転生ロリ王女は脳筋王子をおとしたい

須田トウコ

文字の大きさ
8 / 55

ロリは放置された

しおりを挟む
 
 次にライネベルテが目覚めた時、彼は既にいなかった。
「あれ?誰か側にいたような気が…そうだ、一房だけ長くて赤い髪の、すんごいイケメンに…」
 その時、ぐううっとお腹が鳴る。

「あーあ、なんだかお腹空いちゃったわ。早くおウチ帰ってご飯食べたい…。
 ルル姉様、どこへ行っちゃったんだろ…」
 そう言って、辺りをキョロキョロするのだった。




・・・・・・・




 リリディエラが王のいる部屋を訪れると…そこにはドルーガ、そしてナッジがいた。慌てて挨拶をする。
「まぁドルーガ様にナッジ様…でしたわね?こんな所で何を…」
「吾輩がお呼びしたのだ、今後の事で少し相談しようと思ってな。
 ところでルルよ、お前が戻ったと言う事は…彼の容体は安定したのだな?」

 王に聞かれ、笑顔で答える。
「ええ、何とか。命に別状はございませんわ。ただいくつか細かい神経が切れたままです。骨折もしているし…少し静養が必要ですわ」
「そうか、では彼にはマルロワの温泉療養地へ招待しよう。
 彼が粘って戦ってくれたおかげで、バルドという男の怪しさに気付いたのだからな」
 バルドという単語に、リリディエラの顔が曇る。

「やはりお父様も怪しいとお思いですか?」
「うむ。吾輩はアイシス国王カイザーと一緒に観戦していたがな、ヤツも疑っておった。
 それにヤツの部下が早馬で来てな。この間の謎の発光現象の元であろう球体が、アイシスの城内に出現したと報告してきたのだ。
 バルドと関係しているかはわからんが…何か嫌な予感がしてな。カイザーは急いで国に戻った、何かあれば知らせが来るだろう」

「まぁ、アイシスでそのような事が…。
 では明日の決勝戦はどうしましょう?彼の素性がわかるまでは延期にしますか?それともドルーガ様には棄権を…」
「オラは棄権する気はないぞ。それにマルロワでの滞在期間も決められているから、延期もナシだ」

 二人の会話を遮るドルーガ。ナッジも驚いて嗜める。
「で、殿下?!あの男と戦うおつもりですか?いくら殿下が強いとはいえ…危険すぎます!」
「でもアイツ魔法とかは使ってねぇんだろ?単純に剣の腕が良いんだ。
 なら直接戦いながら、ヤツの真意をはかりゃいい。よーし、ワックワクしてきたぞ」
「………」

 あまりの楽観ぶりに、王と王女は呆気に取られている。ドルーガは「あ、でも」と付け加えた。
「一つ気になる事がある。調べたらバルドは確かに我がタナノフの騎士だった。
 でもヤツは絶対本人じゃねぇ、誰かが直接乗り移ってると思うんだ。それなら魔法とは違う類の術になるんだろ。
 …そういうのが見破れる人とか、いねぇのかな。マルロワに」

 ドルーガに問われ、王と王女はハッとして答えた。
「人を直接操る闇の気配、それを探知できる者…か。ああ、候補はいるな。吾輩の最も近くに」
「ええ、今は学校に行ってますが…明日、呼びましょう」
 思い当たる人物がいるらしい。二人は頷いた。

「決まりだな、じゃあ頼んます。
 オラは明日に備えて体を休めるか…行くぞ、ナッジ」
 ドルーガは一礼し、部屋を出る。

「え?!ああ待って下さいよ~殿下ぁ!」
 ナッジも王と王女に一礼し、あわててドルーガを追いかけていった。
 レイドラントは苦笑する。

「ハハハッ…少し脳筋っぽいのが気にはなるが…頼もしくて良い男ではないか。
 彼ならもし優勝しても、安心してルルを任せられるな」
「あ、お父様。その件ですが、わたくしはウルスト様と結婚しますわ」
「ハッ?!どういう事だルル?!!!」
 突然の娘の発言に、驚き声が大きくなるレイドラント。そこへもう一人の大声が響いた。

「あっ!ここにいた!!あたしを放置して…ルル姉様ひどいですわ!!」
 見ると、モチモチのほっぺたを最大限に膨らませた、ライネベルテがいた。
 リリディエラは内心、あぁ忘れてたと思いつつ弁解した。

「ごめんなさい。ドルーガ様が、倒れたあなたを運ぶと言ってくれたから…お任せしちゃっていたわ」
「ドルーガ様ってあのタナノフ国王子の?
 あたし以外誰もいなかったけど…あ、もしかして赤い髪の人かしら?」
「そうよ。ああ、お父様に呼び出されたから途中でいなくなったのね」
「あのお方がドルーガ様なのね…はぁ…素敵なお方だったわ…」

 ライネベルテは記憶を頼りに彼を思い出す。ポーっとして、うっかり思った事が口に出てしまった。すかさずリリディエラが反応を示す。
「まあ!ロリったら、ドルーガ様が好みなのね?!!!確かにあなたの好みにピッタリかも!
 わたくしったら何故気がつかなかったのかしら。そうすればもっと早く会わせてあげたのに!」

 はしゃぐリリディエラに、ようやくレイドラントが声を上げた。
「ルル!まだお前の話が途中だぞ!ちゃんと説明しなさい!
 ロリ!お前もだ!男に懸想するなんて…10年早いし…吾輩、泣いちゃう!!!」

 ポーっとする者、興奮する者、半泣きになっている者…
 王の部屋は、大変賑やかなのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された地味姫令嬢は獣人騎士団のブラッシング係に任命される

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 社交界で『地味姫』と嘲笑されている主人公、オルテシア・ケルンベルマは、ある日婚約破棄をされたことによって前世の記憶を取り戻す。  婚約破棄をされた直後、王城内で一匹の虎に出会う。婚約破棄と前世の記憶と取り戻すという二つのショックで呆然としていたオルテシアは、虎の求めるままブラッシングをしていた。しかしその虎は、実は獣人が獣の姿になった状態だったのだ。  虎の獣人であるアルディ・ザルミールに気に入られて、オルテシアは獣人が多く所属する第二騎士団のブラッシング係として働くことになり――!? 【この作品は、別名義で投稿していたものを加筆修正したものになります。ご了承ください】 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』にも掲載しています】

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...