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ロリは姉を思った

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「じゃあロリ、また後でな」
「はい、ドルーガ様」

 食事を済ませた後、そう言って二人はそれぞれの部屋に戻った。
 朝食にはクロワッサンが出た。ドルーガは「ちょうど食べたいと思ってたんだ」と、とても美味しそうに食していた。
 ライネベルテの巻き髪を見ながら。彼女は気づいていなかったが。

 この後は城の周辺を散策する予定なので、ライネベルテは一旦部屋に戻り、より動きやすい服装に着替える事となった。
 再びムキムキメイドさん達の言い争いが始まり…結局、今日の服は黄色のワンピースになった。
 髪型は毛先くるんくるんツインテールのまま。どうやら周囲からは好評のようで、しばらくはこの髪型が主になってしまうかもしれないと、彼女は危機感を募らせた。

(やってもらってる立場だから文句は言えないけれど…元々ストレートな髪型だから、毎回巻かれたら髪が傷んじゃうかも。
 ルル姉様みたいな柔らかい髪ならコテ要らずだけど。あ、そういえば…姉様は上手くやっているかしら?)

 ふと、ライネベルテは遠く離れた姉の事を思った。





・・・・・・・





 リリディエラは、マルロワ国内のとある温泉療養地にいた。

「はい、あーんして下さいウルスト様!」
「ハハ、大丈夫ですよリリディエラ様。自分で食べられますから『いやん、遠慮なんてしないで下さいな』モグっ!……モグモグ」
 彼はスプーンを口の中に突っ込まれた。
 ウルストはリリディエラから食事の介助をしてもらっ……半ば強制的に受けていたのである。

「…ゴクン。ライネベルテ様はお元気ですかね。リリディエラ様の代わりにタナノフへ行かされたのでしょう?」
「まあ!わたくしが強要した訳ではありませんわ。あの子が自ら願い出たのです、ドルーガ様に一目惚れしたんですって。
 歳の差はあるけれど、けっこう良い組み合わせだと思いますの。
 ドルーガ様はちょっと脳き…コホン。楽観的な所がありそうだし、しっかり者のロリがついていれば、きっといい支えになってくれますわ」
「…そうかな、ドルーガ殿下は結構食えない人だと思いますよ」
「え?」
「彼は庶子であるにも関わらず、タナノフ国王の息子として堂々と城に居る。勿論ダンデ王の庇護はあるでしょうけど。
 力が全てのタナノフにおいて、あの強さ。そして彼の地位を快く思わない貴族も多少はいるでしょう、それを抑えつける程の人望とカリスマ性…きっと並々ならぬ苦労があったはずだ。
 それを乗り越えた人は強い。例え僕が決勝に進めたとしても、彼には勝てなかったでしょうね」
「ウルスト様…」
「ハハハ。すみませんね、気弱な事を言ってしまって。幻滅しました?」

 苦笑いしながら問いかけるウルストに、リリディエラは穏やかな顔になって答えた。

「いいえ。冷静に相手を分析して自分の弱さを知る、それもまた強さの一つだと思いますわ。
 わたくし、ますます貴方に惚れてしまいましたもの。こうなったら意地でも貴方に『好きだ、結婚してくれ』って言わせてやるんだから!」

「え?ハハ…お手柔らかに。
 ああ。でも先程医師が、もう折れた骨もくっついたし、近くに腕の良い治癒士がいれば明日にでも退院できると…『あらやだわたくしったら急用を思い出しましたわ!それではこれで』…あっ、逃げられた」

 王女らしからぬ脱兎の勢いで、リリディエラは部屋を出て行った。ポツンと残されたウルストは、ハハハと声を上げて笑った。

 余談だが、その後ウルストは普通に完治し普通に笑顔でマルロワ国を出て行こうとしたが…業を煮やした彼女に首根っこを掴まれて逆プロポーズを受け、そのままズルズルとマルロワ王城へ引っ張られて行ったと言う。
 見張りの兵士の間では「リリディエラ様に似た女性が、女性らしからぬ腕の力で殿方を引きずっていた」と一時噂になるのだった。




・・・・・・・




 ところ変わって、ドルーガの部屋。
 ライネベルテが自分の部屋で着替えている間、彼はナッジの報告を受けていた。

「…それで、バルドはもう回復したんだな?様子はどうだ?」
「はい、怪我が完治し通常業務に戻っているとの事。特に怪しい動きはないそうですし、やはり大会中の事は思い出せないそうです」
「本当か?」
「ええ、ちゃんと隠密部隊が日誌をつけてくれていました。
 とある日は村人の依頼で草を刈っていた所滑ってドブに落ち、別の日は買ったバナナを落として踏んづけて転ぶ、さらに別の日は買ったばかりのアイスを地面に落とした、と……
 ドジっ子かい!!!女の子なら可愛いけど、野郎じゃなぁ…」
 ナッジは部屋にドルーガしかいなかったため、ちょくちょく敬語が抜けている。

「…本当にもう、例の乗っ取った張本人の気配はなさそうだな」
「あとこんな報告もありますよ。
『川で野草を摘んで、花屋の娘にプレゼントして…』
 ブフッ!!よりによって花屋の娘に野草なんて確実にスベって…
『告白に成功した』
 な!ん!で!だ!よおおおおおお!!!
 なんでどいつもこいつも可愛い子ちゃんとくっつくんだよくっそおおおお!!」

 と、ナッジは某賭博漫画の実写版主人公のような雄叫びをあげた。

「うーん…結局、ヤツの正体は分からずじまいか…」

 なお雄叫びを上げ続けるナッジを無視して、少し思案顔になるドルーガなのだった。
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