暴力みたいな恋でした(完結)

回想～過ぎ去りし日々 1～

｢また、やってしまった。｣
ぐちゃぐちゃになったレポートと、解読不明の文字。
そして、頭を抱える私。
｢これはきっと、何かの呪いに違いないわ。｣
現実逃避しながらも、頭の片隅ではレポート提出までの時間を逆算している冷静な私がいる。

トントン
｢お嬢様、そろそろ支度をはじめないと授業に間に合いませんよ｣
侍女のマリがドア越しに声をかける。
｢わかったわ。入って｣
私は机に散らばったレポート用紙をかき集め、何事もなかったかのような顔をする。
｢朝食は軽めでお願いするわ。｣
私の言葉にマリは頷くと、温めのお湯が入った陶器とフワフワなタオルを乗せた台車を、鏡台近くに置くと静かに立ち去っていく。

ホワホワと薔薇の香りが漂うお湯をすくい優しく顔を洗う。
｢ふぅ…｣
タオルを顔にあてながら、小さな不安を飲み込む。
私であって私ではない。
私の中の何かが私を不安にさせる。
｢まぁ、くよくよ悩んだって仕方ないわ。まずは明後日までにレポート終わらせなきゃ。｣

ガウンを羽織り、繋がっている私室へのドアをあけると、テーブルには朝食が準備されている。
母が他界して、父が再婚してから私は自室で食事をとるようになった。
父も継母も私を蔑ろにするような人ではなかった。
特に父は私を想ってか、後継が出来ないように手術したそうだ。
継母も、それを承知して後妻にはいったのだと執事に教えてもらっている。
用意された朝食をとりながら、
今日1日のスケジュールをマリが伝える。
私の1日がはじまる。