愛し合えない夫婦です

十人 秋夜

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4、貴方は誰ですか?私は貴女を愛しています

幸せを喰らう黒い影

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「セルザイト殿下の小さい頃のお写真とかないのですか?」

 毎日セルザイト殿下といられて、これ以上ないほどの幸せを味わっている今日この頃。
 村にいた頃の話をしているうちに、昔のセルザイト殿下のことを聞いてみたかった。

「写真はないですけど、結構暇に過ごしていましたよ。退屈でした」

 笑顔で言うけれど、普通の子供が外で遊ぶようにとはいかないのだろう。退というのが現実的な気がする。

「ノゼナイト殿下とはどうなのですか?」

 あまり聞かない方が良い気もしていたが、セルザイト殿下の冷たい声を聞いたことがなかった。

「仲悪いですよ。見ての通りですが、気は合わないですし、周りの反応も小さい頃は気になりましたから」

 王家だからこその苦痛なのかもしれない。
 明るく見えるようで、ノゼナイト殿下は不穏さをを纏っている。
 だからあんなに怖く感じたにだろう。

「それでもご家族がいらっしゃることが羨ましいです」

「今は別でしょう?私がアーシャ殿の家族ですからね」

 強く抱きしめられ、甘さのあまり手先から足先まで蕩けてしまいそうだ。
 セルザイト殿下の側にいれればそれで良い。
 まだ短い間過ごしただけなのに、人生の中でセルザイト殿下のいなかった時間の方が長いのに、たった数分、数時間会わないだけで不安で寂しくなる。
 我ながらに重たいと思う。

「先日ノゼナイトに何かされましたか?」

 髪に指を絡めながら、耳元で聞こえる声。
 感じる吐息だけで、胸が震える。

「少し・・・・髪を触られただけですが・・・・」

 それだけで寒気がした。
 ただただ狂気じみた絡みついて来る視線が恐かった。

「どうでしたか?」

 わざとなのか、掠れた声音がいつものセルザイト殿下の誠実な雰囲気とは違い、色っぽさを帯びていた。
 恐怖とは違う、早い鼓動が全身に伝う。

「恐かったです。申し訳ありませんが、ノゼナイト殿下がその・・・少し恐いです」

「そうですね・・・・アーシャ殿がそう言っているのであれば安心ですが、ノゼナイトが何をするか分かりませんから・・・・私は不安でたまりません。」

 駆け上がるように身体が熱くなり、体温も鼓動も全部セルザイト殿下に伝わってしまいそうだ。
 首筋に口づけをするセルザイト殿下の頭を撫でる。

「セルザイト殿下こそいつも女性に囲まれていらっしゃるではないですか・・・・」

「そんなもの私には見えません。」

 そう言って唇に唇を合わせ、ついばむように何度も角度を変えてキスをした。
 
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