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第九章
第四百十五話 vs世界を焼き尽くす巨神 退勢編
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キュウは世界を焼き尽くす巨神から二度目の風魔術、神の息吹と見紛う究極の魔術が放たれるのを、少し離れた場所から見ていた。集まっていたデーモンやその従魔たちが、紙吹雪のように吹き飛んで行く。
今はこの世界から消えてしまったキュウの大好きな主人は、この圧倒的な暴威を振るう世界を焼き尽くす巨神をたった一人で討伐してしまったらしい。
キュウはここに主人がいたら「さすがご主人様です!」と気楽に喜んだだろうな、と考え、今まで如何に主人に頼り切りだったのかを認識した。
主人が居た時は、キュウはいつでも傍観者で良かった。どれほど強大で人では届かない相手でも、主人を信じていれば良かった。「お願いいたします、ご主人様」と言えば、主人は必ず勝ってくれた。
このままでは太陽神ケペルラーアトゥムと同盟を結んで、オウコーから主人を取り戻すどころか、世界を焼き尽くす巨神の前に全滅してしまう。
だからキュウはその耳、あの女神マリアステラにさえも匹敵すると言われて、主人にも初めて褒められた、唯一自分の中で自信を持てる部位へ全力を集中させる。
彼女とまったく同じことは無理でも、何か近いことができれば、皆の戦う力になれるはずだ。
―――必要なのは勇気とか覚悟とか、あやふやなものじゃない。観測して選択するんだよ
女神マリアステラの言葉が蘇る。
神は賽を振らず、ただ選択するのみ。
キュウが選んだのは、天使。
「来てください、太陽の御使い、エンジェルの皆さん!」
キュウの声は届く。
「私が! ケペルラーアトゥム様を救出に行きます! だから、道を開くため、協力してください!」
あるエンジェルへ語り掛ける。そのエンジェルはキュウと戦った。キュウを殺そうとしたけれど、その後、キュウが母なる星の女神と語り合う場面にも同席したのだ。
キュウは『マリアステラの世界』にも行った。その時、太陽神ケペルラーアトゥムと一緒に歩いていた。キュウと太陽神ケペルラーアトゥムは直接会話をするような関係だと知っている者も多いはず。
そしてキュウの声は“聞こえる”。
虹色の瞳と黄金の耳。虹色の瞳で見られるように、黄金の耳で聞かれる。
まるで母なる星の女神が、もう一柱存在するかのような、絶対なる何かにエンジェルたちは応えた。
「協力、致しましょう。新しく生まれようとしている、偉大なる神よ」
「我らに温かき恵みを与えたもう光の神を救い給え」
「あの時分の出来事、どうかお許しください。この命を黄金の狐神へ捧げます」
戦場にエンジェルたちが現れた。
エンジェルたちが味方になったのは、単純に彼らの戦力が加わったのとは訳が違う。エンジェルたちは大氾濫の魔物、無限に湧き出す魔物へ命令することができるのだ。
するとどうなるのか。大氾濫の無限の魔物は、一斉に世界を焼き尽くす巨神を攻撃し始めた。
そして大氾濫の魔物がそうなると、これまで魔物と戦っていた、アクロシア大陸中の戦士たちも戸惑いながらキュウたちへ協力してくれる。
一つ一つは小さくても、何万何十万何百万という数が世界を焼き尽くす巨神を攻撃する。
世界を焼き尽くす巨神は、初めて、再生が遅れた。
世界を焼き尽くす巨神が再びゴッドブレスのモーションに入る。
だがその状況は、キュウの耳が聞き取っている。今の状況なら選ぶべきは退避ではなく、圧倒的な火力による妨害だ。
「最果ての黄金竜様! ブレスで左胸より少し下を撃ち抜いてください!」
キュウの言葉は、音となって最果ての黄金竜へ届く。
人の話をほとんど聞かない彼にしては意外な行動だったけれど、最果ての黄金竜はキュウの頼みに応えて【頂より降り注ぐ天光】を放った。
究極のドラゴンブレスは、泥の巨人の胸を貫き空洞を造り出す。他の部位を失った時よりも、再生が少しだけ遅い。
「アーサーさん! 雷の全知全能神の【伝説再現】を! ヴィカヴィクトリア様は、アーサーさんを信じてください!」
「任せたまえ、もう一人の狐の君! 我が雷で消し去ってくれよう」
「あーくん、頑張って!」
この神戯に参加している神々の中でも、最大級の勝利の女神ヴィカヴィクトリアの信仰心エネルギーが、どんどんアーサーへ流れ込んでいく。アーサーのFPは勝利の女神ヴィカヴィクトリアと繋がっているらしい。そんなの有りなのか、主人が居たらそう言うだろう。
雷の全知全能神と化したアーサーは、恐るべき雷の暴風で世界を焼き尽くす巨神の上半身を攻撃し続ける。ドラゴンブレスで空いた穴から雷が入り込み、明らかに泥の巨人の動きが鈍った。そして何かから逃れるように泥の頭に力が集まるのが聞こえる。
主人の話では【雷魔術】はプレイヤーたちにとって不人気のスキルらしい。主人が最果ての黄金竜と戦った時に、そんなことを言っていた。どこか悪意のようなものを感じる。
「ピアノさん、アルさん!」
「抜光!」
「究極・乃剣なのじゃ!」
白と黒の巨大な剣が、クロスするように世界を焼き尽くす巨神の頭を切り裂く。
泥の巨人の身体から魔力が霧散し、ゴッドブレスが止まった。
攻撃ルーチンは決まった。後は今の一連の攻撃をループして貰えば、世界を焼き尽くす巨神を倒せるだろう。
「ラナリアさん、ルナーリスさん!」
キュウは先ほどから名前しか呼んでいない。けれども呼ばれた者たちは、キュウの意図がすべて“聞こえた”かのように行動してくれる。
「ルナ、バフの魔法道具を使うわ! 狙いは」
『キュウ王后陛下の、行く先!』
竜神ディアナ・ルナーリスの純白のブレスが、キュウの頭上の嵐へ穴を開けた。
「天烏さん!」
その瞬間を待っていた最強の天烏は、嵐の穴を抜けて天上へと飛翔する。
世界を焼き尽くす巨神が覆い尽くしていた嵐の先、薄暗いアクロシア大陸に対して明るい世界。キュウの視界に見渡す限りの雲海が広がった。
雲海の上には二つの人影がある。
その一つが、嵐を抜けてきた天烏に気が付いて意識を向けた。
「む? なんじゃ?」
キュウの進行方向の先、空中に立つ少年の姿がある。カリオンドル皇城に飾られている絵画で見たままの姿、初代皇帝にして主人の祖父オウコー。
そしてもう一つは、褐色の美女。太陽神ケペルラーアトゥム。彼女は意識を失っているのか、ボロボロな姿で堕ちていくところだった。
上昇していくキュウは、ちょうどその身体と交錯する。そして天烏の上で、太陽神ケペルラーアトゥムを抱き留めた。
オウコーは冷たい瞳で、キュウが太陽神ケペルラーアトゥムを救った瞬間を見ている。
「なかなかのモフモフじゃ。しかし儂は“それ”に用事がある。渡して貰おうか」
キュウの抱き留めた太陽神ケペルラーアトゥムを渡せと要求された。キュウはその声を聞いて、全身に悪寒を覚える。耳と尻尾の毛が総毛立ちながら、それでも自然と口から漏れた。
「お断りします!」
何も持たなかった奴隷キュウと、神々に愛された真の天才オウコーの戦いが始まった。
今はこの世界から消えてしまったキュウの大好きな主人は、この圧倒的な暴威を振るう世界を焼き尽くす巨神をたった一人で討伐してしまったらしい。
キュウはここに主人がいたら「さすがご主人様です!」と気楽に喜んだだろうな、と考え、今まで如何に主人に頼り切りだったのかを認識した。
主人が居た時は、キュウはいつでも傍観者で良かった。どれほど強大で人では届かない相手でも、主人を信じていれば良かった。「お願いいたします、ご主人様」と言えば、主人は必ず勝ってくれた。
このままでは太陽神ケペルラーアトゥムと同盟を結んで、オウコーから主人を取り戻すどころか、世界を焼き尽くす巨神の前に全滅してしまう。
だからキュウはその耳、あの女神マリアステラにさえも匹敵すると言われて、主人にも初めて褒められた、唯一自分の中で自信を持てる部位へ全力を集中させる。
彼女とまったく同じことは無理でも、何か近いことができれば、皆の戦う力になれるはずだ。
―――必要なのは勇気とか覚悟とか、あやふやなものじゃない。観測して選択するんだよ
女神マリアステラの言葉が蘇る。
神は賽を振らず、ただ選択するのみ。
キュウが選んだのは、天使。
「来てください、太陽の御使い、エンジェルの皆さん!」
キュウの声は届く。
「私が! ケペルラーアトゥム様を救出に行きます! だから、道を開くため、協力してください!」
あるエンジェルへ語り掛ける。そのエンジェルはキュウと戦った。キュウを殺そうとしたけれど、その後、キュウが母なる星の女神と語り合う場面にも同席したのだ。
キュウは『マリアステラの世界』にも行った。その時、太陽神ケペルラーアトゥムと一緒に歩いていた。キュウと太陽神ケペルラーアトゥムは直接会話をするような関係だと知っている者も多いはず。
そしてキュウの声は“聞こえる”。
虹色の瞳と黄金の耳。虹色の瞳で見られるように、黄金の耳で聞かれる。
まるで母なる星の女神が、もう一柱存在するかのような、絶対なる何かにエンジェルたちは応えた。
「協力、致しましょう。新しく生まれようとしている、偉大なる神よ」
「我らに温かき恵みを与えたもう光の神を救い給え」
「あの時分の出来事、どうかお許しください。この命を黄金の狐神へ捧げます」
戦場にエンジェルたちが現れた。
エンジェルたちが味方になったのは、単純に彼らの戦力が加わったのとは訳が違う。エンジェルたちは大氾濫の魔物、無限に湧き出す魔物へ命令することができるのだ。
するとどうなるのか。大氾濫の無限の魔物は、一斉に世界を焼き尽くす巨神を攻撃し始めた。
そして大氾濫の魔物がそうなると、これまで魔物と戦っていた、アクロシア大陸中の戦士たちも戸惑いながらキュウたちへ協力してくれる。
一つ一つは小さくても、何万何十万何百万という数が世界を焼き尽くす巨神を攻撃する。
世界を焼き尽くす巨神は、初めて、再生が遅れた。
世界を焼き尽くす巨神が再びゴッドブレスのモーションに入る。
だがその状況は、キュウの耳が聞き取っている。今の状況なら選ぶべきは退避ではなく、圧倒的な火力による妨害だ。
「最果ての黄金竜様! ブレスで左胸より少し下を撃ち抜いてください!」
キュウの言葉は、音となって最果ての黄金竜へ届く。
人の話をほとんど聞かない彼にしては意外な行動だったけれど、最果ての黄金竜はキュウの頼みに応えて【頂より降り注ぐ天光】を放った。
究極のドラゴンブレスは、泥の巨人の胸を貫き空洞を造り出す。他の部位を失った時よりも、再生が少しだけ遅い。
「アーサーさん! 雷の全知全能神の【伝説再現】を! ヴィカヴィクトリア様は、アーサーさんを信じてください!」
「任せたまえ、もう一人の狐の君! 我が雷で消し去ってくれよう」
「あーくん、頑張って!」
この神戯に参加している神々の中でも、最大級の勝利の女神ヴィカヴィクトリアの信仰心エネルギーが、どんどんアーサーへ流れ込んでいく。アーサーのFPは勝利の女神ヴィカヴィクトリアと繋がっているらしい。そんなの有りなのか、主人が居たらそう言うだろう。
雷の全知全能神と化したアーサーは、恐るべき雷の暴風で世界を焼き尽くす巨神の上半身を攻撃し続ける。ドラゴンブレスで空いた穴から雷が入り込み、明らかに泥の巨人の動きが鈍った。そして何かから逃れるように泥の頭に力が集まるのが聞こえる。
主人の話では【雷魔術】はプレイヤーたちにとって不人気のスキルらしい。主人が最果ての黄金竜と戦った時に、そんなことを言っていた。どこか悪意のようなものを感じる。
「ピアノさん、アルさん!」
「抜光!」
「究極・乃剣なのじゃ!」
白と黒の巨大な剣が、クロスするように世界を焼き尽くす巨神の頭を切り裂く。
泥の巨人の身体から魔力が霧散し、ゴッドブレスが止まった。
攻撃ルーチンは決まった。後は今の一連の攻撃をループして貰えば、世界を焼き尽くす巨神を倒せるだろう。
「ラナリアさん、ルナーリスさん!」
キュウは先ほどから名前しか呼んでいない。けれども呼ばれた者たちは、キュウの意図がすべて“聞こえた”かのように行動してくれる。
「ルナ、バフの魔法道具を使うわ! 狙いは」
『キュウ王后陛下の、行く先!』
竜神ディアナ・ルナーリスの純白のブレスが、キュウの頭上の嵐へ穴を開けた。
「天烏さん!」
その瞬間を待っていた最強の天烏は、嵐の穴を抜けて天上へと飛翔する。
世界を焼き尽くす巨神が覆い尽くしていた嵐の先、薄暗いアクロシア大陸に対して明るい世界。キュウの視界に見渡す限りの雲海が広がった。
雲海の上には二つの人影がある。
その一つが、嵐を抜けてきた天烏に気が付いて意識を向けた。
「む? なんじゃ?」
キュウの進行方向の先、空中に立つ少年の姿がある。カリオンドル皇城に飾られている絵画で見たままの姿、初代皇帝にして主人の祖父オウコー。
そしてもう一つは、褐色の美女。太陽神ケペルラーアトゥム。彼女は意識を失っているのか、ボロボロな姿で堕ちていくところだった。
上昇していくキュウは、ちょうどその身体と交錯する。そして天烏の上で、太陽神ケペルラーアトゥムを抱き留めた。
オウコーは冷たい瞳で、キュウが太陽神ケペルラーアトゥムを救った瞬間を見ている。
「なかなかのモフモフじゃ。しかし儂は“それ”に用事がある。渡して貰おうか」
キュウの抱き留めた太陽神ケペルラーアトゥムを渡せと要求された。キュウはその声を聞いて、全身に悪寒を覚える。耳と尻尾の毛が総毛立ちながら、それでも自然と口から漏れた。
「お断りします!」
何も持たなかった奴隷キュウと、神々に愛された真の天才オウコーの戦いが始まった。
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