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非凡なる彼の日常
6話
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重ねていうが、その時の行動は確実に正当防衛と言える範囲の事で。
寝ているところを短刀で一突きにされそうになれば、それは誰だって飛び起きて当然だと思うのだが、エメラルドのその核心を突いた発言に、つい動揺してしまったのが負け。
あとは言わずもがなのなし崩しだ。
その場で審問対象としてバチカンに連行さるか、討伐されなかっただけましだが、それ以降さんざん今日のように弄ばれてきたのだから、ヴァーニスにとっては災難の一言に尽きる。
それでも彼が吸血鬼であることを彼女が他の誰にも知らせなかったのは、極めて幸運と言えた。
理由を聞けば、「吸血鬼という存在には謎が多い」との事。
もちろん彼女は、吸血鬼が大きく分けて二つに分かれることも知っている。
だが、聞けば生きた吸血鬼――――それも正気の――――を見たのは初めてだという。
まぁ、彼女に討伐命令が下るような「吸血鬼」は大体が前者の吸血鬼(つまり死人帰りの類)か、既に正気を失った状態の「同族」なのだからそうれも当然の話で。
観察対象として大いに彼女の興味を誘ったヴァーニスは、見逃す代わりに彼女の個人的な「資料集め」とやらに付き合わされる羽目になったのである。(それもほとんど先程のような、ヴァーニスにとっては嫌がらせとしか思えないレベルのものだ)
ちなみに今まで一番迷惑だったエメラルドの行動は、初対面の時のようにいきなり寝込みを襲われた挙句、胸に杭を刺されそうになったことである。
「これじゃあいくらなんでも死にますよ!」というヴァーニスのもっとな発言に、「それもそうか」とあっさり納得され、虚しさを覚えたことは今でも覚えている。
「吸血鬼の特徴としては、人より優れた反射神経、感覚、嗅覚を持ち、体力もまた人とは比べ物にならないとあるが…………」
「どこ情報ですかそれ………」
「ローマの資料庫に置かれていた古い書物だ」
それ一つしか見つからなかったと妙に胸をはって答えるエメラルド。
「一般人にだって火事場の馬鹿力ってやつがあるでしょ。それと同じですよ。正気を失って精神と肉体のリミッターが解除されてしまっているせいでそう見えるだけです」
通常は人とは大した差はありませんと言えば、何故かがっかりとした顔をしていた。
エメラルドが何をしたいのか時々よくわからない。
彼女と会話をしていて気づいたことは、やはり予想通り、彼らが認識する「吸血鬼」とは正気を失った時の彼らのそれであり、他には何ら情報を持ち合わせていないのだと言うことだ。
平常時の彼らの一族は人とほとんど変わることはないし、「魔女狩り」のような悲劇さえ起こらなければ、彼らが滅びの道を歩むこともなかっただろう。
情報も少なく、ただやみくもに恐れられたが故に一族の殲滅を命じられた。それが全ての真実だ。
ちなみに、エメラルドがヴァーニスをヴィーと呼ぶのも、本来「ヴァーニス」の頭文字ではなく、「ヴァンパイア」からとられた「V(ヴィー)」だったりした。
彼女なりのユーモアらしいが、ヴァーニスにとっては嫌がらせとそう代わらない。
「まったく、お前といると退屈しなくて楽しいよ。また会えて嬉しいぞ?ヴィー」
その名の通りの、緑柱石の瞳が、ヴァーニスの青い瞳をじっと見つめる。
(今度は一体どんな目に合わされるのか・・・・・・)
ヴァーニスの額と背中に、見えない汗がだらりと流れた。
寝ているところを短刀で一突きにされそうになれば、それは誰だって飛び起きて当然だと思うのだが、エメラルドのその核心を突いた発言に、つい動揺してしまったのが負け。
あとは言わずもがなのなし崩しだ。
その場で審問対象としてバチカンに連行さるか、討伐されなかっただけましだが、それ以降さんざん今日のように弄ばれてきたのだから、ヴァーニスにとっては災難の一言に尽きる。
それでも彼が吸血鬼であることを彼女が他の誰にも知らせなかったのは、極めて幸運と言えた。
理由を聞けば、「吸血鬼という存在には謎が多い」との事。
もちろん彼女は、吸血鬼が大きく分けて二つに分かれることも知っている。
だが、聞けば生きた吸血鬼――――それも正気の――――を見たのは初めてだという。
まぁ、彼女に討伐命令が下るような「吸血鬼」は大体が前者の吸血鬼(つまり死人帰りの類)か、既に正気を失った状態の「同族」なのだからそうれも当然の話で。
観察対象として大いに彼女の興味を誘ったヴァーニスは、見逃す代わりに彼女の個人的な「資料集め」とやらに付き合わされる羽目になったのである。(それもほとんど先程のような、ヴァーニスにとっては嫌がらせとしか思えないレベルのものだ)
ちなみに今まで一番迷惑だったエメラルドの行動は、初対面の時のようにいきなり寝込みを襲われた挙句、胸に杭を刺されそうになったことである。
「これじゃあいくらなんでも死にますよ!」というヴァーニスのもっとな発言に、「それもそうか」とあっさり納得され、虚しさを覚えたことは今でも覚えている。
「吸血鬼の特徴としては、人より優れた反射神経、感覚、嗅覚を持ち、体力もまた人とは比べ物にならないとあるが…………」
「どこ情報ですかそれ………」
「ローマの資料庫に置かれていた古い書物だ」
それ一つしか見つからなかったと妙に胸をはって答えるエメラルド。
「一般人にだって火事場の馬鹿力ってやつがあるでしょ。それと同じですよ。正気を失って精神と肉体のリミッターが解除されてしまっているせいでそう見えるだけです」
通常は人とは大した差はありませんと言えば、何故かがっかりとした顔をしていた。
エメラルドが何をしたいのか時々よくわからない。
彼女と会話をしていて気づいたことは、やはり予想通り、彼らが認識する「吸血鬼」とは正気を失った時の彼らのそれであり、他には何ら情報を持ち合わせていないのだと言うことだ。
平常時の彼らの一族は人とほとんど変わることはないし、「魔女狩り」のような悲劇さえ起こらなければ、彼らが滅びの道を歩むこともなかっただろう。
情報も少なく、ただやみくもに恐れられたが故に一族の殲滅を命じられた。それが全ての真実だ。
ちなみに、エメラルドがヴァーニスをヴィーと呼ぶのも、本来「ヴァーニス」の頭文字ではなく、「ヴァンパイア」からとられた「V(ヴィー)」だったりした。
彼女なりのユーモアらしいが、ヴァーニスにとっては嫌がらせとそう代わらない。
「まったく、お前といると退屈しなくて楽しいよ。また会えて嬉しいぞ?ヴィー」
その名の通りの、緑柱石の瞳が、ヴァーニスの青い瞳をじっと見つめる。
(今度は一体どんな目に合わされるのか・・・・・・)
ヴァーニスの額と背中に、見えない汗がだらりと流れた。
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