恋の秘密はサファイアの瞳

十人 秋夜

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1、不思議な依頼

紫色の鷹と青い梟

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~サファイアの依頼~

 国王との戦いの後、特に何も無い。することも無く、三人それぞれ好きなことをしている。ミーアはルルを撫でている。他の猫には嫌われているが、やはり魔猫であるからだろう。ルルは懐いている。アルタイルも猫だから、魔猫。サファイアは梟(フクロウ)なので、魔鳥。魔猫や魔鳥は魔力を持った人が生まれたときからそばにいる、魔力の源と言われ魔力を持った動物である。アルタイルは外を見ながら、チラチラとミーアを見ている。サファイアは本を読んでいる。
 何を思ったか、ミーアに撫でられているルルはおもむろに立ち上がった。呑気にアルタイルの足元に行った。そして軽やかに跳び、アルタイルの膝の上で丸くなる。

「る、ルル!」

 ミーアも驚いているがアルタイルも驚いている。アルタイルはおずおずと手を出し、ぎこちなく撫でる。ルルは心地良さそうに、喉をゴロゴロと鳴らす。
 サファイアはなんだか気まずい気がして、二人っきりにさせた方が良いと思った。空間魔術を使って、消えた。

 ルルはミーアとは正反対だと、いつも感じる。けれど、なかなか賢いと改めて思った。

 たまには森を下りて、王宮の庭を見たいなと思った。少し森を下ると梟のジストが、首に紺色のハンカチを結んでいる。依頼だ。


    『サファイアに頼みたい仕事がある。王宮に来て欲しい。玄関に
     案内人がいる。』


 最後に、紫色の鷹の印があった。おそらく、王宮の誰かのものだろう。案内をしてくれる人を待たせる訳にはいかないので、急いで王宮に向かった。



~王宮~

 案内人が連れて来た場所は、おそらくこの王宮で最も豪華なドアの国王の執務室。この辺りは廊下も豪華で、ソデバスクでよく取れる水晶とアメジスト、サファイアが所々に飾られている。何故こんな所に呼び出されたか分からないが、仕事とはなんだろう。
 ドアの中に入れば高そうな机があり、本と書類が積み重ねられている。国王アレルキトはこちらを見て、嬉しそうに笑っている。

「いらっしゃい、待っていたよ。」

 立ち上がったアレルキトは以前会った時とは違い、しっかりと国王らしい装いをしている。改めて見ると整った顔立ちをしていて、背も高くいかにも貴族らしい。

「仕事とはなんでしょうか。」

 無表情でフードで顔を隠したまま。国王は優しげに、笑いかけてくる。

「そうだね・・・ じゃぁ、まずそのフードをとってもらおうかな。」

 自分のフードに伸びてくる手は、抵抗する間もなく簡単にフードを反す。

「あ・・・」

 背の高い彼は、覗き込むように見つめて来る。

「こっちの方がずっと良い。次は・・・君にいくつか質問をさせてもらおう。まずは、君に婚約者や恋人はいる?」

 何故こんな質問をされなければならないのか、分からない。国王の質問なのだから逃れる訳にはいかない。

「いません。」

 端的に言うが。実際のことであり、これから先どうなるのかも分からない。
(何故、国王はこのような質問を・・・・)

「そうか・・・じゃぁ、そうなりたいと思う相手はいる?」

 まただ、明らかに仕事と関係が無い質問。何故国王は自分の恋愛などに関して質問して来るのか、サファイアは思考を廻らせていた。

「いません。 失礼ですが、国王陛下は何故そのような質問をされるのですか。」

 質問だけでは無い。口調や態度も今まで聞いていた様子と、全く違う。常に冷静で、自分に対しても周りにも厳しいと聞いていた。

「最後の質問が先でも良いかな? 結婚に対してどう思う?やっぱり運命の人とかと、愛し合う関係が結婚だと思うの?」

「結婚ですか? 国王陛下ならお分かりになられると思いますが、貴族の世界はけしておとぎ話ではありません。
 それに私は、結婚に愛を求めていません。愛されたいとも思いませんし、愛するつもりもありません。それなりに居ても平気な人であり、家に利益があれば誰だって良いのです。」

 偽りなく全てをはっきりと言い放った。サファイアは国王にどう思われても、良いと思っていた。国王がどう思っても、それが全てでありサファイアにとって真実である。
 国王アレルキトはかなり驚いていた。サファイアもそれが普通の反応だと感じた。貴族は周りから見ればキラキラしていて憧れられているが、中を開いて見れば真っ黒でドロドロしている。結婚なんて愛人がいて当たり前だし、だれかを恨み恨まれてするものだとここ最近特に感じるようになった。

「そうか・・・ ならばちょうど良い。私が君を、ここに呼んだ理由を教えよう。」



~国王直々の任務~

「君をここに呼んだ理由は、直にある貴族の舞踏会に出て欲しいんだ。」

 舞踏会。サファイアだって貴族である以上、舞踏会も逃れられないものもある。今回舞踏会は規模は大きいものの、平均的な年齢がサファイアより高く出なくても良いと言われた。

「誰を調べれば良いのでしょうか。」

 舞踏会に出る人の中に、誰か悪事を働く者がいるのだとサファイアは思った。だから単純に追跡し、証拠を得るという仕事だと思った。
 国王はにこりと笑った。どこか、嫌な予感がした。

「調べるんじゃなくて、私と一緒に舞踏会に出て欲しい。そんな服じゃなくて、ドレスを着て。」

 国王の言葉に耳を疑った。返事どうこうよりも、サファイアの胸には疑問しかない。

(どうして私が国王と舞踏会に・・・ 何で私なんかが出なくてはならないの。着るようなドレスも無いし、ライレ家でも表舞台にいたのは姉様なのに・・・)

「そ、それは私でなくても良いでしょう? もっと綺麗で、家柄の良い人なんてたくさんいますよ。」

 国王には悪いとサファイアは思っていたけれど、どうしても舞踏会に行く気にはなれなかった。国王だって、自分と行って恥をかくよりももっと綺麗な人と行った方がお互いのために良いと思った。

「君はどんな女性よりも綺麗だし、家柄よりも心が綺麗だ。」

 じっと目を見つめられ、不本意に鼓動が速くなる。

(こんなのただ、口説かれているだけよ。そんなことを言っていたって、たくさん愛人がいるのに・・・)

「そんな嘘までつかなくても良いじゃいですか。 私は出ません。」

 サファイアは愛されたいとは思っていないが、愛人というという中途半端な立場は嫌だった。それに愛人には利益も無い。

「嘘じゃない。 ドレスも小物も全部用意するし、君に迷惑をかけるようなことはしないから。駄目か?」

 甘えるように視線を絡めて来る。

(そんなに愛人にしたいなんて・・・)

「他に何かありますか?」

 冷たい声に、アレルキトは酷く寂しそうな顔をした。けれどサファイアは舞踏会に出たく無いと思っていた。舞踏会に良い思い出など何一つ無い。

「サファイア、極秘魔術科の仕事だ。任務でも断る?」

 任務となれば断ることはできなかった。極秘魔術科は王宮直属である。だから国王直々の任務を断れない。それに仕事という言い訳があれば愛人にされることなんてないだろう。

「分かりました。 予定を教えてください。」
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