彼女と突然別れて落ち込んでいたはずの俺が、次の日から色んな女の子と仲良くなっているのはなぜだ?

リン

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第五話 優しいお姉さんな先輩

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「あの……ホントにありがとうございます。見ず知らずの俺の事を気に掛けてくれたばかりか、そのご迷惑をお掛けしました。
 俺は1年B組の相川 相太あいかわ そうたっていいます。今更なんですけどあなたのお名前は……?」

「いえ……わたしから声を掛けさせてもらったので迷惑だなんてそんな……。えへへ、なんだか今更ながらですけど、面と向かって挨拶するのは恥ずかしいですね。
 私は大岡 三葉おおおか みつばと言います。私は相川さんの一つ上で2年D組に所属しています。改めてよろしくお願いします!」


 ーー人気の少ない商店街。

 そこを二人で歩く俺と彼女は、今更ながらではあるがお互いに自己紹介して、どことなく気まずいような……二人とも何とも言えない緊張感を感じていた。

 理由はもちろん明白だが、彼女、大岡先輩も俺に気を遣ってなのか特にについては明言しない。

 しかしながら、俺の胸中では先程までとは違った色んな感情が吹き荒れていた。


「(いや……普通に気まず過ぎるだろ!!いくら色々と思う所があって人前で泣いてしまったとはいえ、先輩のそれも超絶美人の肩でさっきまで泣いていたなんて!
 あの後、気持ちが段々落ち着いて冷静になってくると、寂れた商店街とはいえ、往来のど真ん中で女性に抱きしめられながら泣いてた男子高校生って……。ダメだ!!色んな意味で恥ずかしすぎるぞ……俺っ!!)」


 正直、叫びながら逃げ出してしまいたい気持ちで一杯ではあるが、大岡先輩がこちらを気に掛けてくれている以上、こちらから逃げ出す訳にはいかない。


「こちらこそ、よろしくお願いします!さっきはお見苦しい姿をお見せしましたが、今度はホントにもう大丈夫です。」

「はい、相川くんの今の顔を見ていれば、ちゃんと大丈夫だって思います。苦しい時は正直に周りに頼ってください。私も微力ながら苦しくなくなる手助けをしますから!
 それに……もうさっきまでの名前も知らない間柄ではありませんしね?」


 大岡先輩は優しくこちらに微笑みかけ、少しだけイタズラっぽくウィンクをする。

 本人の美少女っぷりもあってとてつもない破壊力であるが、先程までの少し固い印象から年上の優しくて少しお茶目なお姉さんという印象に俺の中では変わっていた。

 そんな優しいお姉さんな先輩相手に俺は、彼女と別れた悲しさを一時的に忘れて、他愛のない会話を楽しむ事が出来た。

 こちらの様子を見ながらテンポ良く会話を回してくれるので、特に途切れるような事はなく会話を続ける事が出来て、なんだかずっと昔からの知り合いと会話をしているなような、そんな錯覚に陥るくらいに大岡先輩との会話は弾み楽しくいられた。


「なるほど、それでは相川くんは中高一貫のコースなんですね。わたしは高校からの外部受験でしたから、小学生の時からお受験をするって自分では考えられないですね。」

「いや、俺も自分から中学受験をしたい!ってそんな事はなかったんですけど、周りの中学があまり良い評判ではなかったんで、親の勧めもあって中学受験をした感じですね。」

「私の周りでは特にそのような話は聞きませんでしたね。やはり、男子と女子では色々と評判が違ったりするんですね?
 恥ずかしながら男の子のお友達が出来た事がありませんので……、男の子達が話す評判などは知りませんでした。」

「そ、そうなんですか?大岡先輩みたいに明るくて可愛らしい方なら、ぜひ友達になりたいって男が多そうですけどね?」

「えっ……?そ、そうでしょうか?久しく男の子と今みたいに話しかけられた記憶はありませんが、そのように言っていただけて嬉しいです!ち、ちなみに何ですけど……相川くんもそう思ってくれでますか?わたしとお友達になんて……ど、どうですか?」

「んぁ!?も、もちろん!俺も思いますよ?先輩に友達ってのもアレですけど……俺でよければぜび!友達になりましょうか?」

「ほ、ほんとですか!?ありがとうございます!このように気軽に話せる男の子のお友達が欲しかったんです!」

「そ、それは良かった……です?」


 すると、会話の流れの中で俺はなぜか大岡先輩の友達?になる事が出来たのだった。

 余談であるが、大岡先輩は小さい頃は男の子から揶揄われ、中学の辺りからは話し掛けてもあわあわされる事が多かったようで、これまであまり会話という会話を交わした男はいなかったそうだ。

 ーー整い過ぎている容姿もある意味で考えものである。(本人はあまり意識していないようではあるが……。)


 そうして、他愛のない話を続けていた俺達であるが、商店街を抜けた辺りから徐々に生徒達が姿を見せ始め、この時間の終わりがそろそろ近い事を示していた。


「何と言うか……ありがとうございます。今朝ずっと今日という日が憂鬱になるような気がして実際そうだったのですが、大岡先輩に会ってこうして話す事が出来たんで、今日一日明るい気持ちでいられそうです。だから……ありがとうございます。短い時間でしたがとても楽しかったです。」

「いいえ、こちらこそ。わたしとお友達になってくれて、とても嬉しいです。わたしとの時間が相川くんにとって楽しめるものであったのなら幸いです。
 あっ!それと!わたし達晴れてお友達になれたんですから、大岡先輩ではなく……三葉と呼んでください。わたしのお友達はみんなそう呼んでるんで……そ、相太くんもみんな同じように『三葉』でお願いします!」


 ーー意外とグイグイ来るなこの人!?

 おそらく初めて?出来た男友達が嬉しかったのか、大岡先輩は自身を下の名前で呼ぶようにこちらへ提案してきた。

 俺としては今の大岡先輩でも良かったのだが、先程迷惑を掛けた上に上目遣いでチラチラとこちらに視線を送る彼女(可愛い)を無碍にする事は出来そうもない。

 とは言え、流石にいきなり先輩を呼び捨てにするのはハードルが高いので、下の名前に先輩を付ける事で納得してもらう。


「あー、流石にいきなり呼び捨ては俺が緊張するんで、三葉先輩と呼ばせてもらえませんか?俺の事は相川でも相太でも好きな方で呼んでもらっていいんで。」

「そうですでね……。今は出会って間もないので、これから交流を深める事で自然に呼び方も変わりますよね!分かりました!わたしは相太くんと呼ばせてもらいますから、相太くんは三葉先輩とお呼びください!」

「は、はぁ……。分かりました。これからは三葉先輩と呼ばせてもらいますね。
 あっ!でも……もうソロソロ昇降口に着くので今日はここまでですね。よければまたお話ししましょう。」

「あっ!もう着いてしまったんですね。もう少しお話をしたかったのですが……仕方ありません。また近いうちに会いに行きますので、その時にでもゆっくりお話しをして相太くんさえよければを聞かせてください。」


 辿り着いた昇降口で別れの挨拶をした俺達は、様々な視線がこちらに集まるのを感じながらも、俺は1年の、三葉先輩は2年の下駄箱にそれぞれ分かれて向かう。

 麗奈との一件で注目を集めているのは勿論だが、今回のそれは三葉先輩と親しげに挨拶を交わしていた事も無関係ではないだろう。


 正直、ただ登校をするだけでここまで体力を消費したのは、麗奈と付き合い出したその翌日の登校日以来である。

 あの時も学年問わず様々な生徒達から視線を集めまくっていたので、精神的な面でのストレスで体力を消費していた気がする。

 それに比べて今回は、2度も大きく感情を揺さぶられた上に、とてつもない美人に抱きつきながら泣くというーー字面だけでもしんどい行為をしてしまった為、登校して間もないのだがすでに帰りたくなってきた。


「(……とは言っても、正直しんどいのはこれからだしな。クラスが違うのはかなり助かるけど、どうせ俺のクラス周辺がザワザワしてるんだろうなぁ……。
 麗奈は見た目通りのクールな感じで全部無視するから、事実確認とかその他諸々が全部俺の方に来るんだよな……。付き合い出してからは尚更そうだったし。)」


 ーー思い出しただけでも気が重い。

 麗奈と付き合い出したのは中学2年の頃だったが……あの時はヤバかった。

 当時、中学生徒会の副会長だった麗奈が学年問わず人気者過ぎるので、その麗奈が付き合ったというニュースは瞬く間に拡散され、連日クラスに野次馬が押しかけてきた程だ。

 しかも何がヤバいって、その時の麗奈がその一切合切を無視か、「アナタ達に何か関係ある?」とバッサリしていた事もあり、日を追う毎に俺への質問や麗奈に関する問い合わせが増えて、中学3年になる頃には俺達の交際に関する事以外の麗奈への問い合わせが俺の方に来ていた程である。

 しかしそれも昨日までの話だ。これからはそのような問い合わせや俺がコンタクトを取る事もその必要も無くなるだろう。

 その上、麗奈と付き合っていた事もあり、俺はよく生徒会の手伝いなども行なっていたが、それすらも今となっては麗奈を含め生徒会の方々の迷惑になりかねない。

 昨日の今日でここまで周りの状況が変わるとは……色んな意味で人生とは分からないものである。


 そうして、下駄箱で色々と今後について考えながら靴に履き替えて、いざ教室に向かおうと階段を登ろうとしてーーんん!?

 ザワザワと周りが騒がしくて辺りに目を向けると、視線の先でニコニコとこちらに可愛らしい笑顔でぱたぱたと手を振る三葉先輩の姿が。

 その笑顔の破壊力もさることながら、わざわざ下駄箱で靴を履き替える俺の事を待っていたと考えるとーー控えめに言って、先輩の行動が天使過ぎる!!


 そのため、俺は思わずといった感じで先輩に控えめにではあるが手を振り返すと、うんうんと先輩は頷きつつ、口元だけで『またね』とこちらに向けて伝えてくる。

 これまで以上に周りからの視線が集まるのを感じつつ、俺は三葉先輩の可愛さに思わずニヤケそうになる顔を覆い隠すようにして、教室への階段を駆け上がるのだった……。



 ーー今日という日を境に、俺とその周辺の環境と関係が大きく変化する事をこの時の俺はまだ知らない。
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