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ロリは夜・・しかけた
しおりを挟む食事を終え、入浴を済ませたライネベルテはベッドでゴロゴロしていた。
「うーん、眠れないわ…家から本でも持ってくれば良かったぁ。城の書庫にお邪魔して借りたいけど、こんな時間じゃあね…」
寝返りをうって、ふと気付く。視界の端にもう一つ別のドアを見つけたのだ。
壁の色と同化していて分からなかった、それに先程は色々妄想していて気付いていなかったのだ。ベッドから降りて興味本位で近づき、そっと開けてみた。
こっそり入ったドア先の部屋は、暗がりで中央に大きなベッドがあった。側に蝋燭を灯し、休んでいたのは…
「ドフゥッ、ドルーガ様?!!!」
「ん?なんだロリか。まだ起きてたのか」
ガウン姿のドルーガだった。半身を起こし、本を読んでいた。
ライネベルテの筋肉サーチアイが、すかさずガウンからチラリと覗く大胸筋をとらえた。がしかし、すぐ我に帰る。
この状況、私に非がある。
「しししっ、失礼致しましたわ!誤解ですの、ドルーガ様がいらっしゃるなんて知りませんでしたの!
眠くなるまでちょっと探索~なんて軽い気持ちで…だから、よばっ、夜這いではございませんわ!な、何卒お許しをぉぉぉぉ!!」
突然土下座し、怒涛の勢いで必死に弁明するライネベルテに、ドルーガはポカンとして言った。
「?何か難しい言葉使ってんな?オラよくわかんねぇけど…眠れねぇのか?お前。じゃあコッチに来て一緒にコレ読むか?」
そう片手で本を掲げながら、反対の手で手招きした。混乱していたライネベルテは言われるがまま土下座を解放し、トコトコとベッドサイドまで近づいた。
「ほら…よっと」
「?!」
いつの間にか起き上がっていたドルーガに、急に抱っこをされストン、とベッド上に降ろされた。
「ちょうど良かった、読めない字があってな。読んでもらえるか?ロリはマルロワで優秀だったと聞いてたからな」
「よ、読むのは構いませんが…」
ライネベルテは動悸がおさまらない。何故なら…あぐらをかいたドルーガの上に乗せられたからだ。
(落ち着け、落ち着くのよ私…あれよ、きっと彼はおじいちゃんが孫を膝の上に乗せるような感覚で…うっわ!大腿筋最高ぉぉ!!!!ああ…もっと他の筋肉も触りたい…)
そんな、内心興奮している彼女とは裏腹に、ドルーガは後ろから覆いかぶさるようにして平然と本を開いて見せ、指をさす。
「ほら、ここの宝石の名前」
「え?!あ、ああこれは…コハク、ですわ」
「ああ、そうか!モノは知ってるが字はわからなかった。ありがとう、ロリ」
純粋に喜んでいる彼を見て、ライネベルテは急に自分の邪心っぷりが恥ずかしくなった。
何とか心を落ち着けて、本を見ようとする。宝石の絵が描かれていて、隣に説明文が載っていた。
「あら、これは…宝石の種類について書かれている本ですか?」
「ああ。正確には、ここタナノフ国で採掘できる鉱石が書かれているんだ。
オラも一応王族だからな。本物と偽物の区別くらいつくように、勉強しねぇとな」
「まあ!サファイアにルビーに…ダイヤ!ダイヤモンドだわ!こんなに多くの宝石が採掘できますのね。素敵…」
色々な宝石が載っているけど、やっぱりダイヤモンドがいいわ~。前世で憧れたもんね!と思っていると。
「うん?ロリはダイヤモンドがお気に入りか?…そうか、お前の瞳みてぇだもんな」
「え?!」
ライネベルテの目の色はグレーだ。マルロワ国では青い目が主だが、王族はさらに透き通る色をしている者が多い。姉兄も同じ色だ。
だから光を反射しやすく、キラキラとして見えると周りから良く言われる。
しかし、ダイヤモンドのようだとは初めて言われた。
(ドゥフフ!お前の瞳はダイヤモンド、ってか?何か似たような歌が昔あったわね。あ、ありゃ失恋ソングよ。やめとこう)
何だかとても嬉しくなり、ライネベルテは思わず振り向きドルーガをじっと見た。
「うふふ!ありがとうございます。
ドルーガ様も、素敵な翡翠色の瞳をされていますわね」
「ん?ヒスイ?」
「ほら、ここに載っていますわ。
この…宝石…と……」
本を指差しながら、また振り返り彼を見ると…キョトンとしている彼と、目が合った。
ライネベルテから思わず「あ…」と声が漏れる。
「…………」
「…………」
どれくらい、そうしていたのだろう。
ライネベルテはハッ!として目を逸らし、また本に集中しようとした。
「やっ、やだわあたしったら!殿方を凝視するなんてはしたない真似を…」
「ん?あ、ああ、別にいいさ。気にすんな。それより…もうそろそろ眠れそうか?」
ドルーガはこめかみを掻きながら聞いてきた。
「あっ、はい、そうですわね…もう自分の寝床へ戻りますわ。ドルーガ様はまだお読みになるの?」
「ああ。一日数分は何か本を読め、と父上から言いつけられているが…あまりに退屈で、大体秒で寝てる。
今日はロリがいたから、いつもより長く楽しく読めたよ。せっかくだからもう少しだけ頑張るか。ありがとうな」
「いえ、ロリも楽しかったですわ。では…おやすみなさいませ」
「ああ、おやすみ。また明日な」
そう言って、ライネベルテは自室へと戻った。
「ふふっ、いつもは秒で寝るなんて…想像できちゃう。ドルーガ様っぽいわね」
彼女はそのままベッドに入り、熟睡したのだった。
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