平凡顔吸血鬼が極上の獲物に捕食されました。

隆駆

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あいむはんぐりー!!~一度満たされた欲は甘く切ない~

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空腹は最大のスパイスだと言うのは真実だが100パーセントの正解でもない。
空腹な状態であまり好きでないものを食べれば多少は美味しく感じるのかもしれないが、元々不味いと感じているものはやっぱり不味いし、嫌いなものを出されれば、お腹が空いてるのに食べたくないジレンマで余計に腹が立つ。
極論を言うならば、食べられないものは食べ物とは呼べないと思うのだ。
勿論これは個人的な意見なので炎上は勘弁してほしい。
ツイッターどころかスマホももってないけど。

       ※

「………あれも駄目。あっちも不味そう」

最初の男は子連れで対象外だし、その次の男は格好がだらしなかった。
レジーナの持論だが、身だしなみのきちんとしていない男は食生活も自堕落な事が多い。
血が妙にドロドロしていたり、逆にやたらと薄かったり。
どちらにせよレジーナの口に合うような代物ではない。

「じゃああれは?」

指差された方角を一瞥し、レジーナは嫌そうに目を背けた。

「………なんだか変な病気を持ってそうな気がするわ」

はっきり言えば、不特定多数の人間との性交渉の匂いがする。
顔だけで見れば合格だが、あとは全て不合格。

「ーーーーきっと性病ね」

一瞬だけ素に戻った帝が「なるほど」と珍しく納得した。 

「病気持ちは論外よ。食あたりを起こすわ」

一目見ただけでわかった。
あれは、ただのヤリ○ンだ。

「………変なところ鋭いのね、アンタ」
「そんなの当たり前でしょ!?
……………あぁもう!!全然いいのがいないじゃない!!」

どうなってるのよ全く…!とぼやきながらも諦めず次を探すレジーナ。

その隣に立つのは、ここ数日ですっかり見慣れてしまった美貌の変態こと八坂帝やさかみかど

涼しい顔で上下ハイブランドのパンツルックを着こなす帝は、先程から複数の女性に性的な意味合いを含んだ『お誘い』をうけていたが、その全てを隣に座るレジーナを理由に断り続けていた。

おかげで去っていくオンナどもの視線の痛いこと。

「こんな子供を選ぶなんて……!」と面と向かって罵られた時には流石に頭にきたので、「うるさいわよ、おばさん」と、イギリス語で言い返してやった。

レジーナを日本人だとばかり思っていた相手がその言葉にすっかり怯み、悔しそうな顔で去っていくのを爽やかに見送る帝。

やっぱりコイツは性格が悪い。
面倒くさがっていた事がまるわかりだ。

それでいてレジーナからは決して目を離さず、それどころかしたり顔で説教をしてくる有り様。

「……あんたねぇ。もう諦めたらどう?いい加減馬鹿でも理解できたでしょ。あんたの理想の相手なんて、そう簡単に見つかるはずがないのよ」 

大体あんた、ただの小娘の癖に理想が高すぎよと言われ、カチンときた。

「理想が高くて悪い!?私は一生の伴侶を選ぶつもりで厳しく見極めてるのよ!妥協なんてできるはずないじゃない……!!」

「ーーーその結果が餓死寸前、じゃあねぇ……」

「ーーもごっ!!!!」


うるさーーーーい!!と、叫ぼうとした口が素早く帝の手の平に塞がれ、もごもごと呻く。

「いやぁね、もう。
こんな場所で大声を張り上げるなんてお里が知れるわよ」
「むごーーーーーーーー!!」
「…………なんならその口、今すぐふさいでやっても構わないんだがな?」
「ーーーーーー!!!!!」

ぶんぶんぶんぶん。

勢いよく横に振られた頭。
その頭の上にぽんともう片方の手をのせ、「なら大人しくしていることね」と笑う帝は、本当に心臓に悪いほど、レジーナの理想ぴったりで。

「本当にねぇ。変な意地を張らずにさっさと認めたらどう?アンタには私しかいないんだって」

ぶんぶんぶんぶん。
またしても激しく首を振るレジーナに、不満そうな帝。

「諦めてさっさと堕ちてくれば、私が一生可愛がって上げるのに………」

はぁ、と溜め息をつく様子さえ様になってはいるが、騙されてはいけない。

この男の相手をしたとしたら、寿命より先に精魂尽き果てて服上死させられる。

ノーモア、快楽地獄。

すっかり疲れきって、次でもう終わりにしたいと望んだところでカンフル剤のごとく与えられる血液。
もう飲めないと首を振れば、帝自慢のご立派なものを口の中に突っ込まれ、喉に直接精液を流し込まれて強制的に発情を促される。
まさに鬼畜の所業だ。

あの日の翌朝、指一本動かせない状態でベッドに横たわっていたレジーナに向かい、帝は言った。

「私達、どうやら体の相性がぴったりみたいね。
養ってあげるから、今日からアンタここに住みなさいよ」と。

本来であれば願ってもない話であるが、レジーナはその台詞を聞いた直後、反射的に叫び声をあげていた。

「冗談じゃないわよ!
私は変態の愛人になるのなんてごめんだわ!」

愛人。
この男の言っている台詞が本気だとするならば、レジーナに与えられる存在価値はそれしかない。
つまりは互いに体だけが目的の相互扶助。
男の場合はそれにプラスして生活の面倒まで見ると言っているわけだ。

確かに美味しい話ではあるが、レジーナにだってプライドがある。
散々に貪られた挙げ句、あんな上から目線の台詞で「養ってやる」と言われてどうして素直に頷けようか。

これがせめて、レジーナを心から求めての事だったなら、話はまた別だったのだろうが………。

とにかく、アンタの世話にはならないとタンカを切ったレジーナだったが、勿論その後の行く宛など在るはずもなく。
半ば押しきられるような形で、「帝よりもいい餌が見つかるまで、素直に帝の元に留まること」を約束させられてしまったわけだ。

其処には勿論、レジーナの食餌を兼ねた帝との体の関係も当然ながら含まれているわけで。

結局の所、こうして毎日飽きずに街頭に立っては獲物を探し続け、最終的には焦れた帝によって回収され、貪られる日々を送っているわけだ。

今のところレジーナの全戦全敗。
帝より上等な獲物には、一度もお目にかかった事がない。

「ほら、もう帰るわよ」
「ううっ………」

容易く抱き上げられ、ぐすんと鼻をならす。

「まったく困った子ね。もうすっかり体が冷えてるじゃない」

そういいながら優しく頭を撫でる手のひらは暖かくて。

「帝の馬鹿……。変態…」
「その変態に可愛がられて毎日悦んでるのは一体だれかしらねぇ」
「ばか……」

もうすっかり骨の髄までこの男のものになったのだと、認めることは、まだ少し怖い。

でもいつか全面降伏をしてしまいそうな自分がいるのも確かで。
その前にはなんとかこの男から離れなければと、相反する心でレジーナの胸は一杯だった。

「レジーナ。
………早く俺に堕ちてこい」

もうとっくに堕ちていると。
素直に認められる日が来るのは果たしていつの日か。

「いつか………。
いつか、出ていってやるんだから…」

帝の胸に顔を埋め、小さく呟くレジーナの声はどこか切なく。

「はいはい」といい加減に笑う帝の声を聞きながら、レジーナの意識はつかの間の休息へとゆっくり落ちていくのだった。

      

そして、その数時間後。

「か、体が持たない……!やっぱり明日こそ出ていってやるんだからーーー!!」

哀れなか弱い女王様が、鬼畜で傲慢な皇帝陛下に貪られる日々は、まだまだ続きそうだった。
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