88 / 509
第三章
第八十八話 ラナリアから見た襲撃者
しおりを挟む
アクロシア王城のテラス、ラナリアは城下町を見渡せる場所ですっかり冷めてしまった紅茶を前にして、珍しくぼうっと景色を眺めていた。普段は忙しいラナリアにポッカリと空いた暇な時間を、景色を見ながら過ごしている。
ラナリアのレベルを知った、というよりも恐れた者たちの反応は、友好的に近寄ってくる者、悪魔と契約したと噂を流す者など様々だった。彼らの恐れが伝わってくるようで楽しかったので、自分から手を打つのが無粋とさえ思える。
最近は弟であり王位継承順位の高いウイリアムが政治の場に顔を出すようになり、ラナリアと懇意になろうと近づいてくる貴族たちの数が明らかに減った。代わりのように面倒な話も舞い込んでいるが、それはすぐに下火になるはずなので無視している。
今までであれば、こうした空いた時間でも貴族たちとの交流であったり、王都への顔出し、王国騎士たちへの慰問など可能な限りの予定を詰め込んでいた。そのどれもが可及的でなければ、レベル上げに勤しんでいたのだ。
しかし、今はそれらすべてがどうでも良くなる。何の価値もないとは言い過ぎであっても、美しく輝く宝石の前では、河原で拾った形の良い石の価値が低いと言うべきだろう。
ラナリアはフォルティシモから貰った魔法道具を宝物のように大切に取り出した。この長さ十五センチメートルにも満たない小さな板は、フォルティシモやフォルティシモの奴隷でありラナリアの友人でもあるキュウとの会話と手紙を、どれほど距離が離れていても可能にしてくれる破格の魔法道具である。
これを使えば、すぐにフォルティシモと会話をすることができる。ラナリアとしてはフォルティシモに用事もなく連絡をして、彼の声を聞きたいというのが本音だ。しかし、それを毎日すれば彼の機嫌を損ねてしまうのは確実で、そうであるから彼の方から連絡が欲しいと思って魔法道具を眺めてしまっていた。
「ラナリア様、御紅茶をお取り替え致します」
「ありがとう」
侍女が護衛のシャルロットに見つめられながらやって来る。
「ご機嫌がよろしいようですね」
「ええ、少し」
侍女は自分の入れた紅茶を褒めて貰えたのだと思ったのかも知れない。ラナリアは否定はせずに紅茶を楽しむ。
昨日の夕方頃に魔王を発見したという報告が入った。急いでフォルティシモへ連絡したら、なんと魔王は「アルさん」だった。ラナリアはすぐにシャルロットを向かわせ、魔王アルティマ・ワンの人となりを確かめさせた。
なんとも面白そうな性格で、早く会ってみたい。
そんなことを考えていると女性騎士がテラスへやって来て、シャルロットに何かを耳打ちする。シャルロットが頷くことを確認し、女性騎士は戻っていった。
「奴隷制度を推していた貴族は、騎士団の重鎮だったということかしら?」
「はい。ベッヘム閣下を始めとした派閥が十年前から推し進めていたようです」
「十年前に奴隷制度の推進? それはおかしい話ね」
「そうでしょうか? 十年前であれば大氾濫の時期的にも符合しますので、国力回復のためとして、タイミングは合っているかと思われますが」
ラナリアはただ曖昧な笑みを見せる。
「彼らへの接触は最低限の人員で、できるだけこちらは隠して。特にウイリアムは絶対に近づけさせないように手配を。解析が正常でも油断はしないよう注意すること。仮にウイリアムがわずかでも接触してしまった場合はピアノ様へ連絡をして。それが無理なら止むを得ないけれどフォルティシモ様をお呼びするように。これは王命でも撤回不可なものよ」
「委細、承知しました」
「………そういえば、十年くらい前から、ベッヘムの派閥に異例の速度で出世した新興貴族がいなかった?」
「はい。ベッヘム閣下の強い推薦を受けて爵位を受けられたヒヌマ子爵です」
「その貴族と周辺には細心の注意を払っておいて。世襲制の我が国で早い出世をしているだけでもおかしいけれど、まるで不和を起こしていない。私は、そのことを今からフォルティシモ様へ連絡するから」
最後の点が目的だったかのように、少し浮ついた気分で魔法道具を起動させた。
『その新興貴族が俺の敵の可能性があるのか。俺が調べるから、ラナリアは俺がそいつを直接見られる状況を作ってくれ。一方的が理想だが、無理なら対面でも構わない。ただ、その場で倒す可能性もある』
「理想を達成するための条件はいかほどでしょうか。それは例えば、机の下に隠れるという状況でも構いませんか?」
『そのくらいなら良いが、その後どうすんだよ。這い出て戦うのは嫌だぞ』
「いえ、フォルティシモ様の優先順位のお話です。フォルティシモ様がどれほどのお気持ちでそれを達成したいのかによって、私もどれほど無理を通せば良いのか考えなければと思っております」
『………今後、俺がどうしてもと言わない限りは、失敗しても未来に渡って影響が少ない範囲だ。お前、分かって言ってないか?』
「何も言わずとも通じるのも心地の良いものではありますが、フォルティシモ様のお言葉を直接賜りたいという気持ちを抑えることができないのです」
お互いに表情の分からない会話というのは、なかなかにして楽しい。想い慕うフォルティシモが、どのような顔をしているのか想像するだけでラナリアの顔は緩んでしまう。
『まあいい。そのヒヌマって奴、どんな奴なんだ?』
「私まで情報が上がってこないようにされているようです。それも含めて、ご協力頂いてもよろしいでしょうか?」
少しの沈黙が怖い。沈黙が怖いなんて、まるで恋に身を焦がす少女のようだ。それは“まるで”という感想が間違っているだけだと気付いてしまい、我慢できなくなって思わず口許を抑える。ラナリアは間違いなく恋に身を焦がしている少女だ。
『先に説明をしてくれるなら、内容次第でやってやる』
この笑顔を見せられないことに、遠距離の会話を可能にする破格の魔法道具へ文句が言いたい。先ほどまで面白がっていたのに勝手な話だ。
もっと会話を引き延ばしたいと思って、頭の中の引き出しを漁る。しかし、その行為は強制的に中断させられた。
眼下に広がる街並みの一点から、遠くからでもはっきりと分かる鮮やかな紅い魔力が立ち上ったのだ。夕日のように美しいその紅は、激流のように強くただ事でないことを教えてくれる。
遠すぎてハッキリとは分からないが、周囲の建造物にも被害が出ていることだろう。人が居れば、死人が出ているかも知れない。何者かが何らかの理由で、人々が生活を営む場所で戦闘を始めたのだ。
『キュウから着信があるな』
「フォルティシモ様、巨大な紅き魔力を放出される者にお心当たりはありませんか?」
『紅いエフェクトならアルかもな。キュウの着信はそれか』
次第に火の手が上がり始めた。あのエルディンの襲撃から日にちが経っていない上、エルフを受け入れた途端これでは、愉快な状況とは言い辛い。
『状況が分からない。会議モードにする』
『ご主人様っ』
『おいフォルティシモ、突然コールしやがって、どうした? 何かあったのか?』
『主殿! 今連絡しようとしていたところだったのじゃ! 獲物は二匹!』
キュウ、ピアノと続いて聞いたことのない声がラナリアの持つ魔法道具から聞こえて来た。状況から言って魔王アルティマ・ワン。第一印象は大切にしたかったが、緊急なので仕方ない。
『キュウ、何があった?』
『アルさんが、マウロさんと、もう一人と戦っていますっ』
『分かった。アル、敵戦力』
『マウロ、六〇〇〇【アサシン】。ミヤマシジミ、五〇〇〇【守護者】』
『戦況』
『マウロ何故か前衛でなかなかの装備、ミヤマシジミうざいのじゃ』
『一覚で五〇〇〇か。念のため引いたほうがいいんじゃないか? 装備や従者次第じゃ分からないぞ』
『おおっ、ピアノ殿か? お久しぶりなのじゃ! しかし妾が一覚程度に負けるはずがないのじゃ!』
「ラナリアと申します。アルさん、市街戦は避けられませんか? 事後処理もありますが、増援の可能性があります」
『誰なのじゃ!?』
『ラナリアだ。昨日話し―――ラナリアもキュウと同じお前の後輩だ』
フォルティシモはラナリアのことをアルティマへ伝え忘れていたらしい。そういう事前の言葉は、人間関係にとても重要な要素なので、できれば忘れないで欲しかったけれど、フォルティシモらしくて笑みが零れてしまう。惚れた弱みというやつだ。
『妾はアルティマ・ワン。よろしくなのじゃ、ラナリア』
「よろしくお願いいたします」
魔王アルティマ・ワンは、現在レベル六〇〇〇と五〇〇〇の敵と戦っているはずで、テラスから見える光景もなかなかの被害が出始めている。それなのに彼女は助けを求めることなく、悠々と会話をしている。ラナリアに自己紹介する余裕付きで。
つまりは危機的状況なのは魔王アルティマ・ワンではなく、街であり一般市民であり、来たばかりのエルフたちであり、それを率いていたピアノであり、受け入れてしまったラナリアだ。
四の五言っていられない。
「フォルティシモ様。アルさんへ戦場を市街へ移すよう申しつけて頂けませんか?」
『アル、近くの、ブルスラの森へ引っ張れ。あと、最低でも片方は絶対に逃がすな』
話が早い。事件の犯人としての責任を擦り付ける相手を残してくれる。
『承知したのじゃ。主殿が絶対と仰るのであれば、どのような無理難題であろうと答えて見せよう!』
『ピアノ、出れないか?』
『すぐ向かう』
『あれーっ!? ま、待つのじゃ! この程度、ピアノ殿の助力は不要なのじゃ!』
『助力とかそういう問題じゃない。ピアノが居ることに意味がある、はずだ』
「ピアノ様、お願いいたします」
『弱い者虐めは趣味じゃないが、仕方ないな』
レベル六〇〇〇と五〇〇〇の敵に対しての助勢を、“弱い者虐め”と断ずるピアノの実力を上方修正しつつ、ラナリアは横に控えるシャルロットを確認した。
「アルさんが行った被害状況の確認と救助を最優先に。戦場を変えるように依頼したから、落ち着いたらすぐに騎士を派遣、手厚い補償で誤魔化して」
「承知しました」
ラナリアのレベルを知った、というよりも恐れた者たちの反応は、友好的に近寄ってくる者、悪魔と契約したと噂を流す者など様々だった。彼らの恐れが伝わってくるようで楽しかったので、自分から手を打つのが無粋とさえ思える。
最近は弟であり王位継承順位の高いウイリアムが政治の場に顔を出すようになり、ラナリアと懇意になろうと近づいてくる貴族たちの数が明らかに減った。代わりのように面倒な話も舞い込んでいるが、それはすぐに下火になるはずなので無視している。
今までであれば、こうした空いた時間でも貴族たちとの交流であったり、王都への顔出し、王国騎士たちへの慰問など可能な限りの予定を詰め込んでいた。そのどれもが可及的でなければ、レベル上げに勤しんでいたのだ。
しかし、今はそれらすべてがどうでも良くなる。何の価値もないとは言い過ぎであっても、美しく輝く宝石の前では、河原で拾った形の良い石の価値が低いと言うべきだろう。
ラナリアはフォルティシモから貰った魔法道具を宝物のように大切に取り出した。この長さ十五センチメートルにも満たない小さな板は、フォルティシモやフォルティシモの奴隷でありラナリアの友人でもあるキュウとの会話と手紙を、どれほど距離が離れていても可能にしてくれる破格の魔法道具である。
これを使えば、すぐにフォルティシモと会話をすることができる。ラナリアとしてはフォルティシモに用事もなく連絡をして、彼の声を聞きたいというのが本音だ。しかし、それを毎日すれば彼の機嫌を損ねてしまうのは確実で、そうであるから彼の方から連絡が欲しいと思って魔法道具を眺めてしまっていた。
「ラナリア様、御紅茶をお取り替え致します」
「ありがとう」
侍女が護衛のシャルロットに見つめられながらやって来る。
「ご機嫌がよろしいようですね」
「ええ、少し」
侍女は自分の入れた紅茶を褒めて貰えたのだと思ったのかも知れない。ラナリアは否定はせずに紅茶を楽しむ。
昨日の夕方頃に魔王を発見したという報告が入った。急いでフォルティシモへ連絡したら、なんと魔王は「アルさん」だった。ラナリアはすぐにシャルロットを向かわせ、魔王アルティマ・ワンの人となりを確かめさせた。
なんとも面白そうな性格で、早く会ってみたい。
そんなことを考えていると女性騎士がテラスへやって来て、シャルロットに何かを耳打ちする。シャルロットが頷くことを確認し、女性騎士は戻っていった。
「奴隷制度を推していた貴族は、騎士団の重鎮だったということかしら?」
「はい。ベッヘム閣下を始めとした派閥が十年前から推し進めていたようです」
「十年前に奴隷制度の推進? それはおかしい話ね」
「そうでしょうか? 十年前であれば大氾濫の時期的にも符合しますので、国力回復のためとして、タイミングは合っているかと思われますが」
ラナリアはただ曖昧な笑みを見せる。
「彼らへの接触は最低限の人員で、できるだけこちらは隠して。特にウイリアムは絶対に近づけさせないように手配を。解析が正常でも油断はしないよう注意すること。仮にウイリアムがわずかでも接触してしまった場合はピアノ様へ連絡をして。それが無理なら止むを得ないけれどフォルティシモ様をお呼びするように。これは王命でも撤回不可なものよ」
「委細、承知しました」
「………そういえば、十年くらい前から、ベッヘムの派閥に異例の速度で出世した新興貴族がいなかった?」
「はい。ベッヘム閣下の強い推薦を受けて爵位を受けられたヒヌマ子爵です」
「その貴族と周辺には細心の注意を払っておいて。世襲制の我が国で早い出世をしているだけでもおかしいけれど、まるで不和を起こしていない。私は、そのことを今からフォルティシモ様へ連絡するから」
最後の点が目的だったかのように、少し浮ついた気分で魔法道具を起動させた。
『その新興貴族が俺の敵の可能性があるのか。俺が調べるから、ラナリアは俺がそいつを直接見られる状況を作ってくれ。一方的が理想だが、無理なら対面でも構わない。ただ、その場で倒す可能性もある』
「理想を達成するための条件はいかほどでしょうか。それは例えば、机の下に隠れるという状況でも構いませんか?」
『そのくらいなら良いが、その後どうすんだよ。這い出て戦うのは嫌だぞ』
「いえ、フォルティシモ様の優先順位のお話です。フォルティシモ様がどれほどのお気持ちでそれを達成したいのかによって、私もどれほど無理を通せば良いのか考えなければと思っております」
『………今後、俺がどうしてもと言わない限りは、失敗しても未来に渡って影響が少ない範囲だ。お前、分かって言ってないか?』
「何も言わずとも通じるのも心地の良いものではありますが、フォルティシモ様のお言葉を直接賜りたいという気持ちを抑えることができないのです」
お互いに表情の分からない会話というのは、なかなかにして楽しい。想い慕うフォルティシモが、どのような顔をしているのか想像するだけでラナリアの顔は緩んでしまう。
『まあいい。そのヒヌマって奴、どんな奴なんだ?』
「私まで情報が上がってこないようにされているようです。それも含めて、ご協力頂いてもよろしいでしょうか?」
少しの沈黙が怖い。沈黙が怖いなんて、まるで恋に身を焦がす少女のようだ。それは“まるで”という感想が間違っているだけだと気付いてしまい、我慢できなくなって思わず口許を抑える。ラナリアは間違いなく恋に身を焦がしている少女だ。
『先に説明をしてくれるなら、内容次第でやってやる』
この笑顔を見せられないことに、遠距離の会話を可能にする破格の魔法道具へ文句が言いたい。先ほどまで面白がっていたのに勝手な話だ。
もっと会話を引き延ばしたいと思って、頭の中の引き出しを漁る。しかし、その行為は強制的に中断させられた。
眼下に広がる街並みの一点から、遠くからでもはっきりと分かる鮮やかな紅い魔力が立ち上ったのだ。夕日のように美しいその紅は、激流のように強くただ事でないことを教えてくれる。
遠すぎてハッキリとは分からないが、周囲の建造物にも被害が出ていることだろう。人が居れば、死人が出ているかも知れない。何者かが何らかの理由で、人々が生活を営む場所で戦闘を始めたのだ。
『キュウから着信があるな』
「フォルティシモ様、巨大な紅き魔力を放出される者にお心当たりはありませんか?」
『紅いエフェクトならアルかもな。キュウの着信はそれか』
次第に火の手が上がり始めた。あのエルディンの襲撃から日にちが経っていない上、エルフを受け入れた途端これでは、愉快な状況とは言い辛い。
『状況が分からない。会議モードにする』
『ご主人様っ』
『おいフォルティシモ、突然コールしやがって、どうした? 何かあったのか?』
『主殿! 今連絡しようとしていたところだったのじゃ! 獲物は二匹!』
キュウ、ピアノと続いて聞いたことのない声がラナリアの持つ魔法道具から聞こえて来た。状況から言って魔王アルティマ・ワン。第一印象は大切にしたかったが、緊急なので仕方ない。
『キュウ、何があった?』
『アルさんが、マウロさんと、もう一人と戦っていますっ』
『分かった。アル、敵戦力』
『マウロ、六〇〇〇【アサシン】。ミヤマシジミ、五〇〇〇【守護者】』
『戦況』
『マウロ何故か前衛でなかなかの装備、ミヤマシジミうざいのじゃ』
『一覚で五〇〇〇か。念のため引いたほうがいいんじゃないか? 装備や従者次第じゃ分からないぞ』
『おおっ、ピアノ殿か? お久しぶりなのじゃ! しかし妾が一覚程度に負けるはずがないのじゃ!』
「ラナリアと申します。アルさん、市街戦は避けられませんか? 事後処理もありますが、増援の可能性があります」
『誰なのじゃ!?』
『ラナリアだ。昨日話し―――ラナリアもキュウと同じお前の後輩だ』
フォルティシモはラナリアのことをアルティマへ伝え忘れていたらしい。そういう事前の言葉は、人間関係にとても重要な要素なので、できれば忘れないで欲しかったけれど、フォルティシモらしくて笑みが零れてしまう。惚れた弱みというやつだ。
『妾はアルティマ・ワン。よろしくなのじゃ、ラナリア』
「よろしくお願いいたします」
魔王アルティマ・ワンは、現在レベル六〇〇〇と五〇〇〇の敵と戦っているはずで、テラスから見える光景もなかなかの被害が出始めている。それなのに彼女は助けを求めることなく、悠々と会話をしている。ラナリアに自己紹介する余裕付きで。
つまりは危機的状況なのは魔王アルティマ・ワンではなく、街であり一般市民であり、来たばかりのエルフたちであり、それを率いていたピアノであり、受け入れてしまったラナリアだ。
四の五言っていられない。
「フォルティシモ様。アルさんへ戦場を市街へ移すよう申しつけて頂けませんか?」
『アル、近くの、ブルスラの森へ引っ張れ。あと、最低でも片方は絶対に逃がすな』
話が早い。事件の犯人としての責任を擦り付ける相手を残してくれる。
『承知したのじゃ。主殿が絶対と仰るのであれば、どのような無理難題であろうと答えて見せよう!』
『ピアノ、出れないか?』
『すぐ向かう』
『あれーっ!? ま、待つのじゃ! この程度、ピアノ殿の助力は不要なのじゃ!』
『助力とかそういう問題じゃない。ピアノが居ることに意味がある、はずだ』
「ピアノ様、お願いいたします」
『弱い者虐めは趣味じゃないが、仕方ないな』
レベル六〇〇〇と五〇〇〇の敵に対しての助勢を、“弱い者虐め”と断ずるピアノの実力を上方修正しつつ、ラナリアは横に控えるシャルロットを確認した。
「アルさんが行った被害状況の確認と救助を最優先に。戦場を変えるように依頼したから、落ち着いたらすぐに騎士を派遣、手厚い補償で誤魔化して」
「承知しました」
10
あなたにおすすめの小説
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる