大魔法使いは二度目の人生を〝普通〟に楽しみたい

おみなしづき

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入学後

アンジェと話そう

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 マベルは、帰るという日にわざわざ俺を呼び出した。

『あなたは普通の魔法使いになるんでしょう? それって僕よりって事ですよね? 卒業したら城の魔法使いになったらどうですか? 僕のとして毎日可愛がってこき使ってあげますよ。ああ……君はこのまま卒業したら、二つ星の魔法使いでしたね。城の魔法使いになるには四つ星以上が必須でした。君にはですね』

 ニコニコとものすごい笑顔で言われたけれど、言葉の端々に棘を感じる……。
 目の前に目的地があるのにその周りを三周ぐらい遠回しに、俺の事はバラさないと言われているような気がした……気のせいかもしれないけど……。

 その後の俺の学院生活は順調だった。
 けれど、リンゼイとは二人きりで会えていなかった。
 通話機も同室のみんながいる前では使っていない。向こうから来る事も勿論ない。
 放課後思い出の場所で待っているけれど、忙しいらしく来れないようだ。

 それでも今日もまた待っている………………乙女か……。

 みんなに迷惑をかけた手前、外出禁止のギリギリまで待つのはやめた。だから余計に会えないんだろう。

 寮の部屋で風呂上がりにみんなで寛いでいると通話機が光っていた。

「あ。弟からだ」
「ディノって弟いたんだな! 俺も話したい!」
「僕も!」
「俺もいいか?」

 ケフィン、エーベルト、メルフィスが目を輝かせていて断れなかった。

「紹介するまでは待っていて下さいね」

 コクコクと無言で頷く三人。
 指輪をはめて魔石を触った。

「アンジェ?」
『兄様! こ、これありがとうございます!』
「ああ。届いたらすぐに使うかと思ったけれど、そうでもなかったね」
『だって……兄様にもらったものだったのでしばらく飾って眺めていました……』

 おいおい。使えよ。

『兄様、お元気でしたか?』
「元気だよ。アンジェはどう?」
『僕も元気です! 家の事は心配しないで下さいね! 最近は、父様のお仕事を少し手伝っています!』
「そう。アンジェは立派になったね」
『はい!』

 アンジェの嬉しそうな声を聞くとこちらも嬉しくなる。
 一緒に暮らしていた時のようにアンジェのお喋りに相槌を打つ。
 すると、みんなが俺の方に近付いてきた。
 早く紹介してくれと顔に書いてある。

「僕と同室の仲間がアンジェと話したいって」
『僕とですか!? 光栄です!』

 みんなの顔がパッと笑顔になる。

「まずは俺! 俺は、ケフィン・フリューリンだ! よろしくな!」
「僕は、エーベルト・ドナフだよ。よろしくね」
「俺は、メルフィス・トランダムだ。よろしく」
『あ、あの、皆様、こんばんは。僕は、アンジェ・バスカルディと申します』

 恥ずかしそうなアンジェにクスクスと笑う。
 指輪の向こうでお辞儀をしていそうだ。

「そんなに緊張しなくていいよ。みんな気軽に話せるから」
「ディノは家でどんな感じなんだ?」

 ケフィンが話してくれる。

『兄様は、とても優しいです。カッコよくて綺麗な人です。僕の憧れです』

 みんなににんまりと笑われて目を逸らす。

「アンジェ……あまり恥ずかしい事は言わなくていいから……」
『恥ずかしくありません。本当の事です』

 余計恥ずかしくなったな……。 

『学院での兄様は、どんな感じですか?』

 ケフィンがニヤリと笑う。

「意地悪。悪戯好き」

 おいおい。ケフィン。
 まだ今の所、アンリ先生とケフィンにしかそういう事はしていないはず。

「みんなに迷惑掛ける事が多いかな」

 エーベルト……笑顔で意外とはっきり言うんだよね。
 確かにスライムまみれにしたり、ビーカー割ったり、外出禁止破ったり……。

「班の課題は押し付けられる……」

 しょうがないじゃん!
 メルフィスの方が魔法上手いんだから!

「君たち……それ以上言ったら弟と話させませんからね」

 アンジェの俺への印象が変わってしまう!
 目を細めてみんなに言えば、アンジェの笑い声が聞こえた。

『ふふっ。兄様が楽しそうで良かったです』

 アンジェの声にみんな癒された。

「今度修学旅行があるからさ、お土産買ってもらえよ」
『そうなんですか!?』

 ケフィンの言葉にアンジェが楽しそうにする。

「そうだよ。ラクノーヴァへ行く予定なんだよ」
『え? ラクノーヴァって大丈夫なんですか?』

 エーベルトから国名を聞いて、先ほどと違う声音に変わる。
 確かに敵国だったし、魔物が出てた所だから心配なんだろう。

「大丈夫だ。俺たちにしかできない仕事をしに行くんだ」
「そう! それが終われば自由だからな!」

 メルフィスが言えば、ケフィンが得意げに言った。

「ラクノーヴァへ侵攻していた魔物を結界で遮ったのはアンジェも勉強してるよね? その魔石に魔力を込めに行くんだよ。数人の魔法使いと僕たち見習いの三年生が毎年魔力を込めて結界を持続させているんだそうだよ」

 最後のまとめはエーベルトだ。
 この前の魔石の授業は、この修学旅行の一環でもあったらしい。

『へぇ……すごいですね』

 その魔石は、かなり大きい岩みたいな魔石だ。

「その結界ってエルドが描いたらしいんだ! 円じゃなくて、魔石から魔石へ繋がっている魔法陣らしいぜ! 俺はそれが見れるのも超楽しみ!」

 ケフィンが興奮気味に言う。そういえば、ケフィンはエルドを尊敬してたんだった。
 確かに俺が魔法陣を描いた。その魔法陣も雨や風で消えないように魔石を粉にして水を混ぜて、ペーストにして描いたんだ。そうすることで魔法陣自体が岩の魔石と繋がった。
 あの時、一週間掛けてやっと魔法陣を描いたんだったな……。

 その間、近くの村にお世話になっていたけれど、ラクノーヴァの人たちは俺を歓迎していなかった。
 守ってやろうって言うのに「人殺し」だとか「化け物」だとか散々言われた。
 悪口自体は本当だし、ラクノーヴァの人たちからしたら当たり前だったから、言いたい事だけ言わせていたんだったな……。
 俺自身は気にしてなかったけど、一緒に派遣されていた魔法使いや騎士は怒ったりして揉める事が多かった。
 今度の修学旅行では、そこでお世話になるらしい。
 その辺にあるようなのどかな村だったけれど、毎年トランダムの魔法使いが来てたりして大丈夫なんだろうか……。

『兄様、気をつけて行ってきて下さいね!』

 アンジェにお土産を買うと約束して数日後、俺たちの修学旅行が始まった。
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