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入学後
防御魔法学 二年生
次の日に防御魔法学の授業を受けながら驚いていた。
昨日俺が魔力を込めたリンゼイの腕輪。もう魔力が無くなっているようだった。
どういう事だ?
あの腕輪の魔法陣は、リンゼイが本気で拒んだものを跳ね除ける魔法陣に描き換えた。
それが発動したとなると──リンゼイは危ない目にあったのか?
話したい──。何があったのか知りたい。
「防御魔法の最上位が結界だという事は知っているよね? 手元にある魔法陣は、結界の初歩だ。手のひらサイズの結界ができるかどうか君たちにチャレンジしてもらいたい」
教室内はザワザワと騒がしい。
結界ができれば、大抵の魔法を防げるからだ。
「君たちが守りたいと思う人を思い浮かべてみて」
俺が守りたいのは……一人だけだ。
魔法陣に魔力を通せば、発動は遅くてもしっかりと結界ができた。
授業が始まってからリンゼイの事ばかりを考えていたからか、結界ができたのはクラスの中で最初だった。
「ディノ。よくやったね。次はもっと大きな結界を作る魔法陣を試してみるといい」
「はい……」
いつも通りのリンゼイに複雑な気持ちが湧く。
あの後、何があった?
授業どころじゃないんだけどな……。
「先生ー! 人じゃなくてもいいですか!?」
「マキシムは何を守りたいの?」
「家で飼ってるペットのカエル!」
「いいよ。君にそのカエルを守りたいと思う強い気持ちがあればね」
「ぜってー守る」
みんな真剣にやっていた。
それでも結界ができる人は少ない。
「いいかい? マキシムのように大事なものが人ではない場合もある。君たちの本当に大事なものを思い浮かべて。大事なものが壊される……それを嫌だと、守りたいと心から思うんだ」
隣の席にいたケフィンの手元に結界ができたのを見て驚いた。正直、意外だった。
「ケフィン、君は何を守りたくて結界を発動したのですか?」
「あー俺さ、父親いねぇーんだよ。ラクノーヴァの戦いで俺のおやじ死んだんだ」
あっさりと告げられた事実に驚く。
「母親と下に弟と妹が三人いてさ。俺が守ってやらなきゃって思ってるんだ。それ考えてたらできちゃったぜ」
ニカッと笑ったケフィンになんとも言えない気持ちが湧く。
「もしも今でも争いが続いてたらさ、俺は志願魔法使いとして戦地に行ってた──絶対」
「ケフィン……」
いつも明るいケフィンの見た事がない真剣な顔に戸惑う。
ケフィンが人と争うなんて想像できない。
もしかしたらケフィンが人を殺めていたかもしれない世界があったと思うと怖かった。
エルドが作った平和を少しだけ実感できた気がした。
「なんて言ったらいいか……」
「あんま暗くなるなって! もうだいぶ前の話だし、エルドがおやじの仇を取ってくれたしな!」
そんな風に考える人もいるのか……。
エルドなんて碌なものじゃないって思っていたのに、救われた人がいたなんて思わなかった。
「そういうわけだからさ、エルドみたいにとはいかないけど、俺は魔法使いになっていっぱい稼いで、家族を楽にしてやりたいんだ!」
「ケフィンならできそうですね」
笑顔で言えば、ケフィンは照れたのを隠すようにニカッと笑った。
そこでこちらにやってきたのは、ブルーノだ。
ケフィンの隣にいたエーベルトの横に座った。
「エーベルト……見ろ……」
ブルーノの手元を見れば、小さな結界が発動した。
みんなで感心していた。
やっぱりブルーノは優秀だ。
「ブルーノはすごいね。僕はできそうにない……」
エーベルトは、唸りながら自分の魔法陣に魔力を込めるけれど、何も反応しない。
「い、いや……お前は……俺が……守る……から……っ」
ブルーノが顔を赤くしながら、小声でボソボソと言っているのが聞こえてきて、ケフィンとメルフィスで顔を見合わせた。
どちらかと言うとブルーノが守られる方では……?
エーベルトは、魔法陣に夢中でブルーノの言葉を全く聞いていない。
「お、おい……エーベルト?」
「はぁ~……やっぱりできないや。僕もブルーノみたいにできるように頑張るね」
「お、おう……っ!」
ブルーノは、全然気付かれてなくてちょっとヤケクソっぽかった。
しょんぼりしながら元いた席に戻っていく。どんまい!
授業も終わる頃に、リンゼイは最後のまとめをする。
「結界の魔法陣の役割は範囲の変更だけだ。強度は守りたいという気持ちで変わる。魔力の消費もその分変わる。自分の限界を知って自分のできる範囲で使うように。結界ができた人は、その感覚を忘れないで。できなかった人は、防御魔法の復習をしておくように。結界ができないからと悲観しないで。防御魔法は結界だけではないからね」
はーいと返事をすれば、授業が終わった。
リンゼイが職員室に戻ってしまう前に慌てて後を追おった。
「せ、先生! リンゼイ先生!」
廊下で呼び止めて、こちらを振り向いたリンゼイは、俺を見て嬉しそうに満面の笑顔を見せた。
トスッ──。
胸に矢が刺さった。予想外の会心の一撃に心臓はキュンとしたし、顔に全身の血液が集まったみたいに熱い。
か、かわいい!
まるでご主人様を見つけた忠犬みたいに可愛く見える。
胸がバクバクしてる!
「ディノ。どうしたんだい?」
ニコニコして甘い声で名前を呼ばれて腰が砕けそうだった。
俺は何しに来たんだったか!?
「あ、あの……その……そ、それ……」
言葉が上手く発せられない!
「リンゼイ先生、ちょっといいですか?」
薬学のトマス先生が別方向から声を掛けた事で顔を逸らされた。
「おや? リンゼイ先生、何か嬉しそうですね」
「そうですか?」
「なんだか可愛らしいですよ」
可愛い──俺が言ってやりたかった! 言えないけど……。
「え……やだなぁ……すみません」
顔を手で隠すように照れたリンゼイに胸がもやっとした。
俺以外にそんな反応をするな。
誰にもあの顔を見せんな──。
そんな独占欲が湧いてきて苦い思いをする。
「それで、ディノ。どうしたの?」
トマス先生がいる前じゃ話せないか。
「あ……いや。すみません。肩にゴミが……」
肩についたゴミを振り払うふりをしてちゃっかり触る。一回じゃない。トントンと二回だ。
「ディノ。ありがとう──」
リンゼイはまたも照れたような嬉しそうな顔を俺に向けてから、トマス先生と話しながら行ってしまった。
脱力してしゃがみ込む。
「なんだよ……あいつ……」
あんな顔を向けられたら俺の心臓がもたない。
熱い顔が冷めるまで教室に戻れなかった。
それからも、どうにかして話したいのに話すきっかけがなかなか掴めなかった。
──────────
※防御魔法学クイズ(読み飛ばして問題ないよ)
Qブルーノは何を考えて結界を発動させたのか?
①マキシムのペットのカエル
②メルフィス
③エーベルト
答え・③エーベルト ブルーノ、頑張れ!
昨日俺が魔力を込めたリンゼイの腕輪。もう魔力が無くなっているようだった。
どういう事だ?
あの腕輪の魔法陣は、リンゼイが本気で拒んだものを跳ね除ける魔法陣に描き換えた。
それが発動したとなると──リンゼイは危ない目にあったのか?
話したい──。何があったのか知りたい。
「防御魔法の最上位が結界だという事は知っているよね? 手元にある魔法陣は、結界の初歩だ。手のひらサイズの結界ができるかどうか君たちにチャレンジしてもらいたい」
教室内はザワザワと騒がしい。
結界ができれば、大抵の魔法を防げるからだ。
「君たちが守りたいと思う人を思い浮かべてみて」
俺が守りたいのは……一人だけだ。
魔法陣に魔力を通せば、発動は遅くてもしっかりと結界ができた。
授業が始まってからリンゼイの事ばかりを考えていたからか、結界ができたのはクラスの中で最初だった。
「ディノ。よくやったね。次はもっと大きな結界を作る魔法陣を試してみるといい」
「はい……」
いつも通りのリンゼイに複雑な気持ちが湧く。
あの後、何があった?
授業どころじゃないんだけどな……。
「先生ー! 人じゃなくてもいいですか!?」
「マキシムは何を守りたいの?」
「家で飼ってるペットのカエル!」
「いいよ。君にそのカエルを守りたいと思う強い気持ちがあればね」
「ぜってー守る」
みんな真剣にやっていた。
それでも結界ができる人は少ない。
「いいかい? マキシムのように大事なものが人ではない場合もある。君たちの本当に大事なものを思い浮かべて。大事なものが壊される……それを嫌だと、守りたいと心から思うんだ」
隣の席にいたケフィンの手元に結界ができたのを見て驚いた。正直、意外だった。
「ケフィン、君は何を守りたくて結界を発動したのですか?」
「あー俺さ、父親いねぇーんだよ。ラクノーヴァの戦いで俺のおやじ死んだんだ」
あっさりと告げられた事実に驚く。
「母親と下に弟と妹が三人いてさ。俺が守ってやらなきゃって思ってるんだ。それ考えてたらできちゃったぜ」
ニカッと笑ったケフィンになんとも言えない気持ちが湧く。
「もしも今でも争いが続いてたらさ、俺は志願魔法使いとして戦地に行ってた──絶対」
「ケフィン……」
いつも明るいケフィンの見た事がない真剣な顔に戸惑う。
ケフィンが人と争うなんて想像できない。
もしかしたらケフィンが人を殺めていたかもしれない世界があったと思うと怖かった。
エルドが作った平和を少しだけ実感できた気がした。
「なんて言ったらいいか……」
「あんま暗くなるなって! もうだいぶ前の話だし、エルドがおやじの仇を取ってくれたしな!」
そんな風に考える人もいるのか……。
エルドなんて碌なものじゃないって思っていたのに、救われた人がいたなんて思わなかった。
「そういうわけだからさ、エルドみたいにとはいかないけど、俺は魔法使いになっていっぱい稼いで、家族を楽にしてやりたいんだ!」
「ケフィンならできそうですね」
笑顔で言えば、ケフィンは照れたのを隠すようにニカッと笑った。
そこでこちらにやってきたのは、ブルーノだ。
ケフィンの隣にいたエーベルトの横に座った。
「エーベルト……見ろ……」
ブルーノの手元を見れば、小さな結界が発動した。
みんなで感心していた。
やっぱりブルーノは優秀だ。
「ブルーノはすごいね。僕はできそうにない……」
エーベルトは、唸りながら自分の魔法陣に魔力を込めるけれど、何も反応しない。
「い、いや……お前は……俺が……守る……から……っ」
ブルーノが顔を赤くしながら、小声でボソボソと言っているのが聞こえてきて、ケフィンとメルフィスで顔を見合わせた。
どちらかと言うとブルーノが守られる方では……?
エーベルトは、魔法陣に夢中でブルーノの言葉を全く聞いていない。
「お、おい……エーベルト?」
「はぁ~……やっぱりできないや。僕もブルーノみたいにできるように頑張るね」
「お、おう……っ!」
ブルーノは、全然気付かれてなくてちょっとヤケクソっぽかった。
しょんぼりしながら元いた席に戻っていく。どんまい!
授業も終わる頃に、リンゼイは最後のまとめをする。
「結界の魔法陣の役割は範囲の変更だけだ。強度は守りたいという気持ちで変わる。魔力の消費もその分変わる。自分の限界を知って自分のできる範囲で使うように。結界ができた人は、その感覚を忘れないで。できなかった人は、防御魔法の復習をしておくように。結界ができないからと悲観しないで。防御魔法は結界だけではないからね」
はーいと返事をすれば、授業が終わった。
リンゼイが職員室に戻ってしまう前に慌てて後を追おった。
「せ、先生! リンゼイ先生!」
廊下で呼び止めて、こちらを振り向いたリンゼイは、俺を見て嬉しそうに満面の笑顔を見せた。
トスッ──。
胸に矢が刺さった。予想外の会心の一撃に心臓はキュンとしたし、顔に全身の血液が集まったみたいに熱い。
か、かわいい!
まるでご主人様を見つけた忠犬みたいに可愛く見える。
胸がバクバクしてる!
「ディノ。どうしたんだい?」
ニコニコして甘い声で名前を呼ばれて腰が砕けそうだった。
俺は何しに来たんだったか!?
「あ、あの……その……そ、それ……」
言葉が上手く発せられない!
「リンゼイ先生、ちょっといいですか?」
薬学のトマス先生が別方向から声を掛けた事で顔を逸らされた。
「おや? リンゼイ先生、何か嬉しそうですね」
「そうですか?」
「なんだか可愛らしいですよ」
可愛い──俺が言ってやりたかった! 言えないけど……。
「え……やだなぁ……すみません」
顔を手で隠すように照れたリンゼイに胸がもやっとした。
俺以外にそんな反応をするな。
誰にもあの顔を見せんな──。
そんな独占欲が湧いてきて苦い思いをする。
「それで、ディノ。どうしたの?」
トマス先生がいる前じゃ話せないか。
「あ……いや。すみません。肩にゴミが……」
肩についたゴミを振り払うふりをしてちゃっかり触る。一回じゃない。トントンと二回だ。
「ディノ。ありがとう──」
リンゼイはまたも照れたような嬉しそうな顔を俺に向けてから、トマス先生と話しながら行ってしまった。
脱力してしゃがみ込む。
「なんだよ……あいつ……」
あんな顔を向けられたら俺の心臓がもたない。
熱い顔が冷めるまで教室に戻れなかった。
それからも、どうにかして話したいのに話すきっかけがなかなか掴めなかった。
──────────
※防御魔法学クイズ(読み飛ばして問題ないよ)
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答え・③エーベルト ブルーノ、頑張れ!
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