好感度0になるまで終われません。

チョコパイ

文字の大きさ
75 / 140
作られた聖女

曖昧でメランコリーな記憶

しおりを挟む
これはレイヤの前世…

頭の中に幾つもの物語が浮かんでは消え、消えては浮かぶ。

どれもこれも胸糞の悪いものばかりだ。

・・・・・

転生しては殺されていく聖女。

そして聖女の傍らにはいつも聖女を愛し守ろうとするも守ることの出来ない情けない男……

これが私の前世だとしたら…私は愚かな間抜けだ。

次こそは…今度は...物語が変わる度に、そう意気込むのに…結果はいつも同じだ。

私は愛する人を守ることが出来ない…

物語の中、消えていく愛する人の生命を見送るだけの傍観者の自分…

これは悪夢だ。
現実ではないのだ。

悲しみと怒りにのみこまれないように、精神を統一させる。

物語が変わる。

先程までの地獄図ではなく穏やかな時間が流れる。

家族に愛され微笑む彼女。

そうか…これは聖女が夢見た世界。

誰も彼女を傷つけたりしない。
ただただ愛される日々。

でも、そこには私はいない。

私だけいない……
彼女を幸せにするには私などいない方がいいのかも知れない。

私が彼女を不幸にしている…

私さえ居なければ…

「…ディア、ディア!!」

涙の向こう側に同じように涙で濡れたレイヤがいる。

「ディアの馬鹿…馬鹿…
ディアの……」

レイヤが私の胸に顔を埋め声をあげ泣きじゃくる。

「ずっと側に居てくれたのに…ずっと一緒に居てくれたのに…忘れてたなんて…私……」

今ではない過去…過去と呼ぶには曖昧でメランコリーな物語。

でも……

「レイヤ…有り難う。
私を選んでくれて…」

細いレイヤの肩を抱きしめる。

「有り難う…どの物語も私を選んでくれて…」

うまく言葉に出来ない。
でも……

「ディア…私こそ有り難う…いつも私を守ってくれて…私を見つけてくれて…ディアが居たから辛いだけの日々じゃなかった……」

レイヤの言葉が胸に刺さる。

自分を死に追いやった者の子供として生まれ変わっては利用され…殺されてはまた生まれ変わる。

っうっ…うっうっ……

「何もしてあげられなかった…何も……何一つ…」

私の言葉にレイヤがブンブンと首をふる。

「ディア…」

レイヤの唇が私の唇をふさぐ。

柔らかで温かなレイヤの唇が私の下唇を包みこむ。

「ディア、私…思い出したの……私…やっと思い出したの…」

レイヤが私を見つめる。

「ディアが私にしてくれたことを…」

私の背中にまわされたレイヤの腕に力がはいる。

「ディア…あなたが私に……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」 新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。 1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。 2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。 そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー… 別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

酒の席での戯言ですのよ。

ぽんぽこ狸
恋愛
 成人前の令嬢であるリディアは、婚約者であるオーウェンの部屋から聞こえてくる自分の悪口にただ耳を澄ませていた。  何度もやめてほしいと言っていて、両親にも訴えているのに彼らは総じて酒の席での戯言だから流せばいいと口にする。  そんな彼らに、リディアは成人を迎えた日の晩餐会で、仕返しをするのだった。

婚約者に好きな人がいると言われ、スパダリ幼馴染にのりかえることにした

みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢のアンリエッタは、婚約者のエミールに『好きな人がいる』と告白された。 アンリエッタが婚約者エミールに抗議すると… アンリエッタの幼馴染みバラスター公爵家のイザークとの関係を疑われ、逆に責められる。 疑いをはらそうと説明しても、信じようとしない婚約者に怒りを感じ、『幼馴染みのイザークが婚約者なら良かったのに』と、口をすべらせてしまう。 そこからさらにこじれ… アンリエッタと婚約者の問題は、幼馴染みのイザークまで巻き込むさわぎとなり―――――― 🌸お話につごうの良い、ゆるゆる設定です。どうかご容赦を(・´з`・)

私と義弟の安全は確保出来たので、ゆっくり恋人を探そうと思います

織り子
恋愛
18歳で処刑された大公家の令嬢、セレノア・グレイス。 目を覚ますと――あの日の6年前に戻っていた。 まだ無邪気な弟ルシアン、笑う両親。 再び訪れる“反逆の運命”を知るのは、彼女だけ。 ――大公家に産まれた時点で、自由な恋愛は諦めていた。だが、本当は他の令嬢達の話を聞くたびにうらやましかった。人生1度きり。もう少し花のある人生を送りたかった。一度でいいから、恋愛をしてみたい。 限られた6年の中で、セレノアは動き出す。 愛する家族を守るため、未来を変えるために。 そして本当の願い(恋愛)を叶えるために。

悪女として処刑されたはずが、処刑前に戻っていたので処刑を回避するために頑張ります!

ゆずこしょう
恋愛
「フランチェスカ。お前を処刑する。精々あの世で悔いるが良い。」 特に何かした記憶は無いのにいつの間にか悪女としてのレッテルを貼られ処刑されたフランチェスカ・アマレッティ侯爵令嬢(18) 最後に見た光景は自分の婚約者であったはずのオルテンシア・パネットーネ王太子(23)と親友だったはずのカルミア・パンナコッタ(19)が寄り添っている姿だった。 そしてカルミアの口が動く。 「サヨナラ。かわいそうなフランチェスカ。」 オルテンシア王太子に見えないように笑った顔はまさしく悪女のようだった。 「生まれ変わるなら、自由気ままな猫になりたいわ。」 この物語は猫になりたいと願ったフランチェスカが本当に猫になって戻ってきてしまった物語である。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

処理中です...