146 / 180
裏通りの薬剤師
連鎖
しおりを挟む
顔を上げたハルさんに代わり、私も真下から覗き込みました。真っ赤に血濡れていた大きな子宮は、それを吸い取った砂糖のおかげで桃色を取り戻しています。垂れ下がる子宮を下から覗くと、ドクっと、まるで心音に合わせるかの様に血が噴き出していました。
パックリと割れた指の長さ程の傷。その傷から流れ落ちる血を見つめ、ハルさんもモモさんも難しい顔で逡巡をしています。その姿からこの出血が簡単では無いのだと伝わって来ました。
それでも、子宮の大きさは浮腫みが取れただけで、目視でも分かる程小さくなっています。とは言え、血をポタポタと落とすこの子宮を単純に押し込む分けには行かないでしょう。
「ハルさん、取り敢えず傷を縫いましょう」
「そうね。エレナ、針と糸を準備して」
「はい」
針と糸を手に、小さなハルさんが子宮の下へと潜り込み、素早い手つきで縫い合わせて行きます。その間も出血は止まりません。ハルさんの表情は優れず、汗を拭う額はべっとりと血で汚れて行きました。
「ハルさん、どう?」
「良くない。外側だけじゃなくて、中も裂けている」
「代わる?」
「大丈夫。モモ、エレナ、両側から傷が塞がる様に押さえて貰える」
「分かりました」
私とモモさんで、子宮を両脇から押さえて行きます。
ヌルっとした手触りに思う様に力が入らなくて、ひとりバタバタとまごついてしまいます。
ハルさんはまず内側の裂傷を、素早く縫い合わせて行きました。内側が縫い終わると、次は外側です。ハルさんの手が止まる事はありません、傷口は見る見る閉じて行きました。
「エレナ、ゴーグルを拭いて」
「はい」
ポタポタと垂れる血が、視界を塞ぎます。それでも止まる事の無いハルさんの施術。
クスさん達も固唾を飲んで見守っていました。
空気は否が応にも緊張をして行きます。鎮静剤が効いて大人しくしていますが、またいつ暴れ出してもおかしくは無いのです。それを承知のうえで、危険な施術を自ら行っているハルさん。下に潜り込んで施術している所を踏み潰されでもしたら、大怪我だけでは済まないでしょう。
通常であれば、麻酔を打って眠らせてから行うべき施術です。でも、体力の落ちているこの仔に、麻酔は危険と判断しての素早い行動。時間が掛かれば掛かる程、この仔の状態は危険に晒されてしまうのです。
だけど、時間は簡単に過ぎて行きます。
ジリジリした緊張に、現場は押し潰されそうです。そんな中、ハルさんも、モモさんも、冷静でした。
モモさんは母熊の表情を見つめ少しだけ逡巡の素振りを見せますが、すぐに顔を上げます。
「エレナ、鎮静剤を0.5単位だけ入れよう。ハルさんの援護をするわよ」
「分かりました。すぐに準備します」
小さな注射器に0.5単位。
モモさんは砂時計を確認して、私が手渡すと同時にブスリと背中に突き刺しました。
このまま暴れないでいてねと祈りながら、私はハルさんのゴーグルをまた拭いて行きます。
「ありがとう」
ハルさんの冷静な声色が、現場に落ち着きを与えて行きます。張り詰めた空気は相変わらずですが、ハルさんとモモさんの冷静な姿にパニックになる事はありませんでした。
「よし! 終わったよ! 押し込むから手伝って。行くよ、せーの!」
ハルさんは起き上がると同時に、垂れ下がった子宮を持ち上げます。さすが、ドワーフの血を引く力、軽々と持ち上げて見せました。私達もそれに倣って持ち上げてみますが⋯⋯。
重い!
垂れ下がった子宮がこんなに重いなんて。私もモモさんも、すぐに額から汗が噴き出ます。
「もう一回! 行くよ、せーの!」
ハルさんの掛け声に合わせ押し込みます。ハルさんが持ち上げて、モモさんと私で押し込んで行くのですが、なかなか思うように入ってはくれません。
ブヨブヨと柔らかい感触に、ヌメっとした手触り。すぐにズルリと腕から零れ落ちてしまい、思うように入ってはくれません。
それでも何度となく押し込んで行くと、子宮が体内へズズっと少しずつ戻り始めました。
腕がプルプルと震えて来ます。歯を食いしばってモモさんと力を合わせて行きます。
「いいよ! このまま! 頑張って!」
入れ⋯⋯入って。
垂れ下がっていた子宮が見る見る小さくなって行きます。
もうちょい⋯⋯。
腕の力はほとんど残っていません。それでも、最後の一滴まで力を振り絞ります。
「「「せーの!」」」
みんなで声を合わせます。ズズっと子宮が体内に戻って行きます。
もう少し。
「よし! 入った! みんな頑張ったね」
ハルさんが笑顔を見せ、上手く行ったのだとホッと胸を撫で下ろしました。
あんなに大きな物がお腹に納まっているなんて、生物の体というのは全く持って不思議です。
モモさんが、膣部から腕を突っ込んでちゃんと入っているか、捻じれていないか確認を取ります。腕がまるまる飲み込まれ、腕全体を使って確認していました。
「エレナ、おいで。あなたも確認するの」
「わ、私ですか? 分からないですよ」
「今、正しい位置に納まっている。この感触を覚えなさい」
「は、はい⋯⋯」
モモさんに言われて、恐る恐る腕を差し込みます。
「大丈夫だから、グッと行きなさい」
「は、はい」
ヌルっと飲み込まれる腕にビクビクしながら、触診の感触を頭に刻んで行きます。
「管が腕に均等に当たっているでしょう。捻じれている場所があると、キツイ所と緩い所があったり、管の捻じれが酷いと、奥まで手が入らなかったりするの。覚えておいて」
「はい」
そうか。
現場で勉強をさせる為にハルさんは私を連れて来てくれたのだ。
百聞は一見に如かず。実地での体験に勝るものはありません。
とは言え、終わった安堵と使い切った体力から私はへたり込んでしまいました。知識と一緒に体力も付けないとですね。元気なハルさんとモモさんの姿を見るにつけ、トホホな気持ちになってしまうのです。
「クス。取り敢えずは大丈夫だと思うけど、膣部から出血が止まらないと繁殖は諦めないとかもね。ザックリとかなりいっていたから、楽観的な事は言えないわ」
「まあ、それは仕方ない。コイツが助かっただけでも御の字だ。ハル、ありがとう。あんた達も助かったよ」
クスさんと助手さんに頭を深々と下げられて、どうしていいのかドギマギしちゃいます。ハルさんとモモさんは軽く頷いて見せるだけですが、私は深々とお辞儀を返していました。
『クス! こっちヤバイ! 体温が急激に下がって、息が弱い!』
伝声管から緊迫を伝える女性の声。その切迫した声色に私達も一瞬固まってしまいます。
「もしかして、子供?」
「⋯⋯ぁぁ⋯⋯」
ハルさんが茫然と佇むクスさんを一瞥。安堵の表情から一転また険しい表情を見せます。
「モモは引き続きこの仔の様子を診てあげて。エレナ、火山石の織布と盥、点滴と薬液の準備。それと、あなた、お湯をたくさん沸かして。さぁ! 急いで、急いで! 時間は掛けてられないよ! クス、子供はどこ?」
「向かいの小屋だ」
「エレナ、急ぐよ!」
「はい!」
ハルさんの掛け声に一斉に動き始めます。疲れていた体の事など、吹き飛んでしまう程の衝撃。私はハルさんの後を追い、無我夢中にまた走り始めました。
パックリと割れた指の長さ程の傷。その傷から流れ落ちる血を見つめ、ハルさんもモモさんも難しい顔で逡巡をしています。その姿からこの出血が簡単では無いのだと伝わって来ました。
それでも、子宮の大きさは浮腫みが取れただけで、目視でも分かる程小さくなっています。とは言え、血をポタポタと落とすこの子宮を単純に押し込む分けには行かないでしょう。
「ハルさん、取り敢えず傷を縫いましょう」
「そうね。エレナ、針と糸を準備して」
「はい」
針と糸を手に、小さなハルさんが子宮の下へと潜り込み、素早い手つきで縫い合わせて行きます。その間も出血は止まりません。ハルさんの表情は優れず、汗を拭う額はべっとりと血で汚れて行きました。
「ハルさん、どう?」
「良くない。外側だけじゃなくて、中も裂けている」
「代わる?」
「大丈夫。モモ、エレナ、両側から傷が塞がる様に押さえて貰える」
「分かりました」
私とモモさんで、子宮を両脇から押さえて行きます。
ヌルっとした手触りに思う様に力が入らなくて、ひとりバタバタとまごついてしまいます。
ハルさんはまず内側の裂傷を、素早く縫い合わせて行きました。内側が縫い終わると、次は外側です。ハルさんの手が止まる事はありません、傷口は見る見る閉じて行きました。
「エレナ、ゴーグルを拭いて」
「はい」
ポタポタと垂れる血が、視界を塞ぎます。それでも止まる事の無いハルさんの施術。
クスさん達も固唾を飲んで見守っていました。
空気は否が応にも緊張をして行きます。鎮静剤が効いて大人しくしていますが、またいつ暴れ出してもおかしくは無いのです。それを承知のうえで、危険な施術を自ら行っているハルさん。下に潜り込んで施術している所を踏み潰されでもしたら、大怪我だけでは済まないでしょう。
通常であれば、麻酔を打って眠らせてから行うべき施術です。でも、体力の落ちているこの仔に、麻酔は危険と判断しての素早い行動。時間が掛かれば掛かる程、この仔の状態は危険に晒されてしまうのです。
だけど、時間は簡単に過ぎて行きます。
ジリジリした緊張に、現場は押し潰されそうです。そんな中、ハルさんも、モモさんも、冷静でした。
モモさんは母熊の表情を見つめ少しだけ逡巡の素振りを見せますが、すぐに顔を上げます。
「エレナ、鎮静剤を0.5単位だけ入れよう。ハルさんの援護をするわよ」
「分かりました。すぐに準備します」
小さな注射器に0.5単位。
モモさんは砂時計を確認して、私が手渡すと同時にブスリと背中に突き刺しました。
このまま暴れないでいてねと祈りながら、私はハルさんのゴーグルをまた拭いて行きます。
「ありがとう」
ハルさんの冷静な声色が、現場に落ち着きを与えて行きます。張り詰めた空気は相変わらずですが、ハルさんとモモさんの冷静な姿にパニックになる事はありませんでした。
「よし! 終わったよ! 押し込むから手伝って。行くよ、せーの!」
ハルさんは起き上がると同時に、垂れ下がった子宮を持ち上げます。さすが、ドワーフの血を引く力、軽々と持ち上げて見せました。私達もそれに倣って持ち上げてみますが⋯⋯。
重い!
垂れ下がった子宮がこんなに重いなんて。私もモモさんも、すぐに額から汗が噴き出ます。
「もう一回! 行くよ、せーの!」
ハルさんの掛け声に合わせ押し込みます。ハルさんが持ち上げて、モモさんと私で押し込んで行くのですが、なかなか思うように入ってはくれません。
ブヨブヨと柔らかい感触に、ヌメっとした手触り。すぐにズルリと腕から零れ落ちてしまい、思うように入ってはくれません。
それでも何度となく押し込んで行くと、子宮が体内へズズっと少しずつ戻り始めました。
腕がプルプルと震えて来ます。歯を食いしばってモモさんと力を合わせて行きます。
「いいよ! このまま! 頑張って!」
入れ⋯⋯入って。
垂れ下がっていた子宮が見る見る小さくなって行きます。
もうちょい⋯⋯。
腕の力はほとんど残っていません。それでも、最後の一滴まで力を振り絞ります。
「「「せーの!」」」
みんなで声を合わせます。ズズっと子宮が体内に戻って行きます。
もう少し。
「よし! 入った! みんな頑張ったね」
ハルさんが笑顔を見せ、上手く行ったのだとホッと胸を撫で下ろしました。
あんなに大きな物がお腹に納まっているなんて、生物の体というのは全く持って不思議です。
モモさんが、膣部から腕を突っ込んでちゃんと入っているか、捻じれていないか確認を取ります。腕がまるまる飲み込まれ、腕全体を使って確認していました。
「エレナ、おいで。あなたも確認するの」
「わ、私ですか? 分からないですよ」
「今、正しい位置に納まっている。この感触を覚えなさい」
「は、はい⋯⋯」
モモさんに言われて、恐る恐る腕を差し込みます。
「大丈夫だから、グッと行きなさい」
「は、はい」
ヌルっと飲み込まれる腕にビクビクしながら、触診の感触を頭に刻んで行きます。
「管が腕に均等に当たっているでしょう。捻じれている場所があると、キツイ所と緩い所があったり、管の捻じれが酷いと、奥まで手が入らなかったりするの。覚えておいて」
「はい」
そうか。
現場で勉強をさせる為にハルさんは私を連れて来てくれたのだ。
百聞は一見に如かず。実地での体験に勝るものはありません。
とは言え、終わった安堵と使い切った体力から私はへたり込んでしまいました。知識と一緒に体力も付けないとですね。元気なハルさんとモモさんの姿を見るにつけ、トホホな気持ちになってしまうのです。
「クス。取り敢えずは大丈夫だと思うけど、膣部から出血が止まらないと繁殖は諦めないとかもね。ザックリとかなりいっていたから、楽観的な事は言えないわ」
「まあ、それは仕方ない。コイツが助かっただけでも御の字だ。ハル、ありがとう。あんた達も助かったよ」
クスさんと助手さんに頭を深々と下げられて、どうしていいのかドギマギしちゃいます。ハルさんとモモさんは軽く頷いて見せるだけですが、私は深々とお辞儀を返していました。
『クス! こっちヤバイ! 体温が急激に下がって、息が弱い!』
伝声管から緊迫を伝える女性の声。その切迫した声色に私達も一瞬固まってしまいます。
「もしかして、子供?」
「⋯⋯ぁぁ⋯⋯」
ハルさんが茫然と佇むクスさんを一瞥。安堵の表情から一転また険しい表情を見せます。
「モモは引き続きこの仔の様子を診てあげて。エレナ、火山石の織布と盥、点滴と薬液の準備。それと、あなた、お湯をたくさん沸かして。さぁ! 急いで、急いで! 時間は掛けてられないよ! クス、子供はどこ?」
「向かいの小屋だ」
「エレナ、急ぐよ!」
「はい!」
ハルさんの掛け声に一斉に動き始めます。疲れていた体の事など、吹き飛んでしまう程の衝撃。私はハルさんの後を追い、無我夢中にまた走り始めました。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる