廃課金最強厨が挑む神々の遊戯

葉簀絵 河馬

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第七章

第三百五話 動き出す狐の神

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 クレシェンドは<フォルテピアノ>との拠点攻防戦前、<暗黒の光>の【拠点】で己が眠っていたことに気が付いた。クレシェンドが寝ている場所は神社の社務所であり、身体には毛布が掛けられている。

 眠ったなんて久々だった。やはりフォルティシモに五人も殺されたのは、さすがにダメージが大きかったのだろう。クレシェンドのそれはいくら殺されても本体にダメージがないような都合の良い分身の術ではない。

 気分の悪い昔の夢まで見てしまった。<フォルテピアノ>との拠点攻防戦前に休めたことは良いが、精神的には吐き気を感じる。

「お前でも眠るのだな」

 頭をおさえていたクレシェンドへ話し掛けて来たのは、デーモンの女武者プレストだった。

 プレストはデーモンたちにグラーヴェ翁とは違った意味で頼りにされているけれど、同時に浮いた存在でもある。レベルや装備が特出しているのもさることながら、彼女は独断専行が多い。加えて誰とも連携を取ろうとしない。

 さらに言うと、彼女はグラーヴェ翁よりも年上なので皆が気後れを覚えていた。

「お人が悪い。起こして頂ければ良かったものを」

 彼女の前で寝ていたのは、首を差し出すようなものだった。彼女が敵だったら、クレシェンドは今頃そのすべての想いを達成できずに消えていただろう。

それがしに起こされたかったか?」
「いいえ、まったく。拠点攻防戦までは、まだ少し時間がありますが。準備であればご心配には及びません。私の忠実なる奴隷たちが―――」
「お前の目的が最初から拠点攻防戦だと言うことは分かっている。今更、その準備に口を出すつもりはない」

 クレシェンドはプレスト相手に腹芸をする意味も薄いと考え、両手を挙げて降参の姿勢を取る。

「では何の御用でしょう? 私は、あなたの不気味な動きを警戒しています。あなたは天空の王フォルティシモが近衛翔だと、最初から知っていたのではないですか?」
「ああ、知っていた」

 プレストの肯定に対して、納得を覚える一方で謎が増える。

「だが勘違いするな。某はフォルティシモとお前の関係について、ほとんど知識を持っていない。お前が前が見えなくなるほど憎悪に燃える相手だったとは知らなかった」
「そうでしたか。ではこれは、冷静になれ、という忠告でしょうか」
「サンタ・エズレル神殿のような戦い方は、真の神々には絶対に通用しない。同じ戦い方をするなら、某が背中から叩き斬るぞ」

 クレシェンドは思わず笑ってしまった。

 プレストに忠告されるまでもなく、人質戦術が神に通用するはずがない。

 あれはフォルティシモが近衛翔だと知ってから、急造で用意した戦術だ。そんな急造戦術でもフォルティシモを苦しませることができて、クレシェンドの目的だった拠点攻防戦の開始は達成できている。

 それに最初からもう一度人質戦術を使うつもりはなかった。フォルティシモが同じ戦術が通用するような愚かな相手であれば、そこまで気にする必要はない。簡単に攻略し、絶望の底へ叩き込める。

「あなたは千年の悲願を達成するためであれば、その他はどうでも良いのですね」
「だから某と手を取ったのではないか?」
「ええ、その通りです。私も、あの御方のためならば、その他は、世界さえもどうなろうと構いません」



 クレシェンドはプレストと一緒に社務所から出て境内を歩く。

「狐のお歴々は到着しましたか?」
「肝心の御大が来ていない。あの狐の神は、約束は守るタイプだと思っていたが」

 クレシェンドたち最初の神戯参加者を召喚した狐の神。真摯に神戯の説明をしてくれたし、最初の神戯参加者のために様々な便宜を図ってくれた。

「私から連絡しておきます。とは言え、まだ拠点攻防戦の開始時間ではありません。急かす必要もないでしょう」
「クレシェンド様! ………プレスト」

 サンタ・エズレル神殿の作戦で箱を持ち出す役割を担った、クレシェンドを慕う女性デーモンが駆け寄ってきたかと思うと、クレシェンドの隣を歩くプレストへ不快そうな視線を送った。

 プレストは何も言わずに肩を竦める。

「どうしました? 今は拠点攻防戦の準備で忙しいでしょう? 何か問題でも起きましたか?」
「は、はい。それが、狐の神が」
「到着していない件なら聞きました。私から連絡を入れますので、開始までには必ず間に合うでしょう」
「そうではありません! 狐の神は、天空の王に会いに、アクロシア王国へ向かったと言うのです!」

 クレシェンドは思わず、表情を凍り付かせた。



 ◇



 黄金の狐人族の美女が、アクロシア王国の王都に居た。彼女は店先に設置された赤い布が被せられた椅子に座り、お茶と和菓子を楽しんでいる。

 その店は最強厨魔王と黄金狐が逢瀬で立ち寄った店で、店員は道端を歩いている黄金狐の美女を見掛け、きっと関係者だと考えて声を掛けサービスを提供したのだ。

「この国は本当に何も変わらないと思っていたが、こうしたアップデートは歓迎するべきものだ。どこの老舗とのコラボかえ? わてのお墨付きをやろう」

 店員が単語の意味は分からずとも褒められていることを察してお礼を言う。

「ありがとうございます! あの、天空の国の方ですよね? お気に召して頂けましたら、是非、天空の国フォルテピアノにも、姉妹店の出店をいかがでしょうか!」
「ふむ。まあ、機会があれば薦めておこう」
「お願いします! ところで、本日は王都に何の御用でしょうか? 観光ですか? よろしければオススメスポットの案内をさせて頂きますが」
「いや、その気持ちは嬉しいが違う。今回、この国に来たのは、わての眷属と会おうかと思ってな」

 黄金狐の美女は、その尻尾をくるりと回した。

「知っているかえ? わてと同じ黄金色の毛並みを持つ狐人族の、少女を」
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