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私、許しあう尊さを知ります。
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「覚えてる?
私が侍女やジェームスに謝った時、
アレク一緒にあやまってくれたよね。
夫婦だからって……」
「もちろん。覚えているよ」
「じゃあ、
ちゃんと一緒にあやまろう。
ラインハルトに……」
私の言葉に旦那様は言葉を濁す。
「アレクのお父様を殺したのはラインハルトではありません。
ラインハルトの父親が殺したのであってラインハルトではないのです」
旦那様だってわかっている。
でも、誰かを憎まなければ乗り越えられない傷もあるだろう。
かつての私のように……
(お線香をあげさせてもらえませんか?)
父が留守の時、年老いた夫婦が家をたずねてきた。
ケアマネとして市役所で働いていた母の訃報を聞いて弔問に来る人がいることもあって、何の疑いもなく仏間に案内した。
(息子を許して上げてください。本当に申し訳ありませんでした)
仏間に並んだ2つの骨壺に
泣きながら土下座する夫婦を見た時、わけのわからない苛立ちと怒りがこみ上げてきた。
(帰って下さい。
早く帰れ~!
お前等の息子が殺したんだ
帰れ~!!
お母さんとお兄ちゃんを返せ)
当時まだ15歳の私には、加害者の親を受け入れられる程、心が成長していなかった。
私の騒ぎに近所のおばちゃんが来てくれて事態はおさまった。
口から出た言葉は取り消すことは出来ない。
怒りと苛立ちから出た言葉が
後々になって大きな後悔となって自分に返ってくるなんて当時の私は思いもしなかった。
田舎のネットワークは恐ろしい。
悪意と正義感と言う名のお節介は私の意思などお構いなしに加害者の家族を襲った。
結果、加害者の家族は住み慣れた家を出るしかなかった。
(あの時私が騒がなければ、
あの時私が…)
あやまることも出来ない現実は大きな傷となって、今も時折顔をだす。
「アレク、アレキのためにも
恥じない親でいたいの。」
私の言葉に旦那様はうなずいた。
皇城につくと、従者の案内で貴賓室に通された。
「ラインハルト……」
貴賓室にはラインハルトが先に来ていて、部屋に通された私達に深々と頭を下げた。
「すまなかった。」
旦那様がラインハルトに近寄り頭を下げる。
私も旦那様の隣に並び、深々と頭を下げる。
本物のクレアだったら、
きっと離縁に応じて
ラインハルトと一緒になっていたはずなのに、
浅ましくも私は私の感情を選んでしまったのだ。
(2人を幸せにしたい)と
息巻いてたくせに。
「私の方こそすいませんでした。
亡くなった父にかわって
あやまります。
本当に申し訳ありませんでした。」
ラインハルトが旦那様に謝罪する。
旦那様も
「貴方の姉上の件、
それにクレアとのこと本当にすまなかった」
もう一度2人で頭を下げる。
互いに手を差し出し
かたく握りあう。
涙でゆがんだ風景の中
2人の固く結ばれた手だけが、
はっきりと目に映る。
私
斎藤恵理31歳。
今日、私は許す尊さを学びました。
私が侍女やジェームスに謝った時、
アレク一緒にあやまってくれたよね。
夫婦だからって……」
「もちろん。覚えているよ」
「じゃあ、
ちゃんと一緒にあやまろう。
ラインハルトに……」
私の言葉に旦那様は言葉を濁す。
「アレクのお父様を殺したのはラインハルトではありません。
ラインハルトの父親が殺したのであってラインハルトではないのです」
旦那様だってわかっている。
でも、誰かを憎まなければ乗り越えられない傷もあるだろう。
かつての私のように……
(お線香をあげさせてもらえませんか?)
父が留守の時、年老いた夫婦が家をたずねてきた。
ケアマネとして市役所で働いていた母の訃報を聞いて弔問に来る人がいることもあって、何の疑いもなく仏間に案内した。
(息子を許して上げてください。本当に申し訳ありませんでした)
仏間に並んだ2つの骨壺に
泣きながら土下座する夫婦を見た時、わけのわからない苛立ちと怒りがこみ上げてきた。
(帰って下さい。
早く帰れ~!
お前等の息子が殺したんだ
帰れ~!!
お母さんとお兄ちゃんを返せ)
当時まだ15歳の私には、加害者の親を受け入れられる程、心が成長していなかった。
私の騒ぎに近所のおばちゃんが来てくれて事態はおさまった。
口から出た言葉は取り消すことは出来ない。
怒りと苛立ちから出た言葉が
後々になって大きな後悔となって自分に返ってくるなんて当時の私は思いもしなかった。
田舎のネットワークは恐ろしい。
悪意と正義感と言う名のお節介は私の意思などお構いなしに加害者の家族を襲った。
結果、加害者の家族は住み慣れた家を出るしかなかった。
(あの時私が騒がなければ、
あの時私が…)
あやまることも出来ない現実は大きな傷となって、今も時折顔をだす。
「アレク、アレキのためにも
恥じない親でいたいの。」
私の言葉に旦那様はうなずいた。
皇城につくと、従者の案内で貴賓室に通された。
「ラインハルト……」
貴賓室にはラインハルトが先に来ていて、部屋に通された私達に深々と頭を下げた。
「すまなかった。」
旦那様がラインハルトに近寄り頭を下げる。
私も旦那様の隣に並び、深々と頭を下げる。
本物のクレアだったら、
きっと離縁に応じて
ラインハルトと一緒になっていたはずなのに、
浅ましくも私は私の感情を選んでしまったのだ。
(2人を幸せにしたい)と
息巻いてたくせに。
「私の方こそすいませんでした。
亡くなった父にかわって
あやまります。
本当に申し訳ありませんでした。」
ラインハルトが旦那様に謝罪する。
旦那様も
「貴方の姉上の件、
それにクレアとのこと本当にすまなかった」
もう一度2人で頭を下げる。
互いに手を差し出し
かたく握りあう。
涙でゆがんだ風景の中
2人の固く結ばれた手だけが、
はっきりと目に映る。
私
斎藤恵理31歳。
今日、私は許す尊さを学びました。
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