大魔法使いは二度目の人生を〝普通〟に楽しみたい

おみなしづき

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入学後

長期休み ①

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 三年に上がる前に長期休みがある。
 寮のメンバーは、里帰りするそうだ。

 俺はというと──。

 外出届を出して、買い物に来ていた。
 リンゼイも一緒に来てくれていた。

「リンゼイ先生、買い物に付き合ってもらってすみません」
「いいよ。買い物はあまりした事がないだろう?」
「はい! 先生が頼りです」

 一人じゃ心細く思っていたのをリンゼイに相談したら、一緒に来てくれる事になった。
 
「目当ての魔道具を探しに行こうか」
「はい!」

 アンジェが、帰ってこないなら俺と話したいと手紙で言ってきた。
 そこで離れていても会話ができる通話機を買いに行く事にした。

 街はたくさんの露店が出ていて行き交う人々が忙しそうに通り過ぎていく。
 エルドが街に行ったのは学院にいた時だけだ。
 ワクワクする。

「ディノ。こっちだよ」
「あ。はい」

 慌ててリンゼイについていく。

 魔道具を売っている店は、王家が管理していて大型店舗だ。
 出入り口は大きくて、観音開きのドアは開けっぱなしで中が賑わっているのが見えた。

 魔石のはめ込んである腕輪や指輪が並んでいて、用途によって使い分ける。
 魔法使いは、そのまま魔法陣に魔力を流せば大抵の魔道具が使える。

 それ以外の一般人は、魔石を使って魔道具を使う。魔石を体に触れされて自分の体を媒介にして魔法陣に魔力を通すのが基本だ。
 魔石と魔法陣が体のどこかに触れていればいい。
 大抵の魔道具は、魔法陣の近くに魔石を嵌め込んで手を握れば両方に触れる仕組みになっている。

「あ、これ。こんなに種類があるんですね……」
「ああ。服洗浄機だね。寮にも全室導入されてるね」

 服洗浄機は、エルドの身の回りの世話をしていたリンゼイに、負担を掛けないように開発した。
 使い方は簡単。腰ぐらいまである箱型の入れ物に服と薬師の作った洗剤を入れて、魔石から魔力を魔法陣へ流す。そうすると、水魔法が発動して勝手に服を洗浄してくれる。

 さすがに干すのは手作業だけれど──髪乾燥機の応用で服乾燥機もできちゃうんじゃないか? なんて考えたりして。

 リンゼイの案内で、たくさんの指輪が売っている場所に来た。
 全部の指輪はペアで箱型のケースに入れられていた。
 エルドが作ったのは一種類だけだったけれど、かなり改良されたようだ。

 いつでもリンゼイの声が聞けたらいいと思って作った魔道具だ。
 指輪の裏面に魔法陣を刻んで魔石を上につけてある。
 話したい時は、魔法陣自体には常に肌が触れているので、魔石の方に触れてしばらくすれば、魔法陣が反応する仕組みだった。

「長時間話すなら、こっちの大容量がオススメだよ」

 気さくな店員に勧められたけれど、値段がそこそこ高い……。
 一般人の一ヶ月の給金ぐらいする。
 魔道具を一般人にも、なんて言っているが、どの魔道具も明らかに高級志向だ。
 量産するには、魔法使いの数がまだまだ少ないのだろう。

 俺は容量の小さいものを選んだ。
 容量は、魔石に魔力が込められている量だ。
 魔石に魔力が無くなれば、魔法使いなら魔力を込めればいい。けれど、それ以外の人は魔石屋で魔力を補充してもらわないといけない。
 アンジェには悪いけれど、とりあえずはこれで我慢してもらおう。

「リンゼイ先生も何か買ったんですか?」
「うん」

 俺が買い物をしている間にリンゼイも買い物をしていたらしい。荷物が増えていた。
 店を出て、二人で学院に戻る途中で露店のアイスクリームを見つけた。

「リンゼイ先生! これ、食べませんか!?」
「ふふっ。いいよ。チョコでいいかな?」
「大好きです!」

 目の前にあるのは溶けないアイスクリーム。
 氷魔法を使って作ったアイスに『冷え冷え草』が練り込まれている。
 いつまで経っても冷たくて溶けないアイスクリームはお土産にも人気がある。
 魔法使いの森で取れる植物(魔物)にはそういった不思議な物が多い。

 甘いアイスを食べながら、二人で並んで歩く。
 こんな風に街を歩くことができるなんて思ってもいなかった。
 こんな普通の日常に憧れていた。
 それができている今が本当に尊く思える。

「リンゼイ先生……僕とずっと一緒にいてくれるんですよね?」

 ふと問いかけてみた。
 リンゼイは、笑顔で頷いてくれる。

「もちろん」
「卒業しても……?」
「うん。卒業してもね」

 純粋に嬉しかった。

     ◆◇◆

 指輪は一つはアンジェに宅配で送った。
 届いたらすぐに使ってきそうだ。
 着信が来れば魔法陣が光るので目の届く所に置いておこう。
 寮に着いて、部屋に入る前にリンゼイに呼び止められる。

「これ、ディノに」

 リンゼイに手渡されたのは、さっきと同じ通話機の指輪だった。
 小指に嵌めるほどの小さな物だけれど、魔力がある俺たちには丁度いい。

「な、なんで!?」
「何かあった時は使って。部屋にいる時なら話せるから」

 その指輪をギュッと握った。

「違うな……何もなくても使っていいよ」

 少し恥ずかしそうに言い直したリンゼイに胸の奥が疼く。

「ありがとう……ございます……」

 感激している自分がいる。
 リンゼイは、俺に優しい笑顔を向けて自分の部屋に戻っていく。

 いつも騒がしい部屋が一人だとやけに広く感じる。

 久しぶりの一人……いつもみんなで食べていた食事が一人だと味気ない気がする。
 一人は慣れていたはずなのに、こんなにも寂しかったかなぁ……。
 風呂に入ってあとは寝るだけになった。

 ベッドに入る前にリンゼイからもらった指輪を指に嵌めた。
 そのままベッドに横になって指輪を見つめていた。
 それをじっと見ていたら嬉しくなる。
 それと同時に使いたくなってきた。

 今は部屋にいるだろうか?

 悶々と考える。
 今日は出かけてきたばかりだ。
 それなのに、もう使うとか……迷惑かな……でも、声を聞きたい。

 かなり悩んでから、深呼吸をして魔石に触れた。
 向こうは指輪をつけていなくても、指輪の魔法陣が反応して光っているはずだ。
 気付いてくれただろうか?
 実際にはそれほどの時間は経っていなくても、待っている時間が長く感じる。

『──ディノ?』

 指輪から声が聞こえた!

「リ、リンゼイ先生?」

 声が少し上擦った。

『どうしたの?』
「あの……眠れなくて……」

 あ。嘘ついちゃった。
 声を聞きたかったなんて言えない……。

『そっか。何か話そうか?』

 声だけでもリンゼイの優しさを感じれる。

「何をしてたんですか?」
『お風呂に入って上がったところだよ』
「もう寝ますか……?」
『ふふっ。ディノが寝るまで寝ないよ』

 なんだよそれ……そんな事言ったら徹夜になるぞ……。

「三年生が休みでも、リンゼイ先生は授業があるんですよね?」
『うん。一、二年生は休みではないからね』

 何気ない会話が続く。
 やばい……声を聞いたら会いたくなった……。

「あの……少しだけ……会えませんか?」
『…………』

 沈黙はしないで欲しい。
 まずったかな……。
 これって顔が見えない分、不安が募る。

「ダメなら──」
『いいよ。ディノの部屋に行くよ』

 部屋!?

「いいんですか……?」
『うん。生徒は外出禁止だからね。それに、三年生の寮で残っているのは数人しかいない』
「わ、わかりました!」
『すぐに行くよ』
「待ってます……」

 通話を切れば、段々と胸の鼓動が速くなってくる。
 今更ながら大胆な事をしてしまった気がする。

「ど、どこで待っていようか……」

 ベッドから起き上がってあちこちウロウロする。
 ソワソワと落ち着かなくて座っては立ってを繰り返す。

 すると、遠慮がちにコンコンとノックの音がしてビクッとした。
 慌ててドアを開ければ微笑むリンゼイがいて、嬉しいのを誤魔化せなかった。




──────────────




※魔道具クイズ(読み飛ばしOK)

今日の出題者はベルナルド先生です。

「よーし、お前ら。魔法の属性は覚えてるだろ? 問題だ。通話機の魔法陣は何魔法の応用なのか? わかったら手を上げろよ~」

①火魔法
②風魔法
③土魔法
④恋の魔法



「答えは②の風魔法だ。音の振動を魔法陣を通して伝えているんだ。間違ったやつは訓練場集合だからな~。俺がみっちり補習してやる(ニヤリ)。④は作者の友人が言っていた言葉を借りたらしい。④を選んだ人は、俺的には……その……好きだ……♡ ──意外だと!? そう思ったやつも訓練場な! 俺は、恋はしたい方だぞ!」

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