神の狗は十字を背負う~ワケあり吸血鬼の災難な日々~

隆駆

文字の大きさ
10 / 63
非凡なる彼の日常

9話

しおりを挟む
「オーブン・ボムの威力はどうだった?」

いててて…と頭を起こしたヴァーニスが初めに見たのは、こういい、人の悪い笑みをうかべるエメラルドの姿だった。

いつのまにか、頭には真新しい包帯が巻かれている。
 水にぬらした冷たいガーゼの感触が、ジンジンとした痛みを、少しだけやわらげてくれるようだ。

 「あの…これ、エーメさんが…?」

もしかすると、もしかしていい人なのだろうか。

 「ああ。一応やっておいたぞ。ちなみに、その頭の水は聖水だ。バチカンからもってきた、由緒正しい水だぞ。
しかし、何の反応もないということは、やはりお前達吸血鬼には性別された武器が通用しないという事か」

ふんふん、と一人勝手にうなづく姿は、どうも善意というよりは……。

 (……私はモルモットか…?)

 間違いない、と、心で涙ぐみながらためいきを吐く。

だが、ひとまず手当てをしてくれたことには違いない。

 「ありがとう・・・ございました」

 「いやいや、礼はいらん。ちょうどいい研究が出来た」

その言葉どおり、エメラルドの手には、一冊の『研究帳』とかかれたノートが。

……………。

そこに、何が書いてあるのかは、あまり知りたくない。

 (・・・・・なんか、これが一番ダメージきついかも・・・・・・)

 満面の笑みで答えるエメラルドに、今度こそヴァーニスは心底脱力した。


          ※※※

「・・・で、エーメさん。いい加減、ここにきた本当の理由を教えてくれませんか?」

ひとまずオーブンの始末もつき、痛む頭のダメージも、先ほどエメラルドから受けたダメージも、やっと人段落ついたところで発せられたヴァーニスの台詞に、エメラルドは「ばれていたか」というように軽く肩をすくめた。
 
「なぜわかった?」

 「・・・なぜって・・・。だって、エーメさんって、ある程度周期が決まっているじゃないですか」

ちなみに、その周期とは、エメラルドが、ヴァーニスをからかいたくなる周期である。
それに、腕利きのヴァンパイアハンターであるエメラルドには、もともと与えられている自由時間も少ない。
いつも、せいぜい2ヶ月に一度(しかし、エメラルドは確実にやってくる・・・・)なのに、今回に限って、前回からまだ一ヶ月もたっていない。

ちなみに前回は、「日光に対する抵抗力」を調べるたいから、とヴァーニスには日焼けだと称し、真昼の大木に3時間ほど縛り付けられたまま放置された。
いくらエメラルドとはいえ、この短期間にまた新しいヴァーニスいじめ(ヴァ―ニス的)を思いつきはしないだろう。

そう考え、発した言葉は、間違ってはいないのだが。

 「・・・・ほぅ。周期、ねぇ」

どうやら今まで自覚がなかったらしいエメラルドが、ふむ、と何かを思い立ったようにうなづく
様に、(・・・・・しまった)といまさらながらに思う。
これで、次回は奇襲をかけられるのは必至である。
 今までのエメラルドの行動からいっても、それは間違いない。

 (……もしかして私は、墓穴体質なんだろうか・・?)

信じたくはないが、現実とは常に残酷な真実を突きつけるものだ。

ヴァーニスは、そろり、とエメラルドを見る。

 「・・・あの、でエーメさん、私に用事って?」

このまま墓穴を掘りつづけたら、いつか本当に墓の下に埋められてしまうとヴァーニスが話題を元に戻す。

だがそれに答えたのは、これまでのふざけた表情を一変させ、真剣な顔になったエメラルドだった。
 
「――――――お前の仕業じゃ、ないだろうな?」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...