神の狗は十字を背負う~ワケあり吸血鬼の災難な日々~

隆駆

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フレイヤの襲来

16話

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「あいつはな、古くからの吸血鬼ハンターの血筋なんだ。
あいつの祖母も、祖父も、父も、母もみなそれを継いでいる。
 皆、バチカンで生まれ育っているせいで、誰もそのことに疑問を思うやつはいないんだ。
すっかりあそこの考えに染まっていてな。
しかもあいつは妙に勘が鋭いから、お前の秘密なんぞ、いつばれてもおかしくはないだろう」

あっさりと、とんでもないことを言い切るエメラルド。
 
「…ちょっとまってください…なんでそんな人を連れてくるんですかっ!!!!エーメさんッツ!!!」

まさか、そこまでとんでもない人物だとは思ってはいなかった。
 本当に危なかった、といまさらながらに蒼白になる。

バチカン生まれのバチカン育ちの吸血鬼ハンターの一族。
ヴァーニスや、他のこの地に潜むものたちにとって、最も危険な人物。
ヴァチカンの価値観をそのまま自らの価値観としている、というのはそれすなわち、「吸血鬼」などの異能の生き物は全て「悪であり滅ぶべき」だとする恐ろしい「正義感」の持ち主だということだ。
ヴァーニスは、「吸血鬼」としては極めて異例なことに「聖職者」を選んでいるとはいえ、彼らにとって異端であることには変わりない。つまりは、バレれば杭打ち一直線。

 「別に私だって好きで連れてきたわけじゃない」

 「……恨みます。恨みますよ、エーメさんッ!!!!」
 
「安心しろ。もしフレイアにばれても、あいつの存在抹消してお前を助けてやるから。
 今話題の吸血鬼の仕業にすればばれんばれん]


 「……エーメさん、あなたって人は……」

いくらなんでも、同僚だろう…。

 「深いことを気にするな。 私は、誰にもお前を殺させる気はない。殺すなら私がやるさ。
……で、私は一体どこに泊まればいいんだ?」
 
「……廊下を曲がった一番左の部屋をドウゾ」
なんだかやたら物騒な話ばかり聞いている気がするが、もうこれ以上問いただす気力すらない。
だがまぁそれなりの付き合いを重ねてきたヴァーニスとしては、エメラルドのこの手の台詞にはすでに慣れてしまっている。

(相変わらず、困った人だなぁ…)

最後の最後で結局いい人だってのは間違いないと思うのだが。
なにせ、いくら気に食わないとはいえ、同僚を殺してでもヴァーニスを助けると言い切っているのだから。
 
(…しかし、なんでこう違うのかな?エーメさんも同じ、ヴァチカン育ちの吸血鬼ハンターの一族のはずなのに…)

ヴァーニスは先ほどの少女とエメラルドのあまりの違いに、部屋へと向うエメラルドの後姿を眺めながら、小さく首をかしげた。

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