わらしな生活(幼女、はじめました)

隆駆

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認めたくない若さゆえ。

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「その元社員が及川くんの言う霊の正体だからといって、俺の意見は変わらない」
「そこは変わりましょうよ、部長」
いくら自分が関係ないときの出来事だからといって、仮にも同じ社員だった人だ。
ちょっとは感情的なものが芽生えるかと思ったが無駄だった。
『んな子育て中の熊みたいに警戒心バリバリにしなくても、タカ子は逃げないぜ?』
なぁ?とこちらに話を振られ、「え、なんで私」と思わず自分を指さす。
『そこの部長さんはさ、が自分の知らないところで危険な目に遭うのが嫌なんだとさ』
だから手放そうとしないんだと言われ、部長を振り返る。
「可愛い部下……!!」
否定しないということは、部長もそう思っているということ!
自ら宣言した覚えはあるが、人からそう言われるとちょっとまた格別。
一人感動していれば、そこに主任からの要らない突っ込みが入る。
「ねぇ、高瀬君。反応するのそこなの??むしろそのセリフに一番含みを感じたのは俺だけ?」
「バカな子ほど可愛い的な表現以外に可愛い子扱いされるのはかなり貴重です」
「うん、やっぱり反応すべきはそこじゃない」
きっぱりと言い切った高瀬に、だめだこりゃ的な反応を返した主任。
「そもそも、高瀬君は普通に可愛いと思うよ?」
『うんうん、そこの主任さんは見る目があるよなぁ。うちのタカ子が一番可愛い』
「今更そんな当然のことを口にしてなんになるんですか、馬鹿らしい」
親ばか発言にしか聞こえない賢治はともかくとして、主任の言葉は普通に嬉しい。
そして竜児よ。
「言わなきゃわからないことも世の中あると思う」
「でしたら言わせてもらいましょう。僕には君が一番です」
「素直!」
下手に可愛いとかなんとか褒めないあたりが微妙にリアルで竜児らしい。
……まぁ、綺麗なお姉さんなんか見飽きてるだろうしな。
及川高瀬はプライスレス、世界に一つだけの花なのだ。
『タカ子は花で言うなら超希少種だよな。
一見どこにでも生えてる雑草に見えて、その実滅多に生えない絶滅種だった的な』
「ケンちゃん、それは褒め言葉に見せかけた悪口ですか」
私はたんぽぽかぺんぺん草か。
『愛嬌があってイイってことだよ。見てると落ち着くだろ?抱いてもちょうど腕にフィットするし』
「抱く……!?」
「ナチュラルセクハラ発言はアウトですケンちゃん」
過剰反応をした主任がこちらを凝視しているのに対し、思い切り腕でバッテンを作り否定する。
「賢治の言う『抱く」は抱き上げるの間違いでしょう」
「…あぁ、それなら記憶にあるわ」
『昔からタカ子は可愛かったからなぁ。ちょっと遠くに遊びに行くと、最後には疲れて『抱っこして』って可愛くおねだりしてきて……』
「ただ単にその頃から君が体力馬鹿だっただけでしょう」
『さすがのタカ子も竜児にはねだらなかったもんな』
実は悔しかったんだろと悪気なくいわれ、平然と「そうですね、奪い取ってやろうかとは常常思っていました」と返す竜児。
『実際それをやってタカ子を落として大泣きされた事があったな』
「あれは僕の人生最大の失敗です」
「人生最大そこ!?」
あれは確か小学校の話だと思うのだが、若気の至りにも程があると思う。
というか突然背中から落とされてマジ泣きした記憶があるのだが、そんなことが原因だったのか。
すっかり幼馴染特有の昔話に話を咲かせたところで、「おーい高瀬君」という主任の声が耳に入り、はっと正気に戻る。
「君らの心温まる面白エピソードはいいけど、うちの部長様のこの顔見てよ」
「う……」
眉間に渓谷ができちゃってさ、と。
笑い話じゃありません、主任。
「ぶ、部長……??」
もしかして、お怒りマックスですか。
そういえばさっきから一言も口を開きませんが。
「……昔話は結構だが、何を言われようと俺の意見は変わらない。
――――――彼女をこれ以上の面倒事に巻き込まないでくれ」
頼む、と。
今にも電話口に向かって頭を下げそうな部長の言葉に反応したのは、そこにいた竜児だった。
「面倒事に巻き込んでいるのはあなたではありませんか?」
「なんだと…?」
冷たい口調でバッサリといわれ、部長の声にもわずかな怒りが滲む。
「そもそもの原因を作ったのが誰か、と聞いてるんですよ。
それもタカ子を関わらせないために自ら原因を潰しに行くと言うならともかく、出来ることはただの逃げですか」
「……!!」
「言っておきますが、安易に危険から遠ざければ済む話だなどと思っているのならそれこそ大きな過ちです。
タカ子は危険と知りつつ自ら飛び込んでいく性格ですから、下手に遠ざければ、それはタカ子を危険な場所へ追いやるだけのこと。
本当にタカ子を危険から遠ざけたいのなら、厄介事など何も目に入らないような環境を整えてやるか――――最大限、危険のないようお膳立てをしてやるか。そのどちらかしかありません」
ダメと言われればやりたくなる、子供と同じですよといわれ、否定できないだけにぐぬぬと唸る高瀬。
「竜児、もうちょっと物は言いようがあると思うんだけど……」
「子供扱いならまだましですよ。赤ん坊と言われないだけ」
「それ言ってるも同然」
しかし助けられている自覚はあるので何も言えない。
うう。
『あれだろ?歩く道先にある石ころは先に全部どけておくってこと』
「僕らにできるのはせいぜい、道のどこに石があるのか、どれくらいの大きさの石なのかを先に調べておくことくらいですけどね」
そういいながら、竜児が仕事用の黒いバックを開くと、中から一枚の書類封筒を取り出し、部長に渡す。
「どうぞ。”彼女”に関する調査資料です」
「なに…?」
訝しげに封筒を開いた部長の手元を覗き込めば、そこに入っていたのは数枚の調査書。 
そこにはいくつかの写真も添付されており、その姿はーーー。

師匠…………?

「え、なんで竜児がそんなもの……」
持ってるの、と。
思わぬ展開に驚いていれば、賢治からはさらに予想外の一言が。

『高木真理子。俺達の調べじゃ、今回の厄介事の鍵になるのは彼女だ』
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