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初めての二人の生活
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安藤太樹さんは、ロシアンブルーのかっこいい猫人間だ。灰色の柔らかな髪質の髪に、緑と黄色の二色入った綺麗な瞳。モデルかと見間違う程にイケメンで、背も高くブランド物のスーツがピッタリとよく似合っている。そんな人が、俺みたいな黒猫なんかに求愛をしているなんて、全然信じられなかった。今でも夢なんじゃないかと思えるけれど、LINEの通知とともに夢じゃなかったのかと気が付いた。
『一緒に住む件についてだけど、大丈夫そう?なにか手伝えることはない?』
話が早すぎて驚いた。行こうと思えば、直ぐにでも引越しはできるだろう。家具も荷物も最低限しかない狭いボロアパートは、荷物をまとめることは簡単な事だった。
でも、引越しの費用はどうしよう。日々金欠の俺には、中々に痛い出費だ。
『引越しの費用はどうしましょうか』
『俺が出すから気にしなくていいよ』
何となく予想していた答えだけれど、そう言って貰えて安心した。尻尾が無意識に持ち上がり、フリフリと揺れる。
『ありがとうございます。安藤さんの時間のある日は何時ですか?』
『今週の土曜日だ。その日に引越しをしないか?』
本当に、気が早いなと思う。そんなに早く俺と一緒に暮らしたいのかな?と思ったが、ほっといたら勝手に死にそうで心配しているだけかもしれない。
『分かりました』
それから、細かいことを色々と決めた。
『光希くんが来ることを待ってるからね』
『ありがとうございます』
待ってる、か。そう言って貰える事に、悪い気はしなかった。
土曜日は、バイトをお休みさせてもらわなくちゃな・・・・
土曜日になり、引越しが始まる。ダンボール三箱にまとめた荷物と申し訳程度の家具をトラックに乗せて安藤さんのマンションへと向かった。話が早く進みすぎたせいで一度も家へは伺ったことは無かったが、予想していた1・6倍くらいも広い家だった。間違いなく、一人暮らし用のマンションではない。
「どうして一人なのに、こんなに広い部屋に住んでいるんですか?」
「会社の近くだから、楽かと思ってね。あと、パートナーが出来た時に、一緒に住めるようにと」
「なるほど、そうなんですね」
それなら納得だ。
「願いが叶って良かったよ」
「・・・・・ちがっ!\\まだパートナーじゃないです!!」
少し考えて、俺のことを言っているのだと気が付いた。パートナーなんて、気が早すぎる。
「まだこれからだもんね」
安藤さんは俺のことを逃がすつもりは無いらしく、獲物を狙うような目で見てきた。純血のオーラに、雑種の俺はいつもタジタジだ。
「光希くんは、どうやって寝るつもりなの?ベッドは持ってきてないみたいだったけど、キングサイズのベッドがあるから、一緒に寝てもいいよ?」
「布団を敷いて寝たいと思ってます。それに、まだ付き合ってないのに一緒に寝るなんて、気が早すぎますよ」
「早いに越したことはないからね。高級品だから、マットレスはふかふかだよ?」
「え・・・んりょ、しときます」
ふかふかの布団は気になるが、流石にまだ色々と早すぎる。
「今日、何処か食べに行こうか?」
「え?いや俺お金無いですし」
「奢るよ」
「でも、申し訳ないですし。俺の分は自分で作りますよ。スーパーに買い物に行ってもいいですか?」
「いや、待って」
「ダメですか?」
「ご飯、作れるの?」
「そりゃあまぁ、一人暮らしでしたし」
あまり驚くようなことでは無いと思ったが、安藤さんは驚いていた。
「二人分作ってくれないかな?食材は全部払うから」
「いいんですか?全て払っていただいて。食費も家賃も全部払ってもらうなんて、俺、迷惑じゃないですか?」
流石に心配になってきた。いきなり生活費が二人分になるなんて、安藤さんも大変だろう。
「光希くん、何のために一緒に暮らそうとしたと思ってるの?」
「何のため・・・、口説くため、ですか?」
「それもあるけど、光希くんに負担をかけさせないためだよ。もっと頼ってくれてもいいからね」
そう言って、頭を撫でられた。撫でられたのなんて本当に何年かぶりで、気持ちよくて自分から頭を差し出してじっとしてしまった。
「光希くんは可愛いね」
「え?」
今、俺に可愛いと言ったのか?可愛いわけが無いと、自分では思う。
「可愛いわけないですよ。ないですよ・・・ね?」
「可愛いよ」
「でも俺、黒猫ですよ?」
そう言うと、安藤さんは俺の目をじっと見た。
「光希くんは・・・、今まで、黒猫について嫌なことを言われてきたのか?」
昔のことは、思い出したくもないことばかりだ。
「はい。気持ち悪いって、言われてきました」
「俺はそうは思わない」
「え?」
その言葉にはっとする。
「俺は光希くんが黒猫だろうと関係ないから。だから、気にしなくていい」
「それは、でも・・・」
気にしなくていいと言われて、直ぐに気にしないことなんて出来ない。
「分かった?」
「はい」
取り敢えず、分かりましたと返事をした。
「なら今から買い物に行こうか」
「安藤さんも一緒に行ってくれるんですか?」
「うん、光希くんと出来るだけ一緒に居たいからね」
「そうですか?」
そして、二人で食材を買いに行くことなった。
『一緒に住む件についてだけど、大丈夫そう?なにか手伝えることはない?』
話が早すぎて驚いた。行こうと思えば、直ぐにでも引越しはできるだろう。家具も荷物も最低限しかない狭いボロアパートは、荷物をまとめることは簡単な事だった。
でも、引越しの費用はどうしよう。日々金欠の俺には、中々に痛い出費だ。
『引越しの費用はどうしましょうか』
『俺が出すから気にしなくていいよ』
何となく予想していた答えだけれど、そう言って貰えて安心した。尻尾が無意識に持ち上がり、フリフリと揺れる。
『ありがとうございます。安藤さんの時間のある日は何時ですか?』
『今週の土曜日だ。その日に引越しをしないか?』
本当に、気が早いなと思う。そんなに早く俺と一緒に暮らしたいのかな?と思ったが、ほっといたら勝手に死にそうで心配しているだけかもしれない。
『分かりました』
それから、細かいことを色々と決めた。
『光希くんが来ることを待ってるからね』
『ありがとうございます』
待ってる、か。そう言って貰える事に、悪い気はしなかった。
土曜日は、バイトをお休みさせてもらわなくちゃな・・・・
土曜日になり、引越しが始まる。ダンボール三箱にまとめた荷物と申し訳程度の家具をトラックに乗せて安藤さんのマンションへと向かった。話が早く進みすぎたせいで一度も家へは伺ったことは無かったが、予想していた1・6倍くらいも広い家だった。間違いなく、一人暮らし用のマンションではない。
「どうして一人なのに、こんなに広い部屋に住んでいるんですか?」
「会社の近くだから、楽かと思ってね。あと、パートナーが出来た時に、一緒に住めるようにと」
「なるほど、そうなんですね」
それなら納得だ。
「願いが叶って良かったよ」
「・・・・・ちがっ!\\まだパートナーじゃないです!!」
少し考えて、俺のことを言っているのだと気が付いた。パートナーなんて、気が早すぎる。
「まだこれからだもんね」
安藤さんは俺のことを逃がすつもりは無いらしく、獲物を狙うような目で見てきた。純血のオーラに、雑種の俺はいつもタジタジだ。
「光希くんは、どうやって寝るつもりなの?ベッドは持ってきてないみたいだったけど、キングサイズのベッドがあるから、一緒に寝てもいいよ?」
「布団を敷いて寝たいと思ってます。それに、まだ付き合ってないのに一緒に寝るなんて、気が早すぎますよ」
「早いに越したことはないからね。高級品だから、マットレスはふかふかだよ?」
「え・・・んりょ、しときます」
ふかふかの布団は気になるが、流石にまだ色々と早すぎる。
「今日、何処か食べに行こうか?」
「え?いや俺お金無いですし」
「奢るよ」
「でも、申し訳ないですし。俺の分は自分で作りますよ。スーパーに買い物に行ってもいいですか?」
「いや、待って」
「ダメですか?」
「ご飯、作れるの?」
「そりゃあまぁ、一人暮らしでしたし」
あまり驚くようなことでは無いと思ったが、安藤さんは驚いていた。
「二人分作ってくれないかな?食材は全部払うから」
「いいんですか?全て払っていただいて。食費も家賃も全部払ってもらうなんて、俺、迷惑じゃないですか?」
流石に心配になってきた。いきなり生活費が二人分になるなんて、安藤さんも大変だろう。
「光希くん、何のために一緒に暮らそうとしたと思ってるの?」
「何のため・・・、口説くため、ですか?」
「それもあるけど、光希くんに負担をかけさせないためだよ。もっと頼ってくれてもいいからね」
そう言って、頭を撫でられた。撫でられたのなんて本当に何年かぶりで、気持ちよくて自分から頭を差し出してじっとしてしまった。
「光希くんは可愛いね」
「え?」
今、俺に可愛いと言ったのか?可愛いわけが無いと、自分では思う。
「可愛いわけないですよ。ないですよ・・・ね?」
「可愛いよ」
「でも俺、黒猫ですよ?」
そう言うと、安藤さんは俺の目をじっと見た。
「光希くんは・・・、今まで、黒猫について嫌なことを言われてきたのか?」
昔のことは、思い出したくもないことばかりだ。
「はい。気持ち悪いって、言われてきました」
「俺はそうは思わない」
「え?」
その言葉にはっとする。
「俺は光希くんが黒猫だろうと関係ないから。だから、気にしなくていい」
「それは、でも・・・」
気にしなくていいと言われて、直ぐに気にしないことなんて出来ない。
「分かった?」
「はい」
取り敢えず、分かりましたと返事をした。
「なら今から買い物に行こうか」
「安藤さんも一緒に行ってくれるんですか?」
「うん、光希くんと出来るだけ一緒に居たいからね」
「そうですか?」
そして、二人で食材を買いに行くことなった。
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