転生ロリ王女は脳筋王子をおとしたい

須田トウコ

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後日談 ナッジ家に受け継がれるもの その1

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※ ナッジとモネアのその後。全三話です。


 魔獣騒動から一年経ったある日。

 ライネベルテとモネアは、タナノフ王国に遊びに来ていた。

 ライネベルテはドルーガと会うために城へ向かい、モネアは…ナッジの家に呼ばれていた。今日は一泊する予定である。

「いらっしゃいモネアちゃん!さ、どうぞ入って入って」
「こんにちは、ノルダさん!お久しぶりですわ。今日はお世話になります」

 ナッジの母ノルダに手招きされ、貴賓室へと案内される。
 この家に来るのは初めてだが、ノルダとは以前、魔獣討伐後の祝勝会で会っていた。
 あの時は酔っ払ったナッジにくっつかれていた所を、たまたま城に来ていたノルダが引っ剥がし、父親で宰相のニッチがゲンコツを食らわせていた。
 後日、お詫びにとノルダから手紙と可愛い編みぐるみをもらい、それがキッカケで編み物に目覚めた。
 以降、ナッジだけでなく彼女とも文通している。

 部屋に着き、お茶を出されたモネアは礼を言って尋ねた。

「ありがとうございます。あの、ナッジ様はいずこに…?」
「うふふ。あの子ったら、モネアちゃんに僕の部屋を案内するんだーって張り切っていたのだけど…ちょっと片付けに時間がかかっているみたいなの。もう少しで終わるはずだけど…」

 すると、そこへ大急ぎでナッジがやってきた。バン!と勢いよく扉が開く。

「モモモモネアさあああああん!!!お迎えできなくてすみませんっ!!!
 さあ、ささっ、どうぞこちらへ!僕の部屋へ行きましょう!!」
「まぁモネアちゃんはまだ来たばかりよ?もう少し私ともお話させてちょうだいな」
「その呼び方はやめて母上!!
 だ、だって明日にはロリ様と用事があるから、タナノフの城へ行ってしまうのですよ?!話す時間が限られているんですっ!!」
「もう~せっかちなんだから。
 仕方ないわね、モネアちゃん。また夕食どきに会いましょ」
「は、はい」

 そう言って、ノルダと別れた。

 ナッジの部屋は、この家とは別の離れ家にある。中に通され、ソファへと座った。
 モネアは早速、ある物を紙包から出して彼に渡す。

「あの、ナッジ様。これを…手袋を編んでみましたの。良かったら…」
「ええええっ?!!僕にですかああ?!
 うわ、うわあああ嬉しいなあああ!!壁に飾って家宝にしますううううう!!」
「え?!い、いえ、是非日常生活で使って下さいな…ふふっ」

 予想以上に喜ばれたのはいいが、あまりの勢いにちょっと引くモネア。
 けれど、手袋を掲げてスキップして喜ぶ姿は…ちょっとだけ可愛い、そう思った。

「お部屋の片付けに時間がかかっていたと聞きましたが…とても綺麗じゃありませんか。
 どこかそんなに汚れていたのですか?」
「はい!ベッド下にそれはもう汚れた物が…うわあああ!!!な、何でもないです!!
 今はもう快適に過ごせますからご心配なく!!」
「?そうですか」

 危うく口が滑りかけたナッジだった。
 ナッジがモネアの隣に座ると、ふと彼女が大きな紙袋を持っている事に気がつく。

「あれ?モネアさん、その袋は何ですか?」
「これは編み物の道具が入ってますの。時間があれば、ノルダさんに教わろうと思って…
 あら、ナッジ様。目の下にひどいクマができてますわ?昨日はお休みにならなかったの?」
「ええ…モネアさんが遊びに来ると思ったら楽しみで眠れなくて…片付けもしてましたし」
「まあ!遠出する当日の子供みたいな事を言って……ふふ。少し休んだらよろしいのでは?」

 するとナッジは全力で首を振った。

「とんでもない!せっかく二人きりになれたのに…仲良くなれるチャンスなのに、寝てる場合じゃないですもん!!」
「仲良くって……くすっ。可愛い言い方ですわね。じゃあ…ココでお休みになりますか?」

 モネアはそう言いながら…両膝をポンポンと叩いた。

「え?!!まままさかそれは……
 ひっ、膝枕あああああーーーー?!!いいいいいのですか?!!」
「はい。私は編み物をしていますから、少しお休み下さいな」
「…………生きてて良かった………」

 あまりの嬉しさに、ナッジは言葉数が急に少なくなった。
 そっと、彼女の太腿の上に頭を乗せる。

「幸せだ…こんな気持ちになるのはいつぶりだろう…
 いつも殿下に振り回されて…メイド達には女の子みたいとからかわれ…気が滅入る日々だった…
 ねえ、モネアさん。僕はこういう穏やかな時間がとても好きなんです。
 将来はこんな時間をいつまでも共有できる人と一緒になりたいって…ずっと思っていて…」
「ナッジ様…」
「こんな姿勢で言う事じゃないですが…どうか僕と、結婚を前提にお付き合いして下さいませんか?」
「え…?で、でもまだそんな先の事までは…」

 モネアは思わず、手に取った毛糸玉を落としていた。それはコロコロと、遠くまで転がっていく。

「これからもっと頑張って仕事がデキる男になりますから。絶対に苦労はさせません」
「で、でも…」
「…それに、殿下の側近の僕と結婚したら…
 いずれロリ様が殿下とくっついたりしちゃった時に、また側にいられますよ?
 …どうです?悪い話でもないでしょう?」
「!!!そ、それは確かに…!」

 その最後の一言に、モネアは心動かされた。わかりやすい程動揺している。
 ナッジよ、お前にプライドはないのか。

「す、少し…考えさせて下さいませ…」
「はい、いつまでも待ってますから…」

 モネアが完全に拒否しなかった事にホッとしたのか、ナッジは速攻で寝た。
 すぅすぅと寝息が聞こえてくる。

「あらまぁ、もう眠ってらっしゃるの?
 口説いてきたかと思えばすぐに寝て…うふふ、なんだか面白い人ね」

 モネアは思わず微笑んだ。
 そして編み物を始めようとしたが、毛糸玉が転がったままである事に気がついた。
 そっと、慎重に、ナッジを起こさないようソファから立ち上がった。
 毛糸玉は部屋の隅にある引き出しの下まで転がっていた。
 屈んで取り出そうとすると…何やら包みのような物に手が当たったので、取り出してみた。思わず中身を見ると…そこには…!

 モネアはナッジを起こさないよう、心の中で叫んだ。

(さてここで問題。穏やかな時間が好きと言った人の部屋から鞭が出てくる確率は何%かしらーーー?!!!!)

 例の、ナッジ家にある、あのアイテムだった。
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