わらしな生活(幼女、はじめました)

隆駆

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情報が命です。

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「…及川くん、こんなところで何をしている?」
「…え、聞くとこそこですか」
シラを切り通そうと思ったものの、どこか見当違いな部長の言葉につい突っ込んでしまった。
「?その姿のことか?」
「普通そうだと思いますけど」
というか一番に気になるところだと思うのだが、そうでもないらしい。
「君のそれは幽体離脱か?」
「まぁ、そんなところで…」
あっさりとカンパされ、素直に返事をする。
そこでようやくほっとしたように部長が吐息を吐いた。
「よかった…。てっきり今日の帰りに君が事故にでもあって亡くなったのかと……」
っておい。
「勝手に殺さないでくださいよっ!」
「そんな姿で現れる君が悪いんだろう…。まったく、焦ったじゃないか…」
「あれで焦ってたんですね…」
姿のことまで気が回らなかった、というのがどうやら正解らしい。
案の定、今更になってそちらが気になったらしい。
「ところで、何だ、君のその姿は」
「…あ、今聞きます?それ」
「さっきはてっきり君が亡くなったと思ったからな…。幽霊は自分の好きな姿を取れるものだろう?」
「いやーまぁ…。そうとも限りませんけど…」
「そうなのか?」
「まぁ…」
言っておくが、高瀬だって別に好きでこの姿でいるわけではない。
「こっちにもいろいろあるんですよ…。っていうか部長こそ。こんな時間に何してるんですか。
今はお化けがかっぽかっぽする時間ですよ?幽霊にとっちゃチャンスタイムですよ?」
何がチャンスって、とり憑くチャンスだ。
「あの後、抱えていた商談の一つがまとまりそうだと連絡が入ってな。さっきまで社に戻ってもう一度資料の見直しを行っていたんだ」
「お疲れ様でした~~~」
真面目なその返答に、へへ~と平伏する。
「ってことは、部長の家ってこのへんなんですか」
「いや・・・・」
あれ、もしかして。
「その顔は………乗り過ごしました?」
そういえば、この少し先に駅の終着地点があったはずだ。
時間的に見て、すでに終電もなく、このあたりにはタクシーも走ってはいない。
「やらかしましたね」
「うるさい」
疲れていたんだ、と視線を逸らす部長は、ちょっと可愛い。
「駅から歩いてきたんですか?」
「ほかに方法がなかったからな…。もう少し歩けば24時間営業している店があると聞いたんだが…」
「部長が漫喫…。ププッ」
この先の繁華街で24時間営業と言えば、漫画喫茶しかない。
「笑うな。仕方がない」
「そうですねぇ、仕方ありませんねぇ…」
口にしながら、寒そうに体をコートで包む部長に、さすがに同情心が湧いた、
「あのですね、部長…」
「なんだ?」
「そこの繁華街に、24時間営業してる便利屋がいるって知ってます?」
「…何?」
「ほかに仕事が入っていなければ、タクシー代と大して変わらない金額で家まで送ってくれますよ」
「本当か!」
「携帯番号も知ってますけど、電話します?」
「当然だろう…番号は?」
早速スマホを取り出し、高瀬が口にしたNoを打ち込む。
通話はすぐに繋がったようだ。
「もしもし・・・・?夜分すまないが、電車に乗り遅れてしまって。自宅までの送迎をお願いできると聞いたんだが…」
その隙に、高瀬はそぉっとハム太郎とほかに2匹を回収し、逃亡を謀る。
「ほら、帰るよ…」
小声で2匹を呼び、部長のそばをうろちょろしていたハム太郎もなんとか呼び戻すと、スカートのポケットに押し込めた。
部長はどうやら上手く話がまとまりそうで、一安心といった顔をしている。
便利屋からここまでは車なら10分程度だ。すぐに迎えに来てくれるだろう。
「よかったですね、部長」
小声でそっと囁いて、高瀬は公園を後にした。
恩を売ったのだから、今日のことはとりあえずなかったことにしてもらおう。
それでチャラということで、と勝手に思っていたのだが・・・。

――――その日の出社後。
「及川君。昨日のあれはどうなっているのか説明してもらっていなかったんだが…」
「チャラになってなかった!!」

・・・・しっかり追求されました。


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