1 / 1
プロローグ
――人類と悪魔の邂逅
しおりを挟む
二〇××年。
人類は、初めて「悪魔」の存在を公式に確認した。
それは宗教的象徴でも、比喩でもなかった。
観測され、記録され、分析可能な――
人類とは異なる知性を持つ存在として、悪魔はこの世界に現れた。
彼らは言葉を理解し、契約を提示した。
――力を与える。
――代わりに、対価をよこせ。
その契約は明確で、合理的で、そして魅力的だった。
悪魔と契約した人間は、身体能力が向上し、知能が拡張され、感覚は鋭敏になった。
病を克服する者が現れ、貧困から抜け出す者が現れ、犯罪を未然に防ぐ者さえいた。
人はそれを「進化」だと呼んだ。
悪魔と契約することで、人は今よりも優れた人間になれる。
そう信じた者は少なくなかった。
政府は当初、悪魔の存在を否定した。
次に管理しようとし、やがて制度化した。
契約は登録制となり、悪魔は「特異存在」と定義され、
契約者は「能力保持者」と呼ばれるようになった。
悪魔は恐怖の対象から、資源へと変わった。
――ここまでは、公式記録に残されている事実である。
だが、記録には残らなかったこともある。
契約者の中には、徐々に感情を失う者がいた。
怒りも悲しみも感じなくなり、合理性だけが残る者。
あるいは、暴力性が異常に増幅し、理性を失う者。
彼らは「副作用」と呼ばれた。
契約の対価として、何を失ったのか。
それを正確に理解している者は、ほとんどいなかった。
さらに、人類は気づいていなかった。
――すべての人間が、悪魔と契約できるわけではない、という事実に。
適合しない者。
拒絶される者。
契約に耐えられない器。
そうした人間は、最初から切り捨てられていた。
やがて、非公式な市場が生まれた。
違法契約。
強制契約。
悪魔を“宿す”という手段。
悪魔は、もはや選ぶ存在ですらなくなった。
人間の側が、悪魔を管理し、兵器として扱い始めたのだ。
犯罪は進化した。
悪魔の力を用いた銀行強盗。
超人的反応速度による完全殺人。
空間を歪める密室犯罪。
警察は追いつけなかった。
法は無力だった。
そして、悪魔を使う犯罪を追うために、
悪魔を使う者が必要になった。
人々は、彼らをこう呼んだ。
――悪魔探偵。
その中でも、最も異質な存在がいる。
契約の記録がなく、
悪魔名の登録もなく、
それでいて、悪魔の力を自在に扱う男。
荒神斗真。
彼の体には、確かに悪魔がいる。
だが、どの記録にも、その契約は存在しない。
一部の者は言う。
彼は奇跡だと。
一部の者は言う。
彼は災厄だと。
だが、真実を知る者はいない。
――ただ一つ確かなことがある。
悪魔を狩り続ける彼の影には、
常に“もう一つの影”が寄り添っている。
それが何者なのか。
それが、いつから彼の中にいるのか。
その答えは、
まだ誰も知らない。
人類は、初めて「悪魔」の存在を公式に確認した。
それは宗教的象徴でも、比喩でもなかった。
観測され、記録され、分析可能な――
人類とは異なる知性を持つ存在として、悪魔はこの世界に現れた。
彼らは言葉を理解し、契約を提示した。
――力を与える。
――代わりに、対価をよこせ。
その契約は明確で、合理的で、そして魅力的だった。
悪魔と契約した人間は、身体能力が向上し、知能が拡張され、感覚は鋭敏になった。
病を克服する者が現れ、貧困から抜け出す者が現れ、犯罪を未然に防ぐ者さえいた。
人はそれを「進化」だと呼んだ。
悪魔と契約することで、人は今よりも優れた人間になれる。
そう信じた者は少なくなかった。
政府は当初、悪魔の存在を否定した。
次に管理しようとし、やがて制度化した。
契約は登録制となり、悪魔は「特異存在」と定義され、
契約者は「能力保持者」と呼ばれるようになった。
悪魔は恐怖の対象から、資源へと変わった。
――ここまでは、公式記録に残されている事実である。
だが、記録には残らなかったこともある。
契約者の中には、徐々に感情を失う者がいた。
怒りも悲しみも感じなくなり、合理性だけが残る者。
あるいは、暴力性が異常に増幅し、理性を失う者。
彼らは「副作用」と呼ばれた。
契約の対価として、何を失ったのか。
それを正確に理解している者は、ほとんどいなかった。
さらに、人類は気づいていなかった。
――すべての人間が、悪魔と契約できるわけではない、という事実に。
適合しない者。
拒絶される者。
契約に耐えられない器。
そうした人間は、最初から切り捨てられていた。
やがて、非公式な市場が生まれた。
違法契約。
強制契約。
悪魔を“宿す”という手段。
悪魔は、もはや選ぶ存在ですらなくなった。
人間の側が、悪魔を管理し、兵器として扱い始めたのだ。
犯罪は進化した。
悪魔の力を用いた銀行強盗。
超人的反応速度による完全殺人。
空間を歪める密室犯罪。
警察は追いつけなかった。
法は無力だった。
そして、悪魔を使う犯罪を追うために、
悪魔を使う者が必要になった。
人々は、彼らをこう呼んだ。
――悪魔探偵。
その中でも、最も異質な存在がいる。
契約の記録がなく、
悪魔名の登録もなく、
それでいて、悪魔の力を自在に扱う男。
荒神斗真。
彼の体には、確かに悪魔がいる。
だが、どの記録にも、その契約は存在しない。
一部の者は言う。
彼は奇跡だと。
一部の者は言う。
彼は災厄だと。
だが、真実を知る者はいない。
――ただ一つ確かなことがある。
悪魔を狩り続ける彼の影には、
常に“もう一つの影”が寄り添っている。
それが何者なのか。
それが、いつから彼の中にいるのか。
その答えは、
まだ誰も知らない。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる