男装の公爵令嬢ドレスを着る

おみなしづき

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婚約破棄の数日後

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 驚いたのは、婚約破棄をされて少ししてからだった。

 父が、私に手紙を持ってきた。
 婚約破棄が決まってから、渡されたり届いたらしい。
 それは、私に婚約を申し込む手紙だった。
 それだけでも驚きだったのに、婚約したいという手紙は三通もあった。

 父は歓喜していた。
 私にはもう縁談なんて来ないと思っていたらしい。

「アデル。この中から一人を選ぶんだ。どれも情熱的だぞ」

 私に三通の手紙を見せながらニヤニヤとしている。

「選ばないという選択は──」
「ない!」

 急に騎士として培った鋭い眼差しで睨みつけられた。有無を言わせないというのがヒシヒシと伝わってくる。

「お前をぜひにと望んでくれる人達だ。誰を選んでも構わん」

 確かにローマンのように無理矢理ではなく、私自身を望んで結婚してくれるのならば喜ばしいことだ。
 ローマンとの婚約があった事だし、結婚に興味はなくても結婚したくないわけではない。
 相手が私みたいな男装の令嬢でも良いという変わり者になるだけだ。
 今だって仕事をした後で、騎士服に身を包んでいる。

「決定したら、婚約の祝いとして舞踏会を開く。所謂いわゆる婚約式だ!」
「はぁ……」
「そこでお前はドレスを着て、婚約者にエスコートしてもらうんだ。皆にお披露目と行こうじゃないか。ローマン殿下の時は形式なんて関係ないと思っていたが、今度はきちんとしよう。その後の結婚式は最短で行うぞ」

 ニヤリと笑った父は、悪巧みをしている子供のようだった。
 これは、私もその相手の男性も外堀から埋めて、逃げられないようにしようということか……。
 とうとうドレスを着せられる。

「男装のままという選択は──」
「ない!」

 即答で言われてしまった。
 覚悟を決めるしかないんだろう。
 ドレスだなんて三歳ぶりかもしれない……。

 本当に着ないといけないのだろうか?
 結婚自体は問題ない。けれど、ドレスは女装した大男みたいに見えそうで怖いな……考えたくない。

 もしかしたら男装でも可能になるかもしれない。
 まずは、相手を決めるか……。

「では、手紙を読ませて頂けますか?」

 満面の笑みで手紙を渡してきた父に、これでもかとため息をついてやった。
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