廃課金最強厨が挑む神々の遊戯

葉簀絵 河馬

文字の大きさ
439 / 509
第九章

第四百三十八話 従属神の戦い 前編

しおりを挟む
 アクロシア大陸の上空、黄金と虹の星雲から七つの星が降り注ぐ。

 最強の神の従属神たちが、最強の神を責め立てるのを止めて、自らの戦場へ向かっていった。

 その場に居た<時>の神々は、少女の姿をした従属神たちを追い掛けようと迷いを見せる。しかし最強の神を目の前にして、背中を見せることはできないと理解した。

 戦場がひっくり返る。



 ◇



> 従者リースロッテが従属神リースロッテに進化しました
> クラスアップ【守護神】

 八番目の従者リースロッテは、異世界ファーアースへ戻って来たものの、ほとんど何の感慨も抱いていなかった。

 元々リースロッテは従者の中でも異質な存在で、対人最強を望まれ産まれたから、それ以外の機能を削ぎ落としている。機能優先のシステムではよくあることで、タスクに優先度を割り振ってCPUやメモリを占有する。人間で例えれば、視力を失った人間が他の感覚が鋭敏になるようなもの。

 リースロッテは対人戦闘に必要な要素以外をほとんど持っていない従者なのだ。

 ただし何故、対人戦闘に特化しているかの理由だけは核として刻まれている。

 フォルティシモがリースロッテを作成した最大の理由は、仲間を、家族を守るためだ。

 【拠点攻防戦】の魔王城最下層で人間では回避も防御も不可能な瞬殺攻撃を繰り出したことから分かるように、リースロッテの能力は【拠点】内で使うことを想定している。

 いつも憎まれ口を叩いているし、アルティマとは殴り合いの喧嘩も辞さないし、フォルティシモへ誰よりも先へ突っかかるし、キュウの尻尾は引っ張るけれど。

 リースロッテは誕生理由と存在自体が、仲間のためにある【守護神】なのだ。

 そんなリースロッテが選んだ戦場は、『浮遊大陸』しかない。

 『浮遊大陸』は家族が暮らす国だ。プレイヤーの好き勝手になどさせない。

 リースロッテは空色の髪をなびかせて、『浮遊大陸』の防衛をしている元奴隷たちとプレイヤーの間へ割り込んだ。

 プレイヤーが驚きの表情でリースロッテを見る。

「リースたん!?」

 そして『【魔王様の娘】リースロッテ攻略スレ partXXX【幼女ペロペロ】』スレの住人に出会った。

 リースロッテは無表情で彼らを抹殺した。



 ◇



> 従者キャロルが従属神キャロルに進化しました
> クラスアップ【調教神】

 七番目の従者キャロルは、色々な意味で溜息を吐いた。

 空を飛翔しながら情報ウィンドウを使い、【調教神】の文字を変更できないか何度も押してみる。情報ウィンドウはウンともスンとも言わなかった。

 はっきり言って、異世界ファーアースへ来てから最も苦労したのはキャロルである。活躍しているのはエンシェントかダアトに譲るけれど、苦労だけはキャロルがナンバーワンだ。

 孫従者曾孫従者というネズミ講従者たちが捕まえる従魔を選び、テイムに協力し総括している。

 キャロルの【開拓者】クラスはレーダー範囲が広く、フィールドやモンスターの情報収集やドロップ補正など、探索にも優れている。だから異世界ファーアースの住人たちが作っていた、危険な場所や有用な素材が書かれた世界地図作成にも協力した。

 生来の面倒見の良さのせいで、エルフや元奴隷たちに慕われ、何かと気を回している。

 ダアトが鍵盤商会を作った時、その副会長に任命されたのもその辺りが理由である。順当に行けば副会長はマグナのはずだ。

 この苦労は、これからも続くだろう。あの最強神フォルティシモが、世界に君臨し続ける限り。

 そんなキャロルは、ファーアースオンライン・バージョン・フォルティシモとなった世界を見つめた。たしかに異世界ファーアースの住人たちはプレイヤーとなったけれど、圧倒的に経験が足りていない。

 移行期間特別処置とサポート妖精を使ったところで、いきなり全員がプレイヤーと互角に戦えることはない。

 人々プレイヤー神々プレイヤーと戦うため、助けなければならないのだろう。

 キャロルは最強神フォルティシモの従属神なのだから。

 助けに入る場所は、アクロシア大陸のほぼ全域。

 『浮遊大陸』でフォルティシモに厳選の末に眠っていた従魔。今のキャロルは、百万にも届く従魔たちを同時に操れる。それを移行期間特別処置によって最大数値まで引き上げて、世界中へ解き放つ。

 そしてキャロルの放つ百万の従魔は、フォルティシモの従魔である。死んだら、フォルティシモの【拠点】へ戻って来る。戻って来たら、また放つ。無限の従魔による津波。

 これはキャロルという神が、神を裁く大氾濫だ。



 ◇



> 従者アルティマが従属神アルティマに進化しました
> クラスアップ【魔王神】

 六番目の従者アルティマ・ワンは世界を焼き尽くす巨神を攻撃している最中、突如として呼び出された。

 それはプレイヤー同士が【救援要請】で呼び合うのと似ているシステムで、主であるプレイヤーは選んだ従者を集結させることができる。

 アルティマにはこの【集結要請】を断ることができた。従者たちは高度なAIを詰んでいて、交渉中や戦闘中などすぐに集まれない場合があるから、命令ではなく【集結要請】という強制力を伴わないシステムが存在している。

 しかしアルティマは、アルティマだからこそ、消えたフォルティシモの呼び出しを無視することはない。ピアノへ断りを入れて、主の元へ参上する。

 そうしたら、主フォルティシモは最強神フォルティシモになっていて、アルティマは神に成った。

「まったく状況が分からないのじゃ!? しかし! 妾は最強神たる主殿の従属神なのじゃ!」

 アルティマには他の従者たちと決定的に異なる点がある。

 VRMMOファーアースオンラインへ【従者】システムが実装された当時、月額課金しても最大五人までだった。

 しかしゲーム内で開催されたPVP大会の優勝賞品が黄金色の狐人族だったため、フォルティシモ以外他の誰も持たない六人目の従者としてゲーム世界へ降り立った。

 今考えると、その大会その物が近衛天翔王光と狐の神タマの策略だったのかも知れない。

 ともかくアルティマはフォルティシモが大会優勝した最強になった後、作成された。

 フォルティシモを最強に“する”ために作成された従者たちとは、根本的に理由が異なっている。もちろん【近衛】システムのこともあり、アルティマはフォルティシモと同じクラス、同じ成長、同じビルドを目指した。けれど、それはフォルティシモを更に強くするためであり、最強にすることが目的ではない。

 ならアルティマの基本的な役割は何か。

 それは最強のフォルティシモが相手にするまでもない敵を排除すること。

 アルティマはすぐに元の戦場へトンボ返りする。世界を焼き尽くす巨神は健在なれど、味方側も大きく崩れていない。敵味方揃って情報ウィンドウのせいで大混乱だが、崩れていないと言ったら崩れていない。

 ピアノや異世界ファーアースの人々を襲うプレイヤーたちへ向かって宣言した。

「どいつもこいつも、一度は倒した奴らばかりなのじゃ! かかって来るが良い! 妾は究極の一アルティマ・ワン! 主殿に代わり、お前らぶっ潰してやるのじゃ!」

 もう一人の魔王神デミ・フォルティシモと成ったアルティマの最初の戦いが始まる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...