暴力みたいな恋でした(完結)

回想～過ぎ去りし日々 2～

学園まで馬車で40分。
父の後継として伯爵になることが決まってから７年経った。
つまり、母を亡くしてから７年も経ったのだ。

｢ママみたいになって、パパのお嫁さんになる～｣
まだ元気だった母の足元にくっついて、お茶会に行く綺麗に着飾った母を見上げる。
貴族には珍しい恋愛結婚だった両親はとても仲良く、誰からみてもお似合いな2人だった。
父は近衛騎士団長として、週の半数を城で過ごし、残りの半数を伯爵領で領主として過ごす。
どんなに多忙であっても、母や私に対して献身的で愛情深かった。

だからこそ憧れていたのだ。
愛し愛される両親みたいな結婚生活に。
母のように美しい淑女に‥

馬車の窓ガラスに映る私は
ポニーテールに騎士服。。。
代々近衛騎士団長を継ぐ伯爵家にとって、騎士になることは宿命であり後継としての責務でもある。
柔らかかった母の手と違い、剣を握る手は硬く切り傷や青アザだらけだ。

｢こんな女、好きになる男なんているのかしら？｣
窓ガラスに映る自分自身の姿に
問いかける。
｢…いるわけないか(笑)｣
騎士課の同級生の男性すら、女騎士は敬遠されるのに、一般の
男性からしてみたら、はなから相手にもしてもらえないだろう。

揺れる馬車の中
私は自分の頬を両手で挟むようにパチンと叩く、騎士を目指す学生になるために。
淑女に憧れていた幼き少女を追い出すために...