恋だけど愛じゃない。

隆駆

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恋するきっかけ

姉が結婚!?

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「…うん…あぁ、そう…ふぅん……じゃあ…」
「?」
ちょっと前にかかった電話に出た雅人は、なぜかこちらをちらちら見ながら通話を切った。
「どうしたの、まぁくん?」
「淳から。アイツ、桜ちゃんにプロポーズしたってさ」
「……えぇ!?」
お姉ちゃんに!?
「あっくん、なんて!?」
「俺に邪魔はするなってさ。…人聞きの悪い弟だろ?」
「……」
「こんなに俺は応援してやってるのに、酷いよね」
確かに一見雅人は淳の邪魔をしているようには見えない。
だけど、きっと何かあるんだろうな、と思う。
あのあっくんが、釘を刺すくらいだ。
「でも、プロポーズって病院で?」
「いや。あいつ、病院を抜け出したんだよ。んで桜ちゃんに見つかって、二人で話してるうちに…ってことらしい」
「抜け出してって…」
何をのんきに言ってるんだろう。
「じゃあまぁくん、こんな所に居る場合じゃないじゃない!早くあっくんを病院に連れ戻さなきゃ…」
「大丈夫だよ、桜ちゃんも付いてるし…。それより俺は栞と一緒に居たいんだ」
私が弱いのを知っていて、するりと側にやってきては、まるで猫のように喉をなでる。
その表情は本当に淳のことなどどうでもいいいと思っているようで、ちょっとだけ腹が立った。
「…私がお姉ちゃんが心配だから、帰る…」
突然プロポーズされた姉が動転していないか心配だ。
「栞!」
「お姉ちゃん、もう家に帰ったか聞いた…?」
まぁくん、と訪ねようとして、ぐっと腕をひかれる。
「俺が悪かったから、行かないで。桜ちゃんなら、淳が今から家に送っていくって言ってたから、まだ帰ってないよ」
だからもう少しここにいてもいいだろ?
そう言われ、不承不承ながら「うん…」と返す。
でも、病人に家まで送られるというのも本末転倒な話だ。
心配症なあっくんが姉を一人にするはずがないのはわかっていたが…。
「ねぇ、まぁくん。
2年前あっくんに何があったのか、本当に心当たりがないの?」
私は疑っていた。
「………さぁ?」
誰よりも、まぁくんを。
「そんなことより、ほら、もっとくっついて…。栞を補給させて?」
「…もう…」
結局は拒絶できない私は、既に雅人によって調教済みだ。
幼い頃からずっと、染み付いてしまっている。
「俺が何か言ったくらいで諦めるなら、それだけの思いだったってことだろう…?ねぇ…」
くすくすと笑うその表情に、何かしたんだと確信する。
「…まぁくんの、ひとでなし」
弟の幸せを願わなかったのだろうか。
「誰よりも幸せを願ってるよ。弟だからね。だからこそ、教えたげたんだよ」
「………何を?」
ぎゅっと、さらに強く私を抱きしめたまぁくんは言う。



「俺達の業の深さ…かな」


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