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性別が行方不明になりました
対峙。
少なくともこの時、明日夢は100パーセント本気だった。
ここがどこだとか、誰が待ってるとか、相手がヤクザだとか。
そんなものは何も関係なく、ただ目の前の相手を獲物と狙い定める。
相手が仕掛けてこないというのなら、こちらから仕掛けてもいい。
そう思い、足を一歩踏み出したその時。
「やめましょう…。悪いのは全面的に私ですね。少々、大人気なかったようだ」
「……」
「これでも悪気はなかったんですよ。職業病といいますかね…」
「…それは随分物騒なことで」
誰彼構わず殺気を振りまくのが職業病とは、よく言えたものだ。
まぁ、極道ならばそれも当然かもしれないが。
「大人げない、というなら後ろの方々は下げていただけると助かります」
「ふふふ…。君はとても面白い女性だ。うちのオヤジが気に入るのもわかりますよ」
言いながら、強い殺気をにじませてこちらに向かってくる護衛の連中に指先だけで下がるように命じる。
すぐ側に彼らが居ることには気づいていた。
それでも、この中でならなんとかなるそう思っていただけだ。
「その呼吸法は、もしかしてシステマも習っていますか?」
「……あくまでうちの道場流ですけどね」
システマ――ーロシアの軍隊格闘術として編み出されたもので、近接戦で複数の相手と対峙する時に有利に働く。
それを道場の主が自己流にアレンジしたものを教わったのは、実のところ道場でも明日夢一人。
危険すぎて他の門下生には教えられなかったというのが正しい。
一応、護身術の範囲で、という名目ではあったが。
「今回は私が頭を下げましょう。これで許していただけますか?」
言葉通り、明日夢に向かって頭を下げた曽根に、駆けつけようとした男たちがざわめく。
彼のこんな姿は相当珍しいようだ。
はぁ…。
「なら、もう妙な発言はやめてくださいね」
軽くため息を吐き、力を抜く。
和解と受け取り、曽根が得意の薄笑いを浮かべる。
「行きましょう。お嬢さんがさぞや退屈していることでしょうから。…御機嫌伺いをお願いしてもよろしいですか?」
「…了解しました」
確かに、いくら他の護衛がついているとはいえ、いつまでも美咲一人にするのは心配だ。
機嫌を取るのに苦労しそうだと、頭の中でデートプランを立て直す。
「じゃあ次はティーポットにでも乗りますか?」
「その心は?」
「思い切りぐるぐる回して気持ち悪がる貴嗣さんが見てみたい」
「残念。私は三半規管は強い方ですよ」
「私もです」
にこりと笑って、お互い早足で美咲の元へと戻る。
その後、予定通り美咲と曽根と明日夢、三人でティーポットに乗ったが、その時は良かった。
2回目、先ほどの会話を聞かされ、興味がわいたらしい美咲に二人で乗ることを提案されたのだが…。
「見ているだけで目が回ったわ。…気持ち悪い」
そう言って、出口で二人を待ち構えていた美咲に怒られた。
遊園地も、遊ぶ人間次第では立派な戦場になると証明された瞬間である。
ここがどこだとか、誰が待ってるとか、相手がヤクザだとか。
そんなものは何も関係なく、ただ目の前の相手を獲物と狙い定める。
相手が仕掛けてこないというのなら、こちらから仕掛けてもいい。
そう思い、足を一歩踏み出したその時。
「やめましょう…。悪いのは全面的に私ですね。少々、大人気なかったようだ」
「……」
「これでも悪気はなかったんですよ。職業病といいますかね…」
「…それは随分物騒なことで」
誰彼構わず殺気を振りまくのが職業病とは、よく言えたものだ。
まぁ、極道ならばそれも当然かもしれないが。
「大人げない、というなら後ろの方々は下げていただけると助かります」
「ふふふ…。君はとても面白い女性だ。うちのオヤジが気に入るのもわかりますよ」
言いながら、強い殺気をにじませてこちらに向かってくる護衛の連中に指先だけで下がるように命じる。
すぐ側に彼らが居ることには気づいていた。
それでも、この中でならなんとかなるそう思っていただけだ。
「その呼吸法は、もしかしてシステマも習っていますか?」
「……あくまでうちの道場流ですけどね」
システマ――ーロシアの軍隊格闘術として編み出されたもので、近接戦で複数の相手と対峙する時に有利に働く。
それを道場の主が自己流にアレンジしたものを教わったのは、実のところ道場でも明日夢一人。
危険すぎて他の門下生には教えられなかったというのが正しい。
一応、護身術の範囲で、という名目ではあったが。
「今回は私が頭を下げましょう。これで許していただけますか?」
言葉通り、明日夢に向かって頭を下げた曽根に、駆けつけようとした男たちがざわめく。
彼のこんな姿は相当珍しいようだ。
はぁ…。
「なら、もう妙な発言はやめてくださいね」
軽くため息を吐き、力を抜く。
和解と受け取り、曽根が得意の薄笑いを浮かべる。
「行きましょう。お嬢さんがさぞや退屈していることでしょうから。…御機嫌伺いをお願いしてもよろしいですか?」
「…了解しました」
確かに、いくら他の護衛がついているとはいえ、いつまでも美咲一人にするのは心配だ。
機嫌を取るのに苦労しそうだと、頭の中でデートプランを立て直す。
「じゃあ次はティーポットにでも乗りますか?」
「その心は?」
「思い切りぐるぐる回して気持ち悪がる貴嗣さんが見てみたい」
「残念。私は三半規管は強い方ですよ」
「私もです」
にこりと笑って、お互い早足で美咲の元へと戻る。
その後、予定通り美咲と曽根と明日夢、三人でティーポットに乗ったが、その時は良かった。
2回目、先ほどの会話を聞かされ、興味がわいたらしい美咲に二人で乗ることを提案されたのだが…。
「見ているだけで目が回ったわ。…気持ち悪い」
そう言って、出口で二人を待ち構えていた美咲に怒られた。
遊園地も、遊ぶ人間次第では立派な戦場になると証明された瞬間である。
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