真面目な貴族は甘えん坊!?

十人 秋夜

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偽らない気持ち

呼び出されて

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 ゼライにやっと恋人ができたと、あちこちで噂となっている。耳を塞ぎたくて、でもできなくて、その場から逃れるようにウロウロとする。

 本当は寂しくて、誰でも良いから側に居て欲しい。けれど、料理長がいるだけでも随分と暖かい。
 今も度々夢に見る。まだ遠くなっていない記憶。あの日、あの瞬間、己の罪と、どれ程醜い人間なのか自覚した。
 そんな人間が清らかな人と関わって汚す訳にはいかない。

 恋に落ち、結ばれ、幸せになるなど、あってはならない。



「サユナ、サユナ」

 後ろから呼ばれる。
 声から判断して料理長だろう。

「どうかしましたか?」

 振り返ると、随分急いでいるようだ。

「ゼライ様が、お呼びだって。」

 彼の口から溢れた名前。今、最も会いたくない人に呼び出された。なんのために自分なのか、何故呼び出されなければならないのか、どうしても行きたくない。

「他の人に・・・」

「サユナじゃないと駄目だそうだ。」

 遮るように言われ、困った。別に新人の自分が行ったところで、できることなどそうそう無いだろう。

 
(ゼライ様に会って、もう辞めさせてもらおう。家に帰らずに、町に行ってゼライ様と同じように結婚に困っている人と結婚してしまえばいいのよ。)

「分かりました。」



 
 ノックをし、ドアを開けると肘を掴まれ強引に部屋に入れられる。

 ゼライにぐいぐいと口も利かずに引っ張られ、その態度から怒っているように見えた。
 突然、壁に押し付けられる。
 ゼライの顔が自分の顔のすぐ近くにあり、ドキリと胸が高鳴る。それなのに、彼は睨みつけるように見下ろして来る。

「ゼライ様?」

 不安になって名前を呼んでみる。明らかにゼライは怒っている。でもどうして怒っているのか全く分からない。
 
静かで、気まずい沈黙が流れる。

 壁に押し付けられていたのが、解放される。

「俺のことなんて気にしないよな・・・・」 

 背を向けながら呟かれた言葉は、しっかりとサユナの耳に届いていた。その背中が寂しげで、どこか拗ねたような口調だった。

「俺のこと・・・ どう思う?」

 上目遣いで、少し不安気な顔。

(私はゼライ様のこと・・・・・)

 サユナは悩んだ。素直に本心を言えばいいのか、メイドとして尊敬していると言えばいいのか、分からなかった。
 ゼライが今、求めている返事が分からなかった。

「俺はサユナのことが好きだ・・・」

 とても小さな声で弱々しい声だった。
 一気に顔に熱が集まり、なんと言ったらいいのか、どうしたらいいのか、もう何も分からなくなってしまった。

「だから・・・・もし、サユナが俺と同じ気持ちなら受け入れて欲しい。
 嫌なら、拒んでも構わないから・・・」

 
 大きく骨ばった手が頰に触れる。
 温もりが直接伝わる。

 合わさる唇

 

 どうしても拒めず、幸せを感じてしまった・・・
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