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ロリは聞こえなかった
しおりを挟む翌日。
今日も朝からムキムキメイドさん達に取り囲まれる。
タナノフ女性のモットーは、清く正しく美しく…そして強く!であるらしい。
そして若い女性は、リボンやフリルをふんだんに使った服が大好きである。しかし、筋肉がつきやすいタナノフ女性はなかなかそういった服を楽しめないそうだ。似合うと思うけど。
そのため、ライネベルテの滞在が決まるとたちまち着せ替え人形と化し…あーでもないこーでもないと着替えさせられたり、髪型を変えさせられたりするのであった。
今日は、毛先がくるんくるんに巻かれたツインテール…ドルーガを落とそうと意気込む彼女だが、ますます子供っぽくなってしまうのだった。
支度が終わるとナッジが入室し、挨拶をする。
「おはようございます、ライネベルテ様」
「おはようございます、ナッジ様!ロリと呼んでいただいて構いませんわ。
あの、ドルーガ様はもう起きていらっしゃいますか?」
笑顔で元気に挨拶するライネベルテに、ナッジは好感を持った。
「はい、では…ロリ様。殿下は朝の鍛錬に出かけております。
もうすぐ朝食の時間なので呼びに行こうと思いまして。よろしければご一緒しませんか?」
「ええ、是非!」
(ドュフフ…朝から素敵な筋肉が見られるかも…朝筋肉…)
ライネベルテは、内心舌舐めずりするのだった。
・・・・・・・
ナッジに連れてこられたのは、城内にある鍛錬場だった。トコトコ歩いていると、突然「ズドン!!」という音と共に地響きがした。ライネベルテは思わずナッジにしがみつく。
「な、なんですの?!地震?!」
「(可愛い…)ああ、大丈夫ですよロリ様。多分いつものです」
「いつもの?」
可愛い女の子にくっつかれデレデレのナッジがそう答えると、向こうからドルーガがやってくるのが見えた。
が、しかし…彼は褌一丁だった。ナッジは表情を変え慌てて近寄る。
「ぬおっ!で、殿下あああ!!何で褌姿なんですか?!衣装部屋からは取り上げたはずなのに!」
「フッ、甘いなナッジ。オラはこういう事もあろうかと、ベッドの下にも一本隠しておいたんだよ」
ドルーガは仁王立ちして、ドヤ顔で答えた。
「もう!そういう所だけは悪知恵が働くんですから!普通ベッド下ってのは卑猥本を隠し入れておく所なんですよ!」
「?なんだそりゃ?」
…ナッジよ、それも違うぞ。と、本来ならライネベルテがツッコミする所だが、彼女はそれどころではなかった。ドルーガの褌姿を見てガタガタ震え出している。
ナッジはそれに気付き、ハッとして彼の前に立ち塞がった。
「ロ、ロリ様は見ちゃいけません!
ああ!こんなに可愛い姫様に何てものをお見せして…」
「い、いや………」
「あっ!ロ、ロリ様!泣かないで下さ…」
「いやああああああ!!!!!
滅茶苦茶素敵な筋肉うううう!!!」
「………へ?」
ナッジは目が点になった。
「朝日に照らされるドルーガ様の鍛え抜かれたお体…美しいわ…!褌ってのも最の高!よ!
汗がキラリと光るのもまた良し…ああ…このマルタナアイ大陸を創りたもうた伝説の女神様に感謝ですわあああ!!!」
そう言いながら両手を胸の前に組んで拝み始めるライネベルテ。
「お!筋肉の良さをわかってくれるか!ロリ!」
「まじか…僕ももっと筋肉つければモテるのかな…」
ニカッと笑うドルーガと、ブツブツ呟くナッジだった。
「あ、そうだナッジ。また木を倒しちまったから薪にでもしといてくれ。ほら、あっちにある」
「またですか!もう太い木しか残ってないのに!相変わらず馬鹿力なんですから」
ライネベルテはふとドルーガが指差した方向を見た。どうやったのか、確かに一本の太い木が根本からポッキリ折れて倒れている。
先程の地震は木が倒れた衝撃で起きたようだ。改めてすごいと、彼の褌姿を拝もうとするが…
「ハイハイ、もう朝食の時間ですから!さっさと服着て下さいよ殿下!」
「おっ、そうか!よし!ちょっと待ってろ」
その場で着替えてくれてもいいのに。とライネベルテは思ったが、ドルーガは手渡された服を持って近くの小屋へと入っていった。
ナッジはまだボヤいている。
「…あんなんでもモテるんですからねぇ…くうっ、小さい時からそうだ。
女の子は皆僕を無視して殿下の方へと行ってしまう…
同い年なのに…殿下は全然相手にしないのに…常に食べる事と鍛える事しか頭にないのに…」
「あら?お二人は幼馴染ですの?」
「あ、実は乳兄弟でして」
「まあ!そうでしたの。確かにドルーガ様は素敵ですけど…ナッジ様だって武闘会に出られたのですから、お強いのでしょう?
今は何もなくても、きっとこれから素敵な出会いがございますわ!」
ライネベルテは笑顔で話す。
「うう…ロリ様お優しい…可愛い…マジ天使…。
ロリ様、僕は9年なんて余裕で待てますから。どうです?成人したら僕と…どわっ!!!」
モテたくて、なりふり構わず11歳のライネベルテまでターゲットにするナッジの右頬に向かって、何かが「ヒュッ!」と飛んできた。
……大きな槍だった。犯人は…。
「ちょっ!殿下!危ないじゃないですか!」
「悪ぃ、大きい虫がいてな。つい仕留めようと…槍がすべっていった」
「それを言うなら『手がすべった』でしょう?!まるで槍が意思を持って飛んでいったみたいな言い方をして!気をつけて下さいよ。ロリ様もいるんですから」
ナッジは文句を言いながら、槍を回収しに行った。
「だから悪かったって。…ロリ、大丈夫か?」
「え、ええ。かすりもしてませんわよ?」
「…そういう意味じゃねえんだけどな…」
「?何かおっしゃいました?」
「んー、いや別に。それよりメシだな!今日は何が出てくるんだろうな!」
「はい、楽しみですわね!」
そう言いながら、二人で仲良く城へと戻るのだった。
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