攻め×攻め事情

おみなしづき

文字の大きさ
10 / 22

夏の思い出

しおりを挟む
 みんながいる前で美羽と仲良くはできない。
 それでも、美羽が近くにいるというだけで気分は良かった。

「行きまーす!」

 みんなはビーチボールを打ち合っていた。

「負けた方がかき氷奢りね!」

 砂浜に書いた線を頼りにビーチバレーで盛り上がっていて楽しそうだ。
 近嗣は、その光景を見ながら座り込んでいた。

「糸崎さんはやらないんすか?」

 聡が声をかけてきて首を振る。

「俺はいい……」

 何かの拍子でこれ以上みんなに怖がられるのは嫌だった。

「んじゃ、俺もここにいていいっすか?」
「遊べば?」

 聡を自分に付き合わせるわけにはいかないと近嗣は思う。

「わかってないなぁ。糸崎さんの隣に居たいんすよ」

 ニカッと笑う聡に、近嗣は思わずフッと釣られて笑う。

「糸崎さんの貴重な笑顔! へへっ」

 聡は嬉しそうにして近嗣の隣に座る。
 一方的に喋る聡に時々相槌を打つ程度なのに、何が楽しいのか、聡は終始ご機嫌だった。
 近嗣もそんな聡に時々気が緩んだようにフッと笑う。

「それで、クラスのやつが──ぶはっ!」

 話している途中で、聡の所にビーチボールが飛んできて聡の頬にバシンッとぶつかってしまう。

「誰だっ!? 今のボール打ったの!」

 聡は頬にぶつかったビーチボールをガシッと掴んで立ち上がった。

「悪い。僕だ──」

 スッと手を挙げたのは美羽だ。

「この野郎!」
「手元が滑ったんだ。謝っただろう?」

 ニコッと笑顔なのに、冷たさを含む笑顔は美羽の機嫌が悪いのだと周りに伝わってくる。
 平気でいられるのは、近嗣と鈍感な聡ぐらいだ。

「信谷くんだったか? 君もやったらどうだ?」
「上等だ! 返り討ちにしてやる!」

 聡が勢い込んでコートに入れば、美羽に集中的に狙われて、クタクタにさせられていた。

     ◆◇◆

 お昼過ぎになれば、パラソルの下で昼寝する人が多数だ。

(あれだけはしゃげばね……)

 近嗣は、苦笑いしつつ眠っているみんなを眺める。
 起きているのは、近嗣と美羽と会計の橋蔵はしくらだけだった。
 聡は特に疲れているのか熟睡していて近嗣はクスリと笑う。

「橋蔵くんは眠くないのか?」

 美羽の問いかけに橋蔵は頷いた。

「会長、僕は体育会系じゃないんです。みんなに付き合ってられません」

 見た目からしても、橋蔵は家からでなそうだ。

「なるほどね。それでも一緒に来てくれたんだろう?」
「まぁ……副会長に強引に……」

 照れた橋蔵を見れば、生徒会の仲の良さがわかって微笑ましい。

「それなら、今のうちにみんなの分の飲み物でも買ってくるとしよう」
「僕、重い物も持てないですが……」
「ああ。わかってるよ。糸崎くん、手伝ってくれるだろう?」

 美羽が近嗣に視線を寄越す。
 近嗣はコクリと頷いた。

「それじゃ、僕は糸崎くんと行ってくるから、橋蔵くんはみんなの事をよろしく」
「はい」

 近嗣は、美羽の後を付いていく。
 みんなとある程度離れたところで美羽が隣に並んできた。
 近嗣を見てニヤリと笑う。

「チカ、少し二人で遠回りでもするか?」
「いいの?」
「ああ。僕も二人で話したかったからな」

 近嗣は、美羽の言葉にウキウキとする。

「──うん……その顔は僕にだけ向けられる顔だな……」

 近嗣は、美羽が言った言葉に首を傾げる。

「おい。なんで不思議そうなんだ……僕だってやきもちぐらい──」

 美羽はそこまで言って顔を赤くして近嗣から視線を逸らした。
 そんな美羽が可愛いと思う。

「みぃちゃん、やきもちやいたの?」
「チカが──っ!」

 そこで一旦言葉を切った。
 美羽は、ニコニコする近嗣に真っ赤になりながら小声で話してくれた。

「……信谷と楽しそうに話してるからだろ……」

 聡と話していたのが気に入らなかったらしい。
 もしかして、あのビーチボールはわざとなのかと思うと、自然と近嗣の顔がニヤける。

「みぃちゃん……」
「その顔やめろ」
「どんなの?」
「嬉しそうにするなって」

 近嗣がクスクスと笑えば、美羽は恥ずかしそうだ。
 そんなやり取りをするのが楽しかった。
 綺麗な砂浜と青い空と海。そこに美羽と二人で歩いているのだ思うと近嗣の胸は期待に膨らんだ。
 それは、美羽も同じだ。

「チカ……こっち」

 美羽に腕を掴まれて、人のいるビーチとは逆の方へグングン引っ張られた。
 近嗣と美羽は、誰にも見つからないような影になった岩影で二人きりになった。

 絡まる視線がお互いの気持ちを昂らせていった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】出会いは悪夢、甘い蜜

琉海
BL
憧れを追って入学した学園にいたのは運命の番だった。 アルファがオメガをガブガブしてます。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!

BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!

過保護な義兄ふたりのお嫁さん

ユーリ
BL
念願だった三人での暮らしをスタートさせた板垣三兄弟。双子の義兄×義弟の歳の差ラブの日常は甘いのです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

処理中です...