転生ロリ王女は脳筋王子をおとしたい

須田トウコ

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ロリは父を身代わりにした

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 晩餐会の時間になった。ライネベルテは会場へと案内され、入室すると先にドルーガが着席していた。

「おう!こっちだこっち」
「ドルーガ様!遅くなり申し訳ございませんわ」
「いや、オラが時間前に来ちまっただけだから。腹が減ってさ。ほら、隣に座ってくれ。
 ええと…ドネルケバブ様?」

 …唐突なトルコ料理である。
 どうしてそうなった。
 彼女は笑いを堪えて訂正する。

「ぷふっ…ライネベルテですわ。発音しにくい名前でごめんなさい。ドルーガ様。
 でもどうぞ、ロリと呼び捨てにして下さいまし。我が国の王族は、皆愛称で呼び合いますのよ」
「そうか、悪いな。じゃあ…ロリ、こっちへ」

 そう促され、席に着いた。そして料理が運ばれてくる。
 さらに運ばれてきた途端にドルーガが食べ始めたので、ライネベルテは驚いた。

「あ、あのドルーガ様?まだ陛下がいらっしゃらないのですが…」
「ん?ああ、父上は用事があって少し遅れるってさ」
「そ、そうですか。でも先に食べてしまってよろしいのでしょうか?お待ちしていたほうが…」
「マルロワじゃあそうしてんのか。でもそれじゃあ料理が冷めちまうぞ。あったかいうちに食った方が絶対美味しいって。オラん所はそうしてるぞ」

 … 郷に入っては郷に従え、か。
 ライネベルテはそれ以上余計な事を言わずに、食べる事にした。

「で、ではロリもいただきますわ…。
 まあ!お魚料理があるわ。それにお肉料理も!美味しそう…!」
「マルロワの王女が来るって言うから、用意させたんだ。食べ慣れてるモンがあると食が進むだろ。
 そっちの肉料理は口に合うか?ってか、量は少なめにしたつもりだが…逆に少なすぎるか?」
「いえ、適量です。それにこのお肉!とても柔らかいのに脂身が少なくて食べやすい…味も勿論、絶品ですわ!」
「そうか!そりゃ良かった!」

 ニカッ、とドルーガは笑った。ライネベルテは思わず顔が真っ赤になる。
 マルロワではよく食べられる、お魚料理も用意してくれてたんだ。彼の思わぬ優しさに、さらに惚れてしまいそうだ。
 そんな相手の隣で美味しいご飯を食べる。こんな幸せな事があっていいのか。
 彼女は嬉しさのあまり、つい前世の事を思い出してしまった。

「ああ…昔を思い出しますわ…。
 一週間の仕事終わりに、ガッツリご飯を食べて口当たりのいい酒を流し込んで、クゥーッ!!最高!!って言って…」
「?ロリは酒を飲むのか?まだ未成年だよな?」
「いっ、いえ!…そう、お父様がよくおっしゃいますの…」
「へえ、レイドラント王が。あの方はまさに貴族!って感じの上品な人に見えたけどな。意外な所もあるんだな」
「え、ええ、まぁ…」

 …お父様、身代わりにしてごめんなさい。ライネベルテは遠く離れた父に懺悔した。





・・・・・・・




 少ししてから、ダンデがやってきて席に着いた。
「すまんな、遅くなった。お、今日も美味そうな料理だな!」
「すみません、先に頂いておりますわ」
「いいさいいさ!どうだ?美味いか?」
「はい、とっても!タナノフはお肉料理が美味しいと聞いておりましたが、本当ですね!ほっぺたが落ちそうですわ」
「カカッ!本当に落ちそうな位丸っこいの!いい食いっぷりだ」

 まるでリスの頬袋のようになっているライネベルテを見て、ダンデは笑った。
 つるりとした頭が眩しい。なぜ剃髪しているのかは分からないが、本来は彼もドルーガのような深紅の髪色だったのだろうか。ニコニコしながらドルーガに話しかけている。

「やはり野郎だけの食事より華やかになってエエな、女の子が居ると。なあ、ドルーガ」
「ん?ああ…まあそうかもな」

 一通り食したドルーガは、こめかみを掻きながら答えている。
 ライネベルテは今更ながら思った。男達だけの食事…そう、この国には王妃がいない。
 昔から父のレイドラントが何度かタナノフを訪れているが、王妃については何も話した事がない。
 頭の中で歴史書を開く。確かダンデ王は結婚したという記載がなかったはず。
 ドルーガは…庶子だった。なぜ彼の母親は王妃になれなかったのか。よほど身分が低かったのか。
 そもそも、今も生きているのか…?

 色々と考えている彼女の横で、彼ら二人の会話は続いていた。ハッとして我に帰る。

「なんだ?照れおって。そうだ、明日は城の周辺を案内してやれ。そこそこ景色はエエ筈だから」
「ああ、分かった。ロリは行きたい所とかはあるか?」
「いえ、タナノフには初めて来ましたので…何処でもいいですわ。きっと楽しいもの!
 お二人には改めて感謝致しますわ。滞在を許可して頂いて」
 ライネベルテは姿勢を正して、二人にお礼を言った。

「エエって事よ。ま、観光に来たつもりで気楽にいてくれ。何かあればなんでもドルーガに言うんだぞ」
「え、オラか?オラ鈍感だからなぁ…じゃあロリ、本当に何でも言ってくれよ。気ぃ利かせた事なんて全然できないからさ」
「ふふっ。はい、ありがとうございます」

 意外とって言ったら失礼だけど、結構気遣ってくれていますわよ?と密かに思うライネベルテだった。
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