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性別が行方不明になりました
お邪魔虫。
『とにかくこっちに来てください』
そう言ってなんとか引っ張り出した明日夢だったが、曽根達から遠く離れた売店の影までやってきたことで、ようやくその足を止める。
「…で、明日美ちゃん…あの男、誰?それとも明日夢くん……って呼んだほうがいいかな」
ためらいがちに呼ばれる名前に、どうやら彼がうまい具合に勘違いしてくれたようだと気づく。
男っぽい名前が密かなコンプレックスだったが、こんなところで役に立ってくれた。
名前だけでなく格好もその理由の一因ではあろうが…。
「明日夢と呼んでください。あの人達は以前お世話になった人と、そのお孫さんで…。今回は彼女のご要望で2人の遊園地デートだったんですよ。私は単なる話し相手兼付き添いです」
「デート?あの中学生くらいの子と、あっちの悪そうなイケメンとが?」
「中学生じゃなくて小学生です」
「小学生!?今の子供は随分発達がいいなぁ…でもそうか…」
「?」
「明日夢くんは、あくまで付き添いなんだね?」
「……まぁ」
その通りだ。
今日は美咲を完璧にエスコートしてお嬢様気分を味わってもらうつもりだったのだが。
それこそ名づけて「プリティウーマン作戦」。
「じゃあ…もしよかったら、彼らと別れたら俺と……」
「明日夢さん」
「曽根さん!」
いつの間に背後を取られたのだろうか。全く気がつかなかった。
「貴嗣と呼んで欲しいと言ったはずですが…」
「いや、それはその、美咲ちゃんの前ではまずいかなと思って…」
「ですが今ここにお嬢さんはいませんよ」
「……わかりました、貴嗣さん」
ここで反抗してもいいことはないと、あっさり白旗をあげる。
「それで…。あなたは確か、例の店のスタッフの一人では?人気No1、でしたね」
「!明日夢君!?この男……」
なんでそんなことを知っているのか、そんな目で見られても困る。
というか、一体いつの間にそこまで調べたのだろうか。
「あのですね……。前回私が店にお邪魔した時、妙な連中に絡まれましたよね」
「…あぁ…あったね。君に助けられた」
「助かったのは、私の力じゃなく、この貴嗣さんの名刺のお陰です」
「どういうこと…?」
「貴嗣さん、お見せしてもいいですか……?」
念の為に確認したが、彼は鷹揚にうなづく。
それに後押しされ、明日夢は財布の中から再び例の名刺を取り出した。
しかも、今回のものは前回のものとは少し違う。
朝、待ち合わせ場所でまた新しい名刺をもらったのだ。
前回のものとどこが違うのか明日夢にはよくわからないが、それを渡された時に美咲がひどく驚いていたのが印象的だった。
「高津組若頭…曽根貴嗣」
「声!声出てますって…!」
読み上げた忍の口を慌てて塞ぐ。
はっきり言ってこんな遊園地で声に出していい肩書きではない。
「大丈夫ですか!?声は出さないでくださいね!」
口を封じた上で問いかければ、こくこくとうなづかれた為ゆっくりと手を離す。
若干顔が赤くなっているのだが……そんなに息苦しかったのだろうか。
「若頭って……ヤクザ、だよね……?」
今度は気をつけて小声で囁いた忍に、黙ってうなづく。
ちらりと曽根を見れば、その顔に浮かぶのは静かな薄笑い。
だから怖いって……。
「なんでそんな人と知り合いに…あ、もしかしてこの間言ってた道場の…」
「思い出してもらえたようで何よりです。ご想像の通りで間違いありません」
「そうか、この名刺を見て、自分より上の相手に逃げ出したのか…」
納得してもらえたのは嬉しいが、わかったらとっとと逃げてもらえないだろうか。
この場に自分が場違いであることを一刻も早く悟って欲しい。
今ならまだ間に合う…はず。
「明日夢さん、お嬢さんがあちらでお待ちですよ。あなたがいないと寂しそうだ」
「了解です!すぐ戻ります!」
すぐ戻ろう、今すぐ戻ろう。
忍の命を守るためにも。
「というわけで、すみません忍さん、申し訳ないんですが今日はちょっと…」
「明日夢くん…!」
追いすがろうとした忍の行く手を、どこからともなく現れた屈強な男二人組が塞いでいく。
美咲の楽しみの邪魔はさせない、そういうことなのだろう。
ホッとしたと同時に、悪いことをしたなという罪悪感がよぎる。
だが、これも彼のためだ。
「……くれぐれも怪我とかは、させないでくださいね」
流石にそんな目立つ真似は控えるだろが、念の為に頼み込んでおく。
「大丈夫ですよ。店のNo1に傷を付けるような真似はしません。顔は売り物でしょう?」
「…そういう意味ではないんですけど…気をつけてくれるなら」
まぁ…いいか?
「それより明日夢さん。思った以上にお嬢さんの扱いが上手くて助かりましたよ」
「ええまぁ……。そういうのは慣れてるんで」
女子高ではないというのに、なぜか女子から憧れの人扱いされたり、理想の恋人扱いされたり…。
「あれですよ、きっと。能とか歌舞伎の女形って、実際の女の人より女らしいじゃないですか。
それと一緒で、女性が求める理想の男性像を無意識に演じるからそうなるんじゃないですかね」
「なるほど、確かにそれは一理ありますね…」
ふむ、と納得してくれたようだ。
「では明日夢さんの理想の男性は今のあなたのような優しい男性ということで?」
「いや~どうでしょう。私が演じてるのは一般論ですから…。そうですね。もし私なら…。優しいだけよりは、一緒に闘ってくれるくらいの強さも欲しいですかね。そういう意味ではちょっと位無骨でも構わないかも」
「では、私は?」
「は?」
「自分で言うのもなんですが、私は闘える男ですよ?」
そりゃそうでしょうね、と喉元まででかかった言葉をゴクリと飲み込んだ。
「え、えっと…。曽根さん…じゃなくて貴嗣さんは、私には手に余…じゃなくて、もったいない人なので…」
危うく本音がこぼれ落ちそうになり、慌てて訂正する。
半分位聞こえていそうだが、セーフだっただろうか。
「もったいない、とは光栄ですが、私もただのひとりの男ですよ。好みの女性と二人になれば、ところかまわず口説きたくなるくらいには、ね」
買いかぶり過ぎはいけませんよ?
甘く蕩けそうなその声に、別の意味で明日夢は震え上がった。
「お嬢さんと3人もいいですが、今度は二人きりでデートしましょうね…?」
耳元に流されるのは、チョコレートのような毒。
真っ黒で、ドロドロしたあまいあまい泥沼。
免疫のない女性などこれでイチコロだろう。
ヤクザの手口というのはこういうものなのかと、身を持って思い知る。
だが、今それを明日夢相手に披露するというのは、少々筋違いではないだろうか。
「冗談はやめてくださいよ、貴嗣さん。あなたは全然本気じゃない。…そうでしょ?」
「なぜ……そう思うのですか?」
確信めいた明日夢のセリフに、曽根の眉が一瞬ぴくりとひそめられた。
――ーきっと、今まで落とせなかった女性などいなかったんだろうな。
それはそうだろう。この容姿に肩書きだ。誰だって素直に彼についていく。
だが、明日夢もその一人と思ってもらっては困るのだ。
だから、相手の不況を買うことを知りながらあえて本心で答える。
「不必要になれば何時でも切り捨てられる手駒の一つ。……違いますか?」
「…ですから、なぜそう思うのです」
だんだんと言葉に苛立ちが混じり始める曽根。
やっぱり、どんなに隠そうとも極道は極道だ。
見極めるまでもなく、それは最初からひどくあからさまだった。
わからないとそう思っていたのなら、随分と馬鹿にされたものだと思う。
ここまで来ると、逆に思考は冷めてくるようだ。
自分自身の感情が、すっと温度をなくしていくのが分かる。
――あぁ、今ならこの人とも戦えるかも知れない。
「好意を持ったと言いながら、あなたの殺気は常に私にも向けられている」
だからですよと告げて、明日夢もまた、先ほどの曽根そっくりの獰猛な笑みを浮かべた。
「やりますか?私と」
そう言ってなんとか引っ張り出した明日夢だったが、曽根達から遠く離れた売店の影までやってきたことで、ようやくその足を止める。
「…で、明日美ちゃん…あの男、誰?それとも明日夢くん……って呼んだほうがいいかな」
ためらいがちに呼ばれる名前に、どうやら彼がうまい具合に勘違いしてくれたようだと気づく。
男っぽい名前が密かなコンプレックスだったが、こんなところで役に立ってくれた。
名前だけでなく格好もその理由の一因ではあろうが…。
「明日夢と呼んでください。あの人達は以前お世話になった人と、そのお孫さんで…。今回は彼女のご要望で2人の遊園地デートだったんですよ。私は単なる話し相手兼付き添いです」
「デート?あの中学生くらいの子と、あっちの悪そうなイケメンとが?」
「中学生じゃなくて小学生です」
「小学生!?今の子供は随分発達がいいなぁ…でもそうか…」
「?」
「明日夢くんは、あくまで付き添いなんだね?」
「……まぁ」
その通りだ。
今日は美咲を完璧にエスコートしてお嬢様気分を味わってもらうつもりだったのだが。
それこそ名づけて「プリティウーマン作戦」。
「じゃあ…もしよかったら、彼らと別れたら俺と……」
「明日夢さん」
「曽根さん!」
いつの間に背後を取られたのだろうか。全く気がつかなかった。
「貴嗣と呼んで欲しいと言ったはずですが…」
「いや、それはその、美咲ちゃんの前ではまずいかなと思って…」
「ですが今ここにお嬢さんはいませんよ」
「……わかりました、貴嗣さん」
ここで反抗してもいいことはないと、あっさり白旗をあげる。
「それで…。あなたは確か、例の店のスタッフの一人では?人気No1、でしたね」
「!明日夢君!?この男……」
なんでそんなことを知っているのか、そんな目で見られても困る。
というか、一体いつの間にそこまで調べたのだろうか。
「あのですね……。前回私が店にお邪魔した時、妙な連中に絡まれましたよね」
「…あぁ…あったね。君に助けられた」
「助かったのは、私の力じゃなく、この貴嗣さんの名刺のお陰です」
「どういうこと…?」
「貴嗣さん、お見せしてもいいですか……?」
念の為に確認したが、彼は鷹揚にうなづく。
それに後押しされ、明日夢は財布の中から再び例の名刺を取り出した。
しかも、今回のものは前回のものとは少し違う。
朝、待ち合わせ場所でまた新しい名刺をもらったのだ。
前回のものとどこが違うのか明日夢にはよくわからないが、それを渡された時に美咲がひどく驚いていたのが印象的だった。
「高津組若頭…曽根貴嗣」
「声!声出てますって…!」
読み上げた忍の口を慌てて塞ぐ。
はっきり言ってこんな遊園地で声に出していい肩書きではない。
「大丈夫ですか!?声は出さないでくださいね!」
口を封じた上で問いかければ、こくこくとうなづかれた為ゆっくりと手を離す。
若干顔が赤くなっているのだが……そんなに息苦しかったのだろうか。
「若頭って……ヤクザ、だよね……?」
今度は気をつけて小声で囁いた忍に、黙ってうなづく。
ちらりと曽根を見れば、その顔に浮かぶのは静かな薄笑い。
だから怖いって……。
「なんでそんな人と知り合いに…あ、もしかしてこの間言ってた道場の…」
「思い出してもらえたようで何よりです。ご想像の通りで間違いありません」
「そうか、この名刺を見て、自分より上の相手に逃げ出したのか…」
納得してもらえたのは嬉しいが、わかったらとっとと逃げてもらえないだろうか。
この場に自分が場違いであることを一刻も早く悟って欲しい。
今ならまだ間に合う…はず。
「明日夢さん、お嬢さんがあちらでお待ちですよ。あなたがいないと寂しそうだ」
「了解です!すぐ戻ります!」
すぐ戻ろう、今すぐ戻ろう。
忍の命を守るためにも。
「というわけで、すみません忍さん、申し訳ないんですが今日はちょっと…」
「明日夢くん…!」
追いすがろうとした忍の行く手を、どこからともなく現れた屈強な男二人組が塞いでいく。
美咲の楽しみの邪魔はさせない、そういうことなのだろう。
ホッとしたと同時に、悪いことをしたなという罪悪感がよぎる。
だが、これも彼のためだ。
「……くれぐれも怪我とかは、させないでくださいね」
流石にそんな目立つ真似は控えるだろが、念の為に頼み込んでおく。
「大丈夫ですよ。店のNo1に傷を付けるような真似はしません。顔は売り物でしょう?」
「…そういう意味ではないんですけど…気をつけてくれるなら」
まぁ…いいか?
「それより明日夢さん。思った以上にお嬢さんの扱いが上手くて助かりましたよ」
「ええまぁ……。そういうのは慣れてるんで」
女子高ではないというのに、なぜか女子から憧れの人扱いされたり、理想の恋人扱いされたり…。
「あれですよ、きっと。能とか歌舞伎の女形って、実際の女の人より女らしいじゃないですか。
それと一緒で、女性が求める理想の男性像を無意識に演じるからそうなるんじゃないですかね」
「なるほど、確かにそれは一理ありますね…」
ふむ、と納得してくれたようだ。
「では明日夢さんの理想の男性は今のあなたのような優しい男性ということで?」
「いや~どうでしょう。私が演じてるのは一般論ですから…。そうですね。もし私なら…。優しいだけよりは、一緒に闘ってくれるくらいの強さも欲しいですかね。そういう意味ではちょっと位無骨でも構わないかも」
「では、私は?」
「は?」
「自分で言うのもなんですが、私は闘える男ですよ?」
そりゃそうでしょうね、と喉元まででかかった言葉をゴクリと飲み込んだ。
「え、えっと…。曽根さん…じゃなくて貴嗣さんは、私には手に余…じゃなくて、もったいない人なので…」
危うく本音がこぼれ落ちそうになり、慌てて訂正する。
半分位聞こえていそうだが、セーフだっただろうか。
「もったいない、とは光栄ですが、私もただのひとりの男ですよ。好みの女性と二人になれば、ところかまわず口説きたくなるくらいには、ね」
買いかぶり過ぎはいけませんよ?
甘く蕩けそうなその声に、別の意味で明日夢は震え上がった。
「お嬢さんと3人もいいですが、今度は二人きりでデートしましょうね…?」
耳元に流されるのは、チョコレートのような毒。
真っ黒で、ドロドロしたあまいあまい泥沼。
免疫のない女性などこれでイチコロだろう。
ヤクザの手口というのはこういうものなのかと、身を持って思い知る。
だが、今それを明日夢相手に披露するというのは、少々筋違いではないだろうか。
「冗談はやめてくださいよ、貴嗣さん。あなたは全然本気じゃない。…そうでしょ?」
「なぜ……そう思うのですか?」
確信めいた明日夢のセリフに、曽根の眉が一瞬ぴくりとひそめられた。
――ーきっと、今まで落とせなかった女性などいなかったんだろうな。
それはそうだろう。この容姿に肩書きだ。誰だって素直に彼についていく。
だが、明日夢もその一人と思ってもらっては困るのだ。
だから、相手の不況を買うことを知りながらあえて本心で答える。
「不必要になれば何時でも切り捨てられる手駒の一つ。……違いますか?」
「…ですから、なぜそう思うのです」
だんだんと言葉に苛立ちが混じり始める曽根。
やっぱり、どんなに隠そうとも極道は極道だ。
見極めるまでもなく、それは最初からひどくあからさまだった。
わからないとそう思っていたのなら、随分と馬鹿にされたものだと思う。
ここまで来ると、逆に思考は冷めてくるようだ。
自分自身の感情が、すっと温度をなくしていくのが分かる。
――あぁ、今ならこの人とも戦えるかも知れない。
「好意を持ったと言いながら、あなたの殺気は常に私にも向けられている」
だからですよと告げて、明日夢もまた、先ほどの曽根そっくりの獰猛な笑みを浮かべた。
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