恋のヤンキー闇日記

あらき奏多

文字の大きさ
72 / 107
犬も食わない少し前のお話(side花岡)

05

しおりを挟む



 合意もなく自分を組み敷いた相手を逆に追いまわすなんて、期待や勘違いをされても困る。

 兼嗣はそんなつもりなかったんだろうが、あいつが我を忘れて肩を掴んできたとき、本当に痛かったんだ。

 いつもは穏やかでそんなイメージがないからこそ、力強さに圧倒されたし、本能的に負けたと思った。

 だからあんな、いくら元ヤンでも俺よりさらに小さい美夜飛が本気で組み伏せられたら、きっと敵うはずがない。

 俺なら恐くて、抵抗さえできないかもしれない。
 もう尻穴くらい差し出してその場をやり過ごし、今後一切関わらないようにする。

 でも兼嗣がそういう意味で興味があるのは美夜飛だけだ。

 それが分かるから、俺は今も変わらず、兼嗣と友達のままでいられる。

「……なあ、こわくねえの」

「あ? なにが」

「兼嗣のこと」

「なんで」

「なんでって……お前なあ」
  
「……言いたいことは分かるよ。俺も最初は、いつも安眠してた抱き枕に、突然育ちすぎたズッキーニ生えてきたと思ったし」

「抱き枕に生える育ちすぎたズッキーニ……。ズッキーニが育ちすぎてるのか……それは……ほんとに恐ろしいな」

「想像絶するぞ、まじで。人の腕かと」

「ひえ……」

「そうなるよな? 俺も死ぬって思ったけど、まあなんとか生きてたわ」

 おっかない。考えただけで背筋に冷たいものが走る。

 血の気が引いて戦慄する俺に、美夜飛はいっそ開き直ったみたいに明るく笑ってみせた。

「……俺さ、前は結構、今よりもっと好き勝手生きてて」

「うん。らしいね」

「そんとき性格悪すぎてさ、わがままだっただろうし、いっときほんと、周りのやつらにハブられたことあんの」

「……まじで」

「まじで。でも兼嗣だけは……、そばにいたんだ」

──黙ったまま、忠犬みてえに、そこにずっといた。
 それに、長年使ってた抱き枕だから、愛着湧いちゃって。もう替えもきかねえしなあ。

 そう言いながら、美夜飛がいたずらに笑う。

 どこか物憂げな、諦めの向こう側に行ってしまったような表情だと思った。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...