身代わりおまけ王子は逃げ出したい

おみなしづき

文字の大きさ
60 / 110
第二章

また逃げた レイジェル視点

 ミオがいるであろう部屋へすぐに向かった。
 パーティーはちょうど解散になっていて帰る人ばかりだった。借金取りもローウェンも難なく城を出られるだろう。

「それにしても、どうしてミリオン様の家族はあんな態度だったんですかね?」
「恐らくだが、王妃が亡くなった事が原因の一つかもしれない。国王の愛情は女であるミリアンナへ全て注がれた。そうなるとミリオンの事など全て後回しだ。兄はそれを見ていてミリオンをいない者として扱ってもいいのだと思ってしまったのではないだろうか……」
「勝手な理由ですね」

 理由がどうであれ、ミオがいない者とされて、身代わりにされた事実はくつがえらない。
 ミオは、初めて会った時からそんな事を言っていた。あの頃からずっとそうだったと思うとやはり甘かったのではないのかと思ってしまいそうだ。

「やっとミリオン様……いえ、ミリアンナ様に会えますね」

 ラトもミオに会えるのが嬉しいようだ。

「数時間でも、こんな状況では顔を見ないのは心配だな」
「すぐに会えますって。それにしても、本物のミリアンナを見たらミリアンナ様って呼ぶのちょっと嫌になっちゃいますね」
「あちらが偽物だと思えばいい」

 ミリアンナとしてでなければ、妃として迎えられない。
 今後も女装して、私の隣にいて欲しいと言ったら、ミオはどうするだろうか……。
 やっぱり逃げられる気がする……。

 いくら考えても相手の気持ちを推し量る事などできない。ミオには私の気持ちを伝えればいい。
 逃げられたら、頷いてくれるまで追いかければいい。
 邪魔になるものは排除した。ミオに男であってもそばにいて欲しいのだと打ち明ける時が来た。

 近付けば赤くなり、膝枕をしても嫌がらなかった。少しぐらいは期待している。
 この腕に抱き締める瞬間を──。
 全てはこれからだ。

「レイジェル様、あそこの部屋では?」

 ラトと共に部屋の前まで行って驚いた。

「なんだ? 鍵が壊されているな」
「扉も開きっぱなしですね」

 二人で中に入れば、ベッドのシーツが乱れていて確かに誰かがいた痕跡はあるのに、誰もいなかった。

「場所は本当にここか?」
「そのはずです」

 窓を見れば壊されていてガラスが飛び散っていた。
 外を覗けば二階程度の高さから椅子が地面に転がっているのが見えた。内側から椅子を投げて窓を開けたか。

「ここから逃げたみたいですね……」

 ラトが苦笑いしながら言えば、私も苦笑いだ。
 本当にミオは逃亡するのが上手い……。

 今度ばかりは行く場所が全く思い当たらない。何か手がかりを見つけないといけない。
 ラトと一緒に部屋を調べる。

「ラト、手紙はないか?」
「ありませんね……」
「何か……何かないのか……?」

 何も見つからなくて段々と焦ってくる。
 そこでふと思う。

「ラト……私は嫌われているんだろうか……」

 だとしたら、ちょっと期待していた自分が恥ずかしい。
 真剣に聞いたのに、ラトはブハッと吹き出した。

「そんな情けない顔しないで下さいよ。嫌われてるわけないでしょ。馬車でレイジェル様が寝てしまった時、何度も頭撫でてましたよ。誰にもバレてないと思っていたんでしょうが、私は見ました。惚れてますって顔しながらレイジェル様を見つめてましたよ」

 そうだったのか……寝ていて本当に勿体無いことをした。そんな顔を見せてくれたなら、私も自信が──ちょっと待て。

「お前──それを見たのか? 私より先に──?」
「うわっ。出た。自分が先に的な、やきもち的なやつ。面倒くさいんでやめて下さいよ」
「可愛かったのか──?」
「それ、イエスもノーも答えたら怒るの目に見えてるんですけど……」

 イエスならやはり私より先に見た事が許せない。ノーと言ったらラトを窓から突き落とす所だったな。
 嬉しいのだが、ラトが先に見ていたとは複雑だな。

 そこでコルテスが部屋にやってきた。

「遅いと思って来てみたら、お二人とも何をやっているんですか?」

 説明すれば、ため息をつかれた。

「お二人もいて、何も気付かないんですか? これ、窓に椅子をぶつけて外に出ただけなら、扉の鍵が外側から壊されているのはおかしいです」

 という事は──。

「何者かが扉を開けて、ミリアンナ様を連れて窓から一緒に逃げたのです」
「俺たち以外にミリアンナ様を助けた人がいるってのか?」

 コルテスが頷く。

「扉を開けておきながら、扉から逃げなかったのは、逃げられなかったからです。ここに居たのがミリオン様だと理解していて、全ての事情を知っているのではないでしょうか」
「それなら、助けたのはミリオン様の方の知り合いって事だな」

 ラトの言葉に考え込む。

「パーティーで人の出入りは激しかった。招待客のリストと出席者のリストを照らし合わせよう」
「はい。すぐに用意します」

 コルテスがラトに向かってドヤ顔をする。

「こんな事に気付かないとは、やはり私がいなければダメですね」
「せっかく褒めてやろうと思ったのに、お前はそういうところが可愛げがない」
「ラトから褒められても嬉しくありませんね」

 ため息をつくコルテスにラトがズイッと近付く。

「言葉より態度で褒めてやろうか? 抱きしめてやろうか?」
「毎回毎回同じ事ばかり言っていてよく飽きませんね」
「モテないお前が喜ぶからだろ?」
「誰が喜ぶんですか! 誰が!」

 いつもの二人のやり取りを放っておいて、窓の外の暗い闇を見つめながらミオの事を想う。
 誰とどこへ行ったのか……。

「知り合いでしたら、酷い事はされないでしょう」

 コルテスが気にかけてくれる。

「だが、スッキリしない──」

 何かが胸の奥に引っかかっている。

 ミオに会えなくてかなり気落ちしている……。
 家族から酷い扱いを受けていて、ミオがまたここに戻ってくるとは考えられない。
 これからだと思っていたのに……!

 思えば、追いかけっこばかりだ。
 あきらめる? そんな言葉は私の辞書にはない!
 こうなったらとことんやってやろうじゃないか。

「ふ、ふふっ……ははっ」

 なぜか笑えてきたな。

「レイジェル様が壊れた……」
「は、早くミリアンナ様を見つけましょう!」

 まだ私の気持ちを伝えていない。このまま終わりになんてさせない。

 必ず見つけ出して会いに行く──。
感想 101

あなたにおすすめの小説

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。