自分の運命の相手が俺を嫌っているクラスメイトだった話。

リン

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早いことにもうすぐ週末な話。

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「じゃあ、また来週にでも見に行くからな!太一!
 俺は部活とかで忙しいから、引っ越しの手伝いとか出来ないけど……しっかりと、初日から荷物整理とかしとくんだぞ!後でしんどいからな。」

「ああ、それはしっかりとやるよ。初めての寮での生活だし……流石に色々と大変だと思うしね。
 それより直輝はーーいや、なんでもない。部活頑張ってくれ。それじゃあ、また来週にな。」


 ーー週末直前、金曜日の放課後。俺は教室にて、親友兼クラスメイトでもある鷹宮 直輝たかみや なおきにそんな別れの言葉を告げつつ……ひとりボーっとして、その過ぎ去っていく後ろ姿をただ目で見送っていた。

 しかし早いことで、自分の『運命の相手』がクラスメイトで自分のことを嫌っている相手……そして、学年で1・2を争う程の美人である小川 夏樹こがわ なつきさんであるということを知ってからーー早数日。

 ーー週末目前である、今日という日を迎えるまでに、本当に色々なことが俺の身の回りで起きた。


 例えば、クラスメイト(主に男子)から注目されることが良くも悪くも増えた気がする。

 それは何と言うか……突然ウワサに出た俺という存在に対し、戸惑いとともに好奇心を持って見ているようなーーそんな感じの注目の集まり方である。


「(とは言っても……クラスメイト以外の視線がなぁ。正直、俺のことをよく思ってないのがみえみえの視線だから……結構気分が悪いんだよな。
 でもーーあの日から、ホントに定期的に大橋さんは俺に会いに着たり、廊下ですれ違った時も話し掛けてくれるから……これに関しては、大橋さんと話すことが出来るこの立場を受け入れている、その代償だと考えるしかないんだよな……。)」


 ーーそうなのだ。あの教室での大橋さんの誤爆事件をきっかけに、俺から距離を取るのでは?と、そう俺が目していた当の大橋さんは、なんだかんだと、色々言い訳を言いながらも……結局あの日から、毎日一回は俺とどこかで落ち合っているのだ。

 しかし、本人が言うにはーー周りへの誤魔化しのため、一日一回直接会う必要があると言っているのだが……何も、色んな人がいるような場所(例えば、教室や普通の廊下……それに皆が集まる昇降口など)を選らんで俺に話し掛ける必要はないと思う。

 しかも、決まって俺の側に小川さんがいる時ーーそれも学校からの指令で小川さんと登校している時や、教室で隣の席に小川さんが座っている時など……わざわざ小川さんがいるタイミングを狙ったかのように、彼女は俺に話し掛けてくるのだ。


「(でも、そう考えてみると……やっぱり2人の相性ってホント最悪なんだろうな。
 特に大橋さんなんて……小川さんが隣にいるタイミングを狙って、俺に話し掛けてくるくらいだから……相当、小川さんとは合わないんだろう。)」


 ーーやはり人と人とは相性があり、それぞれ学年でも有数の美少女で、2人とも交友関係が広いなどの共通点があっても、合わないものは合わないんだろう。

 しかし、このような相性のすこぶる悪い2人でも、前にも思ったように、2人は結構似てる点が多いと個人的には思っているのだが……片や俺のことを嫌っていて、片や俺のことを(おそらく)異性として意識していないであろうというーーどちらも俺にとって非常に嬉しくない点においては、ある意味で2人は通じ合っていると言える……。


 そうして、俺はそんな悲しい現実に辟易としながらも、とりあえずは……明日の引っ越しの準備のため帰ろうかと思い、そのまま教室を出たところーー


「やあ、もしかしなくても君が中峰くんだよね?」

「えっ……?あなたは……だ、誰ですか……?」


 すると、俺が教室の扉を開いて見たその先には……ひとりのボーイッシュな少女?が教室の前に立っていてーーなぜか、真っ直ぐに俺を見上げながら、そのようなどこか確認にも似た質問をしてくる。

 しかし、俺のそんな困惑した様子にも全く意に介していないのか……謎の少女?は「ふふふ……。」と、悠然とした様子でこちらに微笑んでいる。


 すると、不意に彼女?は俺の右手を取ると、そのまま教室の外に俺を引っ張ってーー「じゃあ……屋上に行こうか?」と、完全に俺の質問をスルーする形で俺をそのまま屋上に連行しようとする。


「いやいや!ちょっ!?ま、待って下さい!
 そもそもなんで屋上に!?……って言うか、ホントにあなた誰なんですか!せめてそれくらいの情報は教えてください!それからついて行きますから。」

「うん?誰って……そんなのすでに分かりきってるじゃないか。ーー私は私。それ以上でもそれ以下でもないだろう?中峰くん?
 それともなんだろう……これも含めて、の可愛い計画の一環だったりするのかな?」


 ……なんだろう。この手のタイプの人は生まれて初めて対面するけれど、ここまで完全に人の話を聞かないというのはーー素直に驚きである。

 とは言え……彼女?の答えにはなっていない答えの中にも、ようやく個人名が出てきたことは、とりあえずの進展であると言える。


「(でも……この人ホントに誰なんだろう?なんか聞き覚えのある声ではあるんだけど……おそらく、これが初対面だと思うんだけどなぁ……。)」


 そして、対面してようやくハッキリとこの人のことを正面から見たのだが……やはりは、口調が男っぽいだけのボーイッシュな少女であった。

 しかしそのように考えてみると、ますます俺と彼女このひとの接点が見出せない。そもそも、俺に女友達なんていないし……最近で言うと、大橋さんや小川さん関連の人に少し話し掛けられるくらいでーーって、あっ!?


「もしかして……大橋さんの友達……だったりします?さっき、柚希ゆずきって言っていましたし。」


 ーーそうだ……。この人どこかで聞いたことのある声だと思ったら、前に大橋さんのことを観察(ストーキング)をしていた時に、よく近くで聞いた声だった。

 その時は大橋さんの取り巻きの声だと、全く意識してその声の主を認識してはいなかったけれど……よくよく思い出してみるとーー少しと言うか……かなり頻繁に、彼女の声を近くから聞いたような気がする。


 すると、俺のその質問を聞いて彼女は、「ん?何を当たり前のことを今更言っているんだい?」と言って、その言葉を聞いて抵抗を止めた俺のことを、ずんずん屋上へと手を引いて、そのまま引っ張っていく。

 ーーもちろん、彼女と俺は初対面なのだが……大橋さんの友達である彼女の話だ。何か彼女なりに、俺の所にわざわざ出向いてでも伝えたいことが、もしかすると何かあるのかもしれない。

 そうして、俺は彼女に手を引かれるままーー放課後誰もいない屋上へと向かい、これからどんな話をされるのだろうという純粋な好奇心とそれ以上にある不安な気持ちを胸に……俺は彼女に向き合う。


 しかしーー俺は一体ここで、彼女にどんな言葉を投げかけられるのだろう?ーー例えば、俺みたいな陰キャな奴は大橋さんに相応しくないとか……そんなのことを言われたりするのだろうか?

 、繰り返し巻き戻すようにして、そんな分りきったことをーー今更に。


 しかし、そんな俺の暗い予想を遥かに超えたぶっ飛んだ話を、彼女はほぼ初対面の俺にしてきて……


 ーー次話へと続く。ーー
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