僕の一番長い日々

由理実

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カイトは、
「君、ちょっといいかな?君のその素敵な姿を、見たいって言っている女の子がいるんだ。」
と言って、ワンピースがないと騒いでいる女の子達に合わせたの。

その子は初めは、
「これが私の作ったワンピースよ!返して!」
って言ったんだけど、
「偶然だね。私はただ、あなたと同じ型紙と生地を買って作っただけだけど?」
「嘘よ。例え同じ型紙と生地で作っても、デティールは私のオリジナルだから。」
「ごめんね。あなたのワンピースのアレンジがあまりにも可愛かったから、真似しちゃいました。てへっ♥」

「このワンピースをどこで見かけたの?」
「街角でこの子が着ているワンピース姿を、偶然見かけて、真似しただけだよ。」
「私はこのワンピースを着て出掛けた事なんて、一度もないわ。昨日の夜やっと仕上げたのよ。」
「だってさ。ところで君は今朝、結構早く学校に来ていたけど、この子のクラスに忍び込んで盗んだのではないの?」
「盗んだなんて酷い!どうしてそんな意地悪を言うの?先生に言いつけてやる!」
「どうぞ。」
この時はカイトも、この子に不愉快な目に遭わされてきた子達が、同調してくれると信じていたし、ワンピースを盗まれた子が証言してくれるとも思っていたの。だけど、事態はとても悪い方向に転がって行ったわ。

HRでの、担任の先生からの話は、
「〇〇さんが、人の宿題を盗んだというデマを流されました。先生は悲しいです。」
という出だしで始まりました。
「デマではなく、本当に被害者がいます。」
「その人から話は聞きました。彼女の証言によれば、それは偶然の一致だったと言っています。宿題を忘れて来たので、パニック状態になっていたのだと。そして、後日別の作品を提出する事で解決しました。」
「いくら〇〇さんが障害者だからと言って、身勝手な行動を許すのは違うと思います。」
と、遂にカイトは正直に自分の意見を言いました。

「私が障害者だからって、冤罪を着せるのね。身勝手なのはカイトさん、あなたです。いくら自分の言い分が通らないからって、そんな風に人を犯罪者呼ばわりして言いわけがないじゃない。これは立派な障害者差別であり、陰湿ないじめです。こんな風に男のくせに、か弱い障害を抱えた女の子をいじめるなんて、あなたのやっている事はパワハラです!もう、帰ります!」
と言って、教室を出て行ってしまいました。

「カイトさん!学校はもっと平和に過ごすところです。私は人がこんな風に理不尽に、責められている場面を見るのが辛いです。私は感受性が強くて優しい性格なので、人が辛いと私までしんどくなって、心が辛くなります!カイトさんは酷い!〇〇さんが可哀想です。」
と言い出す女子が出て来ました。日頃は心優しい優等生で通っていた生徒でした。
「障害者の人に優しくするのと、勝手な行動を見過ごすのは違うでしょう。そんなの筋が通っていない。」
と、カイトも引き下がりませんでした。

そうすると、その優しい性格の優等生女子は畳み掛けるように、
「私はこんなクラスの空気は嫌いです。もっと優しい空気が良いです。カイトさんがいなくなる事で、みんなが仲良くなるのが良いです。カイトさん、この荒れた空気を元の優しい空気に戻して下さい。私は皆が私と同じ意見である事を深く祈ります。」
と合掌して涙を流した。

それを受けて、リョウさんに第一印象が似ていたという少年の口からは、これがこの子の本音なのかと呆れるような、可笑しな理論を繰り広げはじめました。

「カイト君の言い分は、正義を装ったいじめです。筋なんて一つも通ってません。カイト君の主張する正義には何の意味もありません。僕は、〇〇さんを庇った、彼女の意見を支持します。障害者いじめは人間として男として最低です。今は男とか女とかないかもしれませんが、生物学上男の方が、女よりも強いのは仕方がない事です。
しかも、泥棒のデマをでっち上げる為に、悪の片棒を担がされた、他のクラスの女の子の気持ちを考えた事がありますか?彼女は無関係な人間でしょう?僕は障害者いじめの為に、冤罪を着せようとして巻き込まれてしまった、他のクラスの女子からの意見も聞きたいです。こんな風に〇〇さんに冤罪を着せるなんて、人間として酷過ぎます。僕達は絶対にカイト君を許しません。」

カイトはHRでの話を全て、スマホに録音していました。彼らの心ない理不尽な台詞の数々に、私は親として悲しくなりました。
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