行きましょ?なにか乗りたいの」
飲み物は…?と思ったが、今日の明日夢の目指すところは完璧なるホスト。
お嬢様を不機嫌にさせてはいけない。
それにどうせ護衛なのだから、勝手にどこまでもついてくるはずだ。
「一緒に写真をとりませんか?美咲お嬢さん。あっちにスタジオがありましたよ」
変身スタジオの類で、様々なドレスや衣装が置いてあった。
乗り物に並んでしまうと、護衛は警備をしづらい。
ならば店に入ってしまったほうが彼らにとっても楽だろう。
「ドレスなんてもう着飽きたわ」
「そう言わずに、これも記念ですよ。ねぇ、曽根さん」
「ええ。是非」
明日夢の意図を察したのか、彼も提案に乗ってきたようだ。
「あなたも一緒に着るの?」
「ご要望でしたら」
「貴嗣もよ」
「もちろん、ご一緒させていただきますよ」
その言葉に、ようやく美咲も乗り気になったようだ。
「案内して」
その言葉とともに先程は無視した明日夢の手を自らとり、エスコートを命じる。
どうやらご機嫌とりに成功したようだ。
少なくとも敵視される心配はなくなった。
下手に曽根をめぐるライバルとして認識されると面倒だとは思ったが、どうやらその枠からは既に外されたようだ。
エスコートされるなら若く顔のいい男。
明日夢の実際の性別など周囲にはわからないのだから、侍らせておくにはもってこいだろう。
周囲から向けられる視線に優越感を感じているらしい。
「貴嗣相手だと下手したら父親扱いされるもの。今日のエスコートはあなたで我慢してあげるわ」
言葉とは裏腹にギュッと握られた手に、可愛いなぁと普通に思う。
女の子は、どんなの小さくても恋する相手の前では見栄を張りたくなるものだ。
「光栄です、美咲お嬢さん」
掴まれた手を口元に寄せ、軽くチュッと口付ける。
赤くなるほどのうぶさはないようだが、嬉しそうだ。
「面白い人ね。本当に女の人?」
「残念ながら」
「そうね、確かに残念だわ」
くすくす。
楽しそうに笑う美咲に、今日一日、彼女が笑顔で過ごせればいいと心から思った。
「…驚いたわ」
「私も、あなたがあまりに可愛らしいので驚きました」
ニッコリと微笑んで、彼女と目線を合わせる。
肩までの長くまっすぐなロングヘアーに、子供らしさを損なわない程度のナチュラルメイク。
爪は薄ピンクにネイルが施され、着ているものは恐らく子供向けではなく大人向けのブランド品。
曽根に憧れていると言っていただけあって、大人っぽさを演出したかったのだろう。
だが、背伸びする美少女というのはそれはそれで可愛らしい。
「おじい様のお気に入りだと聞いていたからどんな人かと思ってたけど、あなた、男の人?」
「いいえ、女です」
「嘘」
即答され、まじまじと見つめられた。
やだ、穴が空きそう。
そんなに女に見えないだろうか。
「本当ですよ、美咲さん。彼女がオヤジのお気に入りですよ」
「じゃあ、オカマ?」
「違います。女ですって」
「でも最近、貴嗣がニューハーフを愛人にしたっていう妙な噂が……」
あ、それ元凶は私です。
……とは、とても言えない。
曽根さんがそれに関して「デマですよ、美咲さん」とごく自然に訂正してくれていることだけが救いだ。
「若瀬明日夢です。お邪魔してすみませんが、今日一日、お嬢さんのエスコーをさせてもらえませんか?」
ニッコリと意識的に男らしさを装って微笑み、少女に向かって手を差し伸べる。
「高津美咲よ。お嬢さんじゃないわ」
「では、美咲お嬢さん」
「……まぁいいわ。一緒にきても」
差し出した手こそ取られなかったものの、どうやら及第点はいただけたらしい。
振り返れば、曽根さんがこちらを見てうっすらと笑っている。
その笑み、ちょっと怖いぞ。
「じゃあ明日夢、ジュースを買ってきてちょうだい。私と貴嗣の分も」
「お嬢さん、それなら下のものに行かせますよ。…おい」
「へい。何にしましょうか」
「オレンジジュースとコーヒー。明日夢さんはどうしますか?」
「え・・・っと、私もコーヒーで……」
茂みの中から突然湧いて出た男に、曽根はもちろんだが美咲もまったく何も感じていないようで、当たり前のように要件を言いつける。
去っていく男の背中を見送りながら、こっそりと横に居る曽根に尋ねる。
「……近くにいるとは思ってましたけど、当たり前のように呼びつけましたね…。いいんですか…?」
「護衛は他にもいますからね。……わかりますか?」
問いかけ返され、直感的に感じたことをそのまま告げる。
「10人…はいますね。…あぁ、少し遠いところにも」
「さすがは明日夢さんだ」
どうやら正解だったようだ。
もしかするともっと来ているのかもしれないが、手の内を明かすことはしないだろう。
「二人共、何を喋ってるの?暇だわ。遊びに行きましょ?なにか乗りたいの」
飲み物は…?と思ったが、今日の明日夢の目指すところは完璧なるホスト。
お嬢様を不機嫌にさせてはいけない。
それにどうせ護衛なのだから、勝手にどこまでもついてくるはずだ。
「一緒に写真をとりませんか?美咲お嬢さん。あっちにスタジオがありましたよ」
変身スタジオの類で、様々なドレスや衣装が置いてあった。
乗り物に並んでしまうと、護衛は警備をしづらい。
ならば店に入ってしまったほうが彼らにとっても楽だろう。
「ドレスなんてもう着飽きたわ」
「そう言わずに、これも記念ですよ。ねぇ、曽根さん」
「ええ。是非」
明日夢の意図を察したのか、彼も提案に乗ってきたようだ。
「あなたも一緒に着るの?」
「ご要望でしたら」
「貴嗣もよ」
「もちろん、ご一緒させていただきますよ」
その言葉に、ようやく美咲も乗り気になったようだ。
「案内して」
その言葉とともに先程は無視した明日夢の手を自らとり、エスコートを命じる。
どうやらご機嫌とりに成功したようだ。
少なくとも敵視される心配はなくなった。
下手に曽根をめぐるライバルとして認識されると面倒だとは思ったが、どうやらその枠からは既に外されたようだ。
エスコートされるなら若く顔のいい男。
明日夢の実際の性別など周囲にはわからないのだから、侍らせておくにはもってこいだろう。
周囲から向けられる視線に優越感を感じているらしい。
「貴嗣相手だと下手したら父親扱いされるもの。今日のエスコートはあなたで我慢してあげるわ」
言葉とは裏腹にギュッと握られた手に、可愛いなぁと普通に思う。
女の子は、どんなの小さくても恋する相手の前では見栄を張りたくなるものだ。
「光栄です、美咲お嬢さん」
掴まれた手を口元に寄せ、軽くチュッと口付ける。
赤くなるほどのうぶさはないようだが、嬉しそうだ。
「面白い人ね。本当に女の人?」
「残念ながら」
「そうね、確かに残念だわ」
くすくす。
楽しそうに笑う美咲に、今日一日、彼女が笑顔で過ごせればいいと心から思った。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
還暦妻と若い彼 継承される情熱
MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。
しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。
母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。
同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる