異世界に転移したんだけど……、自由に生きてもいいよね?

リン

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私の運命の人

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6「私の運命の人」

ーーーー王城にてーーーー

バタバタバタ!

ガチャン!


「ミラ!大丈夫か!逃亡中ののタカナシ カルマというものが、ここを訪れたかもしれないという報告を聞いて急いで見に来たが…」


私の部屋に王さま、つまりお父様がとても慌てた様子でそう言って、バタバタと駆け込んでくる

しかし私はそれよりも、お父様の話で疑問に思う部分があった

タカナシ カルマ?

私は一瞬誰のことか?と思ったが、そう言えば彼の言っていたことを思い出した

あの人は、自分の本当の名前はタカナシ カルラだと言っていた


なぜかお父様の前では偽名を使っていたみたいだ…その理由はわからないが


それよりも彼が去り際に発した光、あの暖かい光に包まれた瞬間、自身の体調が変化したことを、私は瞬時に理解した

「ええ、私は大丈夫です
それよりもお父様…、実は先程なったばかりなのですが…私、病気が治ったようなのです!」

私は彼の先程の言葉を思い出しながら、お父様に自身の病魔が完治したことを伝える


あの時、彼の質問に答えた私は不覚にもぼろぼろと涙を流してしまった
人前で泣いたことなんて覚えている限り、赤子の頃以来のことなので自分でもとても驚いてしまった


だけど私は悔しかった…
自分を無価値だと認めてしまうのは
けれど願いたかった…
病気に縛られない自由な自分を

でも私は願ってはいけない
私の願いで、そのためだけで妹の幸せを奪い、妹を不幸にする事は出来ないから

それでも生きていたい、誰かに必要としてもらいたい
そんな思いが溢れて、彼の前でぼろぼろ泣いてしまったのだ

きっと彼はそのことも、私の泣いてしまった理由も見透かしているのだろう
それが今では恥ずかしく思いながらも、少し嬉しくもある


ええっと、話を戻すと私の体はかつての様な健康体、何も体に不調がない頃のような元の体に戻ったのだ!
それもカルラという謎の青年によって…

「その逃亡者さん?その方が私の病気を治してくれたのです!」


私はそう言うと、久しぶりに自分の力で起き上がり、お父様のそばまでゆっくりと歩み寄る

「ミ、ミラ!!!」


お父様はそれを聞いて涙を流して、私を強く抱きしめてくれる

「本当に病気が治ったんだな!?
ああ、ああ! よかった!本当に良かった!」


それからお父様と私は、後から到着した侍女に食堂に案内されるまで、涙を流しながら二人、キツく抱きしめあったのだった…








ーーーー食堂にてーーーー

その後、私とお父様は侍女たちに連れられて食堂に到着した
その道中も私はゆっくりながらも、自分の足でその廊下を歩いた

何年ぶりだろうか?
人の手を借りず自分の足で地面を歩いたのは…
それもこれも、病気を治してくれた彼のおかげだ


心の中で改めて彼に感謝していると、同じく食事を終えたお父様が私に声を掛けてくる

「久し振りのちゃんとした食事はどうだ?ミラ?
ちゃんと全部食べられそうか?」


「ええ、大丈夫です
久しぶりのお食事は、とても美味しく感じられます」

と、私は自身の食べ終えた食器皿を眺めながら答える


私の病気は原因不明の病魔だと言われ、完治するとのは教会、医者、どれに頼っても不可能だと言われたものであった

私はそんなどうにもならない病魔に絶望し、生きることを諦めかけていたのだが…

そんな状態だったにもかかわらず、彼は私に興味を持って、なんの見返りも求めずに私のことを助けてくれた


そうだ!きっと彼は…
私の運命の人、私の王子様に違いない!


私はそう考え、机をバンと叩き…

「私、彼のこともっともっと詳しく知りたいです!
それに…治してくれた彼にまだ御礼の言葉すら言えてないのです!」


そんな私の必死な叫びに、お父様は

「ああ、そうだな…初めはわしに歯向かうただの反逆者かと思ったが、彼はお前のことを助けてくれたのだ
何か彼なりの断る理由があったのだろう
今からでも国中に呼びかけて、また彼にこの城まで戻ってきてもらおう
それにこの度の偉業、それに対しての褒賞も与えねばならぬしな」


お父様はそう言うと、うむと深く頷き、彼のことを探しだして、この城に呼び戻すようにと部下の人たちに伝えたのだった…




しかし彼らは知らなかった
カルラが人の話をちゃんと聞かない、不思議な行動原理で動くちょっと変わった人物であるという事を…
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