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手紙・・・?の行方
しおりを挟むそれはイタズラなのか何かの間違いなのか、私のポケットに入っていた手紙は、行き場がないままバッグの底に沈んでいる。
そして今日も、いつもの電車のいつもの車両に乗る。思い当たろうが何であろうが、何物とも分からない紙ごときに生活のペースを変えられる程、私は暇ではない。
まして、あれがどんな物であってもそのまま放っておけば良いだけの話だ。
・・・何も見ていない、知らなければなんでもないのだから。
あの駅に着いて、あの子が乗ってくる。・・・どうして私が緊張せねばならないんだ。関係ないって、絶対に。
・・・おばさんの自意識過剰なんて痛いどころじゃすまない。メンタル病んでるって思われちゃうよ。
今日は端っこで寄りかかってスマホを眺める私の両横には、人がいるし近くには場所は無い。通販サイトを眺めて、新しいブーツでも物色しよう。なかなか行けない、温泉のリサーチもしたい。
いつもの様に流れる外の風景をみて、スマホの画面を見る。
・・・いつもと同じ、何もない。勘違いだった、あれはイタズラか間違いだ、大丈夫。これを降りたらホームのゴミ箱に捨ててしまおう。
そうして、ほっとした様な、ちょっとハズレたような気がするのは、何かを期待していたの・・・?私が、何を?バカみたい。おばさんが、仕事と自宅の往復生活に、何かときめきを求めたの?それにしても、そのときめきを、高校生に求めるか?・・・絶対に無い無い、有り得ない。
ただ、不思議なあの文章に、ふと心引かれちゃっただけだ。
・・・実際、ちょっとどきどきして秘密を誰かと共有したみたいで楽しかった。
高校生なら、友達に見せてきゃーきゃー言って、もっと楽しめたかな。
ああ、若いって、良いな・・良い・・う~ん・・まあ、今も悪くないけど。
さてさて、今日も仕事をやっつけて、さっさと上がって買い物してストック用のご飯も作って・・・やることはいっぱいある。
駅が近づいて、スマホの画面から視線を上げた。
「・・・っ」
視線が、合った・・・いつもなら直ぐに外れるそれは、じっとそのまま合わされて。私はそっとスマホを閉じてポケットに。ポケットを押さえたまま、視線を上げれば・・・こちらを見る目が合う。少し伏せられた視線は、直ぐに真っ直ぐに此方に向けられた。
がたんと揺れて扉が開き、私はそのまま電車を降りた。だって、ここで降りないといけないから。階段を降りる、次はバスに乗らないと。
・・・あれは、君なの?
その視線は何か言いたかったの?間違えて入れたから返して?間違えて入れたんだ、誰にも言うなよ、とか?
全く関係なく、こっち見るなよみたいな視線?
静かに視線を合わせる彼からは、何も察せられる事は無く、私はバッグの底に沈んだそれをゴミ箱へ移す事が出来なくなった。
私の疑問とすっきりした筈の思考の一欠片と、それはそのままバッグの中に仕舞われたままになった。
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