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無防備でございます
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「煌麻様……私に全てを委ねて下さい……」
「崇臣……さっさとやれ……」
「煌麻様は動いたらいけません……大事なお体に傷が付いてしまいます……」
真剣な眼差しで煌麻様を見つめて優しく髪に触れる。
──今現在、私は煌麻様の髪を切っている。
「ああ……煌麻様の髪……勿体無いですね……」
ジョキジョキとハサミで切れば、髪がハラハラと落ちていく。
いつも切る時は、勿体無いと思う。
けれど、私が欲しいのは煌麻様の一部だった物じゃなく煌麻様自身だ。
煌麻様もじっとしていてくれるので、あっという間に髪を切り終わりそうだ。
煌麻様の正面に回ってニッコリと笑う。
「前髪を切りますので、目を閉じて下さい」
煌麻様は、私に言われた通りに目を閉じる。
嬉しくなると共に心配にもなる。
これが私じゃなくても、こんな風に目を閉じてじっとしているのだろうか?
閉じられた瞼にキスしたい。
柔らかそうな唇に目がいった。
このままキスしたら──真っ赤になって慌てるだろうな──想像は膨らむばかりだ。
「崇臣? まだか?」
天使のような顔をじっくりと眺めてしまっていた。
「煌麻様は──本当に無防備ですね……」
こんなに顔を近付けても気付かない──。
「何を言っているんだ? さっさと切れ」
「はい。そのままでいて下さいね──」
そっと前髪を持ってゆっくりとハサミを入れた。
ジョキンジョキンとハサミの音だけが室内に響く。
「もしも、私が殺し屋でしたら──煌麻様はこのまま殺されても文句は言えませんね」
「お前……ハサミを持ちながら言う事か?」
眉間に皺を寄せられた。
悪い冗談を言うなとでも思っているんだろう。
面白くてクスクスと笑う。
「馬鹿か。お前だからずっと目を閉じていられるんだ」
「──……」
煌麻様の髪を切っているのに手が震えてしまいそうだ……。
この人は……無自覚に私を翻弄する……。
「このままこのハサミで煌麻様の心臓を一突きしたら……煌麻様は永遠に私のものになりますか──?」
永遠に私のものにしたい──。
こんなにもあなたを想う私を許して欲しい──。
「本当に馬鹿なのか……逆だろう。死んだら永遠に崇臣のものにならなくなる。なぜなら僕は、崇臣のものではないからな」
心臓がギュッと鷲掴みにされた。
「──ふふっ。さすが煌麻様ですね」
高貴で洗練されていて汚れを知らない。
私は煌麻様のこういう所に惹かれている。
そうだ。煌麻様は、まだ私のものではない。
このまま死なれたら困る。煌麻様に死んでほしいだなんて微塵も思っていない。
むしろ──私のものになった煌麻様の隣にずっといられたらどんなに幸せか──。
ジョキンッと最後のハサミを入れれば、目を閉じた煌麻様の顔をまた眺めた。
「あまり意味のわからない事を言い出すな。ただでさえ崇臣はよくわからないのに……」
私なんて単純だ。ただ煌麻様が欲しいだけだ。
私はもうずっと煌麻様のものだ。だから、煌麻様を私のものにしたいと思うのは自然な事だ。
それにしても、眉間に皺を寄せる煌麻様も天使みたいだ。
「崇臣? そんな事より終わったのか?」
「まだ目を開けてはいけません」
もう少し、その無防備な煌麻様を眺めていたい──。
「まだなのか? 遅いぞ」
それならば、と顔をそっと撫でる。
「お顔に付いた髪を払います」
優しく……時間を掛けて……ゆっくりと髪を払う。
目元やおでこ、はな、頬など、顔中をゆっくりと撫でる……。
ほら……ほんのりと頬を染めて、私の手を意識し出している。
最後に唇をスーッと指先で撫でれば──真っ赤に染まった。
「は、早くしろ……」
耐えられなくなったらしく、そんな事を言いだす。
なんて可愛い──でも、我慢しなくては──。
「──……終わりました」
目を開けた煌麻様に何事もなかったかのようにいつもの笑顔を向けて片付けをする。
煌麻様は、目の前の大きな鏡に映る自分の姿を見て呟いた。
「悪くないな」
これは気に入っているらしい。
「ふふっ。お褒めいただきありがとうございます」
「別に褒めてない……悪くないと言っただけだ……」
背後から見える煌麻様の耳が赤い。
なんてわかりやすいお方だ。
「切った髪が残っていたら、体が痒くなってしまいます。ご入浴の準備はできていますのでバスルームへ行きましょう」
今度は煌麻様をバスルームへと誘導した。
「崇臣……さっさとやれ……」
「煌麻様は動いたらいけません……大事なお体に傷が付いてしまいます……」
真剣な眼差しで煌麻様を見つめて優しく髪に触れる。
──今現在、私は煌麻様の髪を切っている。
「ああ……煌麻様の髪……勿体無いですね……」
ジョキジョキとハサミで切れば、髪がハラハラと落ちていく。
いつも切る時は、勿体無いと思う。
けれど、私が欲しいのは煌麻様の一部だった物じゃなく煌麻様自身だ。
煌麻様もじっとしていてくれるので、あっという間に髪を切り終わりそうだ。
煌麻様の正面に回ってニッコリと笑う。
「前髪を切りますので、目を閉じて下さい」
煌麻様は、私に言われた通りに目を閉じる。
嬉しくなると共に心配にもなる。
これが私じゃなくても、こんな風に目を閉じてじっとしているのだろうか?
閉じられた瞼にキスしたい。
柔らかそうな唇に目がいった。
このままキスしたら──真っ赤になって慌てるだろうな──想像は膨らむばかりだ。
「崇臣? まだか?」
天使のような顔をじっくりと眺めてしまっていた。
「煌麻様は──本当に無防備ですね……」
こんなに顔を近付けても気付かない──。
「何を言っているんだ? さっさと切れ」
「はい。そのままでいて下さいね──」
そっと前髪を持ってゆっくりとハサミを入れた。
ジョキンジョキンとハサミの音だけが室内に響く。
「もしも、私が殺し屋でしたら──煌麻様はこのまま殺されても文句は言えませんね」
「お前……ハサミを持ちながら言う事か?」
眉間に皺を寄せられた。
悪い冗談を言うなとでも思っているんだろう。
面白くてクスクスと笑う。
「馬鹿か。お前だからずっと目を閉じていられるんだ」
「──……」
煌麻様の髪を切っているのに手が震えてしまいそうだ……。
この人は……無自覚に私を翻弄する……。
「このままこのハサミで煌麻様の心臓を一突きしたら……煌麻様は永遠に私のものになりますか──?」
永遠に私のものにしたい──。
こんなにもあなたを想う私を許して欲しい──。
「本当に馬鹿なのか……逆だろう。死んだら永遠に崇臣のものにならなくなる。なぜなら僕は、崇臣のものではないからな」
心臓がギュッと鷲掴みにされた。
「──ふふっ。さすが煌麻様ですね」
高貴で洗練されていて汚れを知らない。
私は煌麻様のこういう所に惹かれている。
そうだ。煌麻様は、まだ私のものではない。
このまま死なれたら困る。煌麻様に死んでほしいだなんて微塵も思っていない。
むしろ──私のものになった煌麻様の隣にずっといられたらどんなに幸せか──。
ジョキンッと最後のハサミを入れれば、目を閉じた煌麻様の顔をまた眺めた。
「あまり意味のわからない事を言い出すな。ただでさえ崇臣はよくわからないのに……」
私なんて単純だ。ただ煌麻様が欲しいだけだ。
私はもうずっと煌麻様のものだ。だから、煌麻様を私のものにしたいと思うのは自然な事だ。
それにしても、眉間に皺を寄せる煌麻様も天使みたいだ。
「崇臣? そんな事より終わったのか?」
「まだ目を開けてはいけません」
もう少し、その無防備な煌麻様を眺めていたい──。
「まだなのか? 遅いぞ」
それならば、と顔をそっと撫でる。
「お顔に付いた髪を払います」
優しく……時間を掛けて……ゆっくりと髪を払う。
目元やおでこ、はな、頬など、顔中をゆっくりと撫でる……。
ほら……ほんのりと頬を染めて、私の手を意識し出している。
最後に唇をスーッと指先で撫でれば──真っ赤に染まった。
「は、早くしろ……」
耐えられなくなったらしく、そんな事を言いだす。
なんて可愛い──でも、我慢しなくては──。
「──……終わりました」
目を開けた煌麻様に何事もなかったかのようにいつもの笑顔を向けて片付けをする。
煌麻様は、目の前の大きな鏡に映る自分の姿を見て呟いた。
「悪くないな」
これは気に入っているらしい。
「ふふっ。お褒めいただきありがとうございます」
「別に褒めてない……悪くないと言っただけだ……」
背後から見える煌麻様の耳が赤い。
なんてわかりやすいお方だ。
「切った髪が残っていたら、体が痒くなってしまいます。ご入浴の準備はできていますのでバスルームへ行きましょう」
今度は煌麻様をバスルームへと誘導した。
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