渡り人は近衛隊長と飲みたい

須田トウコ

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後日談 4G集結その1 〜音楽やるぞ〜

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 ある日のこと。
 イーサンは、とある人物によってとある場所に呼び出されていた。

「…なんと!各国の王が、こんな所に集まっているなんて…!」
「わざわざ呼び出してすまんな、イーサンよ。ちなみに、この場所は他言無用じゃよ?バレて刺客に命を狙われるのはゴメンじゃからのう」

 そう話すのは、アイシス国王カイザー。そして彼の隣にはタナノフ国王ダンデと、マルロワ国王レイドラントもいた。
 三人の王達が勢ぞろいしている事に、イーサンも驚きを隠せない。

「一体、何があったのですか?まさか、また何か世界の危機が…?!」

 そう真剣な表情をするイーサンにカイザーはこう言った。

「違う違う、誤解するでない。今日お主に来てもらったのは…この三爺達に、何か面白い催しを提案してもらいたくてのう。呼んだのじゃ」
「催し…?ですか」
「うむ。仁亜の報告にあったじゃろ?
 今後三つの国で戦争が起こるようであれば、この世界の新たな管理者が指先一つで消す、と言っておったと」
「ああ、そうでしたね。何とも恐ろしい事ですが…」
「じゃからのう、四年に一度開催している武闘会とは別に、何か平和の祭典でもやろうかと思ってな。三爺達で話し合っておったのじゃ。
 じゃが爺達だけではありきたりと言うか、面白みの無い意見しか出なくての。そこで一度異世界に行ったお主に、何かイイ企画がないか聞こうと思ったのじゃ」

 と、そこへダンデとレイドラントが文句を言った。

「何を言うかカイザーよ!ワイが提案した猛者共のガチの殴り合い、名付けて
『皆で仲良く乱闘じゃ!~集結せい兄弟達よ~』の、どこがありきたりと言うんじゃい!」
「それでは武闘会と変わらぬだろう、ダンデ王よ。ここは吾輩が厳選した茶葉を使った、名付けて
『爺達がいれる崇高な紅茶を召し上がれ~三国一斉お茶会~』で良いではないか」
「………な?イーサンよ、ありきたりで面白みがないじゃろ?」

 それはそれでちょっと面白そうと思ったイーサンだが、自国の王の意見を尊重した。

「まぁ…そうですね。せっかく平和の祭典なのですし。暴力を振るうことの無い、かつ身分関係なく誰でも興味を持って参加できる催し、がよろしいでしょうね」

 さりげなく意見を却下されたダンデとレイドラントは、面白くなさそうだ。

「なんじゃい、イーサンとやら。じゃあ異世界で何が流行っていたんじゃい」
「確かに興味はあるな。吾輩達の提案よりも面白いものがあるなら、教えて欲しいものだな」

 …一気にハードルが上がってしまった。

(ハァ…なんだか面倒くさい事になってきたな…ああ早く帰ってフーミンを抱きしめたい…)

 イーサンは考え込み、思いついた。

「そうですね…男女関係なく…年齢も関係なく…身分も関係なくできるもの…
 音楽…ハッ!バンド、バンドだ!」
「ばんど?なんなのじゃそれは?」
「カイザー王、バンドというのは…楽団の事です。でもせっかくですから、楽器を演奏しながら皆で歌うのはいかがですか?」

 イーサンの提案に、反応は三者三様だ。

「うーむ、ワシは普段弓を使っておるから弦楽器ならいけると思うが…そちらに集中するから、歌うのは無理そうじゃな」
「楽器なんて演奏した事がないぞ?ワイはハンマーでガンガン何かを叩いた事しかないからな!カカッ!ちなみに音痴だ!」
「チェンバロであれば幼少期から習っているが…歌なら吾輩の妻ロージアに頼めばよかろう。元歌劇女優だからな」

 上から順に、カイザー、ダンデ、レイドラントの台詞である。イーサンは閃いた。

「分かりました。それでは………」





・・・・・・・





 そして後日。
 イーサンは再び3人の王達と会っていた。

「さて、あれからひと月経ちましたが…皆様、進捗の程は?」

 イーサンの質問に、また3人が順に答える。

「うむ、このリュートのような楽器じゃが…やはりワシに合っていたようじゃ。
 弾くのが楽しくて仕方なかったぞい」
「このいくつもある太鼓は楽しいな!
 叩くたびにドンガシャドンガシャ鳴って…ワイも楽しいぞ!」
「……何故……吾輩だけチェンバロと歌と両方だったのだ……?ロージアが歌の講師になった途端、人が変わったようにスパルタになるし…
 吾輩、夜に幾度枕を濡らしたか………」

「負担が大きくてすみませんね、レイドラント王。ですが最初からプロを呼ぶより、王達で一からやられたほうが民衆は盛り上がるでしょう。やはり俺の考えは間違って無かった…!
 いい感じですね。それでは平和の祭典はこれでいきましょう。王達だけでなく他に何組か楽団を募集して、楽しい音楽祭にしましょうね!」

「そうじゃな!」「おう!」「仕方ない、やるか!」と、3人は返事をした。

 なお3人が使っている楽器は、全てイーサンが既存のものを改造した。日本の音楽番組で見たものを参考にして。彼は手先が器用であった。こうして3人は、現代で言うところの
 カイザー王=ギター
 ダンデ王=ドラム
 レイドラント王=ボーカル兼ピアノ
 を、担当する事となった。

 また、イーサンもプロデューサーとして関わっていたがなんだかんだ楽しくなり、結局ウッドベース担当として参加する事にした。


 それから半年後。
 各国に周知し、着々と準備が進められ…平和の祭典・音楽祭は開催する事となった。第一回目の会場は、アイシス国の城下町の広場である。
 その会場には案内を手に持った男女、仁亜とアイザックの姿があった。

「いや~、まさかこっちの世界でフェスが楽しめるなんて!嬉しい~!!」
「?よくわからないが、ニアが楽しそうで俺も嬉しいぞ」

 二人で仲良く、祭典の始まりを待つのだった。
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