恋のヤンキー闇日記

あらき奏多

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犬も食わない少し前のお話(side花岡)

09

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 吐き捨てるように言った美夜飛の煽りは無自覚というより、鋭い真摯な眼差しからして、真っ向からぶつかるつもりのようだ。

 兼嗣は怒ると力に任せてくるみたいだから、美夜飛に勝ち目があるとは思えなくてヒヤヒヤする。

「裕太……、悪いけど、外に出ててほしい」

「へっ、え……っ?!」

「花岡、こいつの言うこと聞かなくていいぞ。俺が出てくから」

 えっ、ええー……!
 とてつもなく俺を巻き込んで、間接的な喧嘩をするふたりにオドオド狼狽するしかない。

 話にならないと諦めたか苛立った美夜飛がチッと舌打ちし、兼嗣から距離をとって出入り口に向かう。

 その後ろ手を兼嗣がすぐに強く掴み、美夜飛を自分の腕の中に閉じこめ、そして茫然とする俺の背中を優しく誘導するように廊下へ出すと、

「……ごめんね、裕太」

 申し訳なさそうに下がった眉と、垂れた目を細めた柔らかい声色で言われ、パタン、と目の前で静かに閉まる。

 そして、ガチャリとドアの鍵をかけられた。



 ちっ、違うだろ、それ……。
 その台詞、その表情、俺じゃなくて、全部美夜飛に見えばいいんじゃん……。

「──ふざけんなっ、離せ……! おいっ、やめ、いやだ……っ、頭おかしいだろお前……!」

 美夜飛が暴れているのか、室内から物がバサバサ落ちる音と、ガタガタと家具が動くような音もする。



「──……てめぇ……っ、この変態クソオタク! またかよっ、結局こうなんのかよ! 力尽くでっ、身体ばっか持っていって、楽しいかよ……っ!」

 廊下には籠もったような美夜飛の怒鳴り声が聞こえて、俺はどうするべきか迷った。

 もう放っといたほうがいいのか?
 人の恋路にここまで首を突っ込むのはアリなのか?

 普通はナシだろ。無粋だ。野暮すぎる。

 でもこの一週間、たまに素直に見せた美夜飛の寂しげな顔を思い出すと、この状況はあまりに不憫で、可哀想で。無視、できなかった。


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