恋のヤンキー闇日記

あらき奏多

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受難の前兆(side美夜飛)

05

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 俺の視界は間近にある白い天井と、ただならぬ雰囲気を醸しだす兼嗣しか見えない。

 何その、笑ってるみたいな、何かに耐えてるみたいな、表情。
 初めて見た。どういう感情の顔だよ。

 思い当たる節もなくて、不可解で。
 この閉鎖的な空間にふたりでいるのが、急に居心地悪くなってくる。

 足首を掴んだ手は力強くて、火照ったように熱い。

 ふいに視線がかち合う。兼嗣に見下されている。
 そう、気づいた瞬間に、触れたそこからぶわりと熱が広がった。

「……っ、」

 さらりとした温かな手のひらが、足首をつたって脛から膝に置かれる。

 兼嗣の挙動もだが、自分のこの反応も意味が分からなかった。
 やつの顔が、上体が。こっちに近付いてきて、何故かとてつもなく、焦る。

 身体にのしかかる兼嗣の重みと体温を感じて、顔の横に片方の手をついてくる。ギシッと耳許で音がした。 

 いやいやいや……っ、待って待って、待て。

「……っや、なに……兼嗣……っ、!」

 目の前が兼嗣の影で暗くなる。
 どこを見ていいのかわからず、思わずぎゅっと目をつむって、両腕で顔の前をガードした。

 しばらくもしないうちに、目を閉じてもわかるくらいに視界がふっと明るくなる。

「……どうしたの、みーちゃん」

「……へ?」

 恐るおそる目を開けると、薄いエロ本を手にした兼嗣が、キョトンと俺を見下ろして首を傾げていた。

 その顔はもう恐くなくて、普通にいつもどおりの兼嗣だと、心の底からホッとする。

「そんな全力で拒否らなくても、別に叩いたりしないよ?」

「……あ、いや、そういうわけじゃ……」

……あっやべ、じゃあどういうわけだよ、ってなるわ。

「お前、ふいんき変だったし、恐いとかじゃねーけど、怒らせたかと思って」

「ふぅん……。みーちゃんも知ってると思うけど、俺タレ目すぎて、眠そうなスタンダードプードルって言われてるくらいだよ。無害だって。でもこれは没収ね」

「……」

「……そんな顔するんだね、意外」

「……あ?」

「ううん。何でもない。素直だなと思っただけ」

 にっこりと言って、兼嗣はあっけなく俺から離れて、ベッドをおりていった。

……なんだ、今の台詞。空気。
 そんで、なんで俺はこんなに意識してんだよ……。


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