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あまり人気のない校舎には、グラウンドから部活をしている生徒の声が響いていた。
教室にはもういないだろうか?
いや、いるはずだ。そう期待している。
胸がドキドキと鳴る。
いなかったらどうするか……そんな事は、その時に考えればいい。
自分の教室目掛けて走った。
やっとわかったんだ。人を好きになる事は簡単じゃない。しかも相手は男。それでも好きになったんだ。
この気持ちを大事にしなきゃ。
桜司は、誰もいなくなった教室にいた。
すぐには声を掛けられなかった。桜司は、俺の席に座って机に突っ伏していた。
俺の……席……。
少し期待する。もしかして、もしかしたら、桜司も──。
「桜司っ!」
教室に入って名前を呼べば、桜司が慌てて立ち上がってガタンッと椅子が倒れた。
「あ……こ、これは……違うから。席……間違っただけって言うか……その……ご、ごめん……」
眉根を寄せて下を向いた桜司に胸が痛くなる。
桜司は、謝る事なんてしていない。
俺だってそうだ。
「桜司、俺と付き合え」
桜司を真っ直ぐに見つめてそう告白した。
胸はバクバク鳴ってるし、顔が熱い気がする。
顔を上げた桜司からは、いまいち反応がない。
「……どこに?」
全然伝わってない!
「そうじゃなくて……」
桜司の足元にある倒れている椅子が俺に勇気をくれた。
「お前が好きだ。付き合って欲しい」
桜司の顔が驚いてから、ボッと赤く染まった。
今まで見た事もない、照れた様子の桜司を見て胸が高鳴る。
「時春……本気なのか?」
俺の気持ちが疑われている。
どうやったら伝わるだろうか。
「本気じゃなきゃ男に告るかよ……」
いじけたように言ってしまった。
伝え方がわからない。
「ごめん……時春は女が好きだったよね……? あまりにも突然で信じられなくて……」
ちゃんと伝えなきゃ。カッコ悪くても自分の気持ちを。
「女といたのは、桜司が好きだって認めたくなかったからだ……でもさ、誰といてもお前の事しか考えられねぇんだもん。認めたら……伝えたくなった……」
段々とこんな気持ちを言葉にするのが恥ずかしくなる。
「で、返事は?」
もう伝わった?
俺が好きなのはお前なんだって。
不安じゃないと言ったら嘘だ。でも、期待の方が大きい。
俺の気持ちに応えてくれないか?
少しして、桜司に恥ずかしがりながら右手を差し出された。
「じゃあ……よ、よろしくお願いします……」
返事はイエスだという事だ。
嬉しくてその手をガシッと握った。
「おぅ! よろしくな!」
満面の笑みがこぼれる。
いつもの桜司の優しく微笑む顔に赤みが差していて、桜司も喜んでくれているんだと思えた。
◆◇◆
次の日に教室で挨拶を交わす。
「はよ……」
「おはよう……」
二人の間に春風みたいな暖かい空気が流れる。
お互いに少し照れる。
両思いというだけで、挨拶が特別になるなんて知らなかった。
隣の席を盗み見るのは相変わらずなのに、前よりも桜司の周りがキラキラして見える。
ペンを持つ指先も綺麗に見えるんだよな……。
桜司って足長いし……女にもモテる……。
そうだ……こいつ女にモテるんだよな……俺みたいなゴツゴツした男で本当にいいんだろうか?
桜司に好きって言われたら自信つくかな?
桜司は、桜司を見ていた俺に気付くと、ふわりと微笑んだ。
ああ……やっぱり好きだな。
◆◇◆
放課後は二人で一緒に帰った。
いつもと同じなのに、いつもより半歩近く歩いていた気がする。
手が触れ合いそうで触れ合わない距離は、もどかしくも俺たちに丁度いい。
「今日は……どうする? 家くる?」
桜司の部屋に行くのも少し緊張する。
「いいのか……?」
「うん。もう少し……時春と一緒にいたいから……」
ドキンッと高鳴った胸を隠しながら頷いた。
久しぶりに来た桜司の家は、相変わらず少し寂しそうだった。
父親と二人暮らしだとは聞いているけれど、広めの一軒家にはいつも明かりがついていない。桜司は、一人にはもう慣れたと笑っていた。
「桜司のお父さん、相変わらず忙しいのか?」
「うん。仕事優先にしていいって言ったのは僕だから」
「ふーん……そっか……」
それって……家に二人きりって事なんだけど……意識されていないのか、それとも、そのつもりで呼んだのか……。
無駄に緊張してきた……。
桜司の部屋では、いつもみたいに他愛無い会話を楽しんで漫画を読んだりゲームをした。
緊張していた気持ちも落ち着いて、この状況は付き合う前と何も変わらない。でも、それじゃ物足りない。
隣同士に座っていても、たった五センチの距離がもどかしい。
相手に触れたいと考えてしまっているのは俺だけか?
桜司は違うのだろうか?
「なぁ、桜司。このゲーム、俺が勝ったらキスしていい?」
「え……?」
桜司が画面から俺の方に向けた顔が赤く染まっていた。その顔を見たら安心した。
意識していたのは俺だけじゃないみたいだ。
引き寄せられるようにその唇にキスをした。
想像通りだけれど、とても柔らかかった。キスした俺の方が顔が赤い気がする。
「わりぃ……勝ってなくても……しちゃったわ……」
照れを隠すようにニカッと笑えば、桜司の真剣な顔が俺に迫ってきた。
二度目のキスは桜司からだった。
いつも、綺麗だと思っていた顔がやけに男らしく見えてドキドキと胸が高鳴る。
「僕もしたから……一緒だよ……」
「桜司……んっ──」
三度目も桜司からだった。四度目はお互いに──。
感触を確かめるように、何度も何度もキスをした。
教室にはもういないだろうか?
いや、いるはずだ。そう期待している。
胸がドキドキと鳴る。
いなかったらどうするか……そんな事は、その時に考えればいい。
自分の教室目掛けて走った。
やっとわかったんだ。人を好きになる事は簡単じゃない。しかも相手は男。それでも好きになったんだ。
この気持ちを大事にしなきゃ。
桜司は、誰もいなくなった教室にいた。
すぐには声を掛けられなかった。桜司は、俺の席に座って机に突っ伏していた。
俺の……席……。
少し期待する。もしかして、もしかしたら、桜司も──。
「桜司っ!」
教室に入って名前を呼べば、桜司が慌てて立ち上がってガタンッと椅子が倒れた。
「あ……こ、これは……違うから。席……間違っただけって言うか……その……ご、ごめん……」
眉根を寄せて下を向いた桜司に胸が痛くなる。
桜司は、謝る事なんてしていない。
俺だってそうだ。
「桜司、俺と付き合え」
桜司を真っ直ぐに見つめてそう告白した。
胸はバクバク鳴ってるし、顔が熱い気がする。
顔を上げた桜司からは、いまいち反応がない。
「……どこに?」
全然伝わってない!
「そうじゃなくて……」
桜司の足元にある倒れている椅子が俺に勇気をくれた。
「お前が好きだ。付き合って欲しい」
桜司の顔が驚いてから、ボッと赤く染まった。
今まで見た事もない、照れた様子の桜司を見て胸が高鳴る。
「時春……本気なのか?」
俺の気持ちが疑われている。
どうやったら伝わるだろうか。
「本気じゃなきゃ男に告るかよ……」
いじけたように言ってしまった。
伝え方がわからない。
「ごめん……時春は女が好きだったよね……? あまりにも突然で信じられなくて……」
ちゃんと伝えなきゃ。カッコ悪くても自分の気持ちを。
「女といたのは、桜司が好きだって認めたくなかったからだ……でもさ、誰といてもお前の事しか考えられねぇんだもん。認めたら……伝えたくなった……」
段々とこんな気持ちを言葉にするのが恥ずかしくなる。
「で、返事は?」
もう伝わった?
俺が好きなのはお前なんだって。
不安じゃないと言ったら嘘だ。でも、期待の方が大きい。
俺の気持ちに応えてくれないか?
少しして、桜司に恥ずかしがりながら右手を差し出された。
「じゃあ……よ、よろしくお願いします……」
返事はイエスだという事だ。
嬉しくてその手をガシッと握った。
「おぅ! よろしくな!」
満面の笑みがこぼれる。
いつもの桜司の優しく微笑む顔に赤みが差していて、桜司も喜んでくれているんだと思えた。
◆◇◆
次の日に教室で挨拶を交わす。
「はよ……」
「おはよう……」
二人の間に春風みたいな暖かい空気が流れる。
お互いに少し照れる。
両思いというだけで、挨拶が特別になるなんて知らなかった。
隣の席を盗み見るのは相変わらずなのに、前よりも桜司の周りがキラキラして見える。
ペンを持つ指先も綺麗に見えるんだよな……。
桜司って足長いし……女にもモテる……。
そうだ……こいつ女にモテるんだよな……俺みたいなゴツゴツした男で本当にいいんだろうか?
桜司に好きって言われたら自信つくかな?
桜司は、桜司を見ていた俺に気付くと、ふわりと微笑んだ。
ああ……やっぱり好きだな。
◆◇◆
放課後は二人で一緒に帰った。
いつもと同じなのに、いつもより半歩近く歩いていた気がする。
手が触れ合いそうで触れ合わない距離は、もどかしくも俺たちに丁度いい。
「今日は……どうする? 家くる?」
桜司の部屋に行くのも少し緊張する。
「いいのか……?」
「うん。もう少し……時春と一緒にいたいから……」
ドキンッと高鳴った胸を隠しながら頷いた。
久しぶりに来た桜司の家は、相変わらず少し寂しそうだった。
父親と二人暮らしだとは聞いているけれど、広めの一軒家にはいつも明かりがついていない。桜司は、一人にはもう慣れたと笑っていた。
「桜司のお父さん、相変わらず忙しいのか?」
「うん。仕事優先にしていいって言ったのは僕だから」
「ふーん……そっか……」
それって……家に二人きりって事なんだけど……意識されていないのか、それとも、そのつもりで呼んだのか……。
無駄に緊張してきた……。
桜司の部屋では、いつもみたいに他愛無い会話を楽しんで漫画を読んだりゲームをした。
緊張していた気持ちも落ち着いて、この状況は付き合う前と何も変わらない。でも、それじゃ物足りない。
隣同士に座っていても、たった五センチの距離がもどかしい。
相手に触れたいと考えてしまっているのは俺だけか?
桜司は違うのだろうか?
「なぁ、桜司。このゲーム、俺が勝ったらキスしていい?」
「え……?」
桜司が画面から俺の方に向けた顔が赤く染まっていた。その顔を見たら安心した。
意識していたのは俺だけじゃないみたいだ。
引き寄せられるようにその唇にキスをした。
想像通りだけれど、とても柔らかかった。キスした俺の方が顔が赤い気がする。
「わりぃ……勝ってなくても……しちゃったわ……」
照れを隠すようにニカッと笑えば、桜司の真剣な顔が俺に迫ってきた。
二度目のキスは桜司からだった。
いつも、綺麗だと思っていた顔がやけに男らしく見えてドキドキと胸が高鳴る。
「僕もしたから……一緒だよ……」
「桜司……んっ──」
三度目も桜司からだった。四度目はお互いに──。
感触を確かめるように、何度も何度もキスをした。
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