廃課金最強厨が挑む神々の遊戯

葉簀絵 河馬

文字の大きさ
167 / 509
第四章

第百六十七話 プレイヤーたちの見る最強

しおりを挟む
 チームメンバーたちは樹氷の影に隠れ、空から見つからないように息を潜めている。視線の先には綺麗に削り取られた山と、その上空に浮かぶレイドボスモンスターの姿があった。

「俺が行くよ。みんなは安全な場所に隠れててくれ」

 ヒューマンのプレイヤーがそう言った。ここから出て、レイドボスモンスターに見つからないように下山し、入り口付近にいるだろう誘い出した天空のプレイヤーに会って、助けてくれるよう頼む。

 レイドボスモンスターに見つかって殺される可能性、天空のプレイヤーが怒り狂ってその場で殺される可能性、下山する間に通常モンスターに殺される可能性まである。

「馬鹿、一人でなんか無理だろ」
「そうよ。もうアイテムもほとんど残ってないんだし」

 チームメンバーたちはヒューマンのプレイヤーが一人で行くというのを引き留める。

『何言ってるの! 私が行くに決まってるでしょ。あなたたちは、大人しくしてて!』
「な、なんで、君は、最初から反対だったのに!」
『悪いけど、もうリーダーを振り切って出発しちゃったから!』

 エルフの女性プレイヤーの言葉は嬉しかった。やはりみんな仲間なのだと感じられた。

 しかし彼女の行動は遅かった。

 空を旋回していたレイドボスモンスターが蒼く輝いた。その光はつい先ほど、『樹氷連峰』の山の一つを消し飛ばした攻撃モーションに他ならない。クールタイムが終わったのか、再びあの攻撃を使うつもりらしい。山一つが攻撃範囲。今から全速力で走っても、逃げられるはずがない。

 死がプレイヤーたちに襲い掛かろうとした。

 エルフの女性プレイヤーの行動はたしかに遅かった。しかしそれはチームメンバーたちの命を助けるのに遅かった訳ではない。

 遅かったのは、天空のプレイヤーはレイドボスモンスターととっくに会敵して、助けを求めるまでもなく戦闘を開始したのだ。恐怖の対象でしかないはずのレイドボスモンスターを、いつか使うかも知れない肉盾にするため、強制的にフレンド登録するという理由で。



 巨大な炎の竜巻が現れた。スケールF5はあろうかという竜巻が炎を纏ってレイドボスモンスターを包み込んだ。そのあまりの強風と熱量に、雪雲は吹き飛び、周囲の雪や樹氷が溶けていく。

「攻撃が、来ない?」
「ほんとだ。なんで?」
「今の、誰のアイテムだ!? もう一回やってくれ!」
「いや、あんな凄いの誰も持ってないって!」
「じゃあ、一体?」

 レイドボスモンスターが空中のある一点へ向けて視線を投げ掛けた。その方向に何があるのか、確認するには隠れている樹氷から身を乗り出さねばならず、発見されてチームメンバーを皆殺しにされる危険は冒せない。

 レイドボスモンスターの周囲に蒼い光の球がいくつも浮かび上がった。大きさは三メートルはあるだろうか、数は二十か三十ほどで目測でそのすべてを数えるのは難しい。光の球が先ほどの方向へ向けて殺到した、と思ったらカキンカキンという野球でもやっているのかという音がして、光の球が返ってくる。

 光の球は次々に『樹氷連峰』の地面に着弾し、爆発を起こしていた。巻き込まれたモンスターが一瞬で消滅するのが見て取れる。その中にはダンジョンボスも含まれていて、レイドボスモンスターの攻撃力がとてつもないことを示していた。

 だとしたら、その光の球を打ち返した者は一体何者だろうか。

「何が、起こってるんだ?」

 チームメンバーの一人が、思わずと言った調子で樹氷から出てしまった。レイドボスモンスターが探し回っていたら、すぐに見つかってしまったことだろう。しかし今、レイドボスモンスターの注意は欠片も彼らへ向けられていない。

 レイドボスモンスターから空中に浮かぶ何かへ向けて、蒼い光線が放たれる。レーザー兵器のような一直線に向かって行ったそれは、何かに当たって散り散りに弾け飛んでいた。

 レイドボスモンスターは、何かへ向かって飛ぶ。

 何かは、巨大な剣を構えた。数百メートルはあろうかという天を貫く大きさの剣だ。その剣の腹で、向かって来るレイドボスモンスターをはたき落とす。

 レイドボスモンスターは地面に激突し、大きな震動がダンジョン全体を揺るがした。

 地を這うレイドボスモンスターと、それを見下ろす何か。

 いつの間にか、樹氷から出て来たのは一人ではなくなっていた。一人、二人とレイドボスモンスターと何かの戦いに引き寄せられるように、樹氷の影から出て空と地を見比べる。

 今更、何か、なんて表現するべきではない。

 あれこそが天空のプレイヤーだ。個人どころかパーティでさえ打倒不可能に調整されているはずのレイドボスモンスターを、たった一人で圧倒するプレイヤー。

 誰かが言った、化け物、と。

 何故かあの日を思い出す。異世界にやって来ることになったあの日、ダンジョンボスを独占し、数々のトッププレイヤーを返り討ちにして、どちらが新実装されたボスなのか分からない暴虐の限りを尽くしていたトップオブトッププレイヤーを。

 果たしてどちらがプレイヤーたちにとっての希望で、どちらが絶望なのか、分からなくなる。

 天空のプレイヤーを倒すためのギミックだったはずだ。どんなプレイヤーでも倒せないレイドボスモンスターのはずだった。最初の神戯参加者は嘘は吐いていないし、チームメンバーたちもそこに疑問は持たなかった。最初の神戯参加者もチームメンバーも知らなかっただけだ。天空のプレイヤーの強さを。

 天空のプレイヤーは、あまりにも強すぎる。彼はレイドボスモンスターを単騎で、それも圧倒的な力を以てして制圧してしまえる―――最強のプレイヤーだった。

 誰かがオープンチャットを使う。

「頼む! そいつを倒してくれ!」

 それが始まりで、チームメンバーたちは口々にオープンチャットを使って、天空のプレイヤーへ語り掛ける。

『誰だお前ら………? あっ』

 天空のプレイヤーからの返信があった次の瞬間、雪と樹氷の世界は一転し、自分たちが海中にいると気付いた。

 一部のボスモンスターが使う、専用のインスタンス空間だ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...